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転生ミスで弱小盗賊団の頭になっちゃいました。やり直しは出来ないと言われて頭に来たので地味スキルで生き抜いてやろうと思います。  作者: 駄犬X
序章

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14 ワイルドホーンボア

 14 ワイルドホーンボア


 俺とスネアが、狩りの練習をしている所へウリボー達が二匹、現れた。そしてその後ろに、サイ程もある巨大イノシシが草むらの奥から現れて、俺達を狙っていた。


 俺達はヤツを刺激しない様に、静かに後退していく。しかしフスンッフスンッと鼻息荒く、俺達から目を離さない巨大イノシシ。


 前足で土を蹴り、今にも突進して来そうな勢いだ。俺は念の為、ズタ袋から麻痺弾を取り出しておいた。


「そこでじっとしてろよ?俺達はお前らには用がないんだからな…」


 そう呟きつつ、じりじりと俺達は下がる。刺激しない様に、下がっていたつもりだったが、相手は俺達を逃がす気はないらしい…。


 ブルルッ、と一声啼くと態勢を低くする巨大イノシシ。


「…マズイッ、来るぞッ!!麻痺弾を使うからな、風下に逃げるなよ?」


 俺の言葉に、スネアは無言で頷く。俺は麻痺弾をいつでも投げられるように構えておいた。そして次の瞬間、巨大イノシシが力強い足取りで突進して来た。


「これでも喰らえッ!!}


  既に射程圏内だったので、俺は迷う事無くイノシシの鼻やら口元を狙って麻痺弾を投げつける。


 麻痺弾は、外れる事無く、イノシシの口元と鼻に直撃した。すぐに俺達は正面を見据えたまま、風上方向へと退避する。


 草むらに隠れ、様子を窺う。もうもうと上がる麻痺剤の粉末が晴れた後に見えた巨大イノシシには、麻痺弾が全く効いていなかった。


 ヤツは隠れている俺達を探す。麻痺剤が鼻から入ったのか、ブホッブホッっと鼻を鳴らし、怒りで頭を無茶苦茶振っていた。


 暴れるデカい角が木にぶつかり、薙ぎ倒している…。


「…これは…どうやら怒らせてしまったようですね…」

「…だな。このまま後退しつつ、次の突進に備えろ…」


 そう言いつつ、俺はズタ袋からリンゴ大の石を取り出した。麻痺は殆どと言って良い程、効いている様子がない。


 フスンッフスンッと鼻を鳴らしつつ、ヤツは俺達がどこに隠れたのか必死に探していた。


 しかし、風上に逃げてしまった為、俺達の匂いが流れて気付かれるかもしれない…。しかし先程と違い、どうやら俺達の匂いに気付けないようだった。


「…カシラ、アイツを動けなくする事は出来なかったですが、どうやら嗅覚は麻痺が聞いてるようです。今のうちに慎重に退散しましょう」

「そうだな、あんなヤツと闘っても勝てる気がしないからな…すぐに退避だ」


 目の前の巨大イノシシは、相変わらず俺達を探している。すぐに後退を始めたその時―。小さなウリボー二匹がトコトコ、俺達の方へ来た…。俺は思わず、顔が引き攣ってしまった。


 …ちょッ、ちょッ、うおぉぉいィッ…何できみ達はこっち来るのッ!!


 思わず心の中で叫んだ!!


 まさか親に変わって俺達の居場所を知らせる為に来たのか?いや、いくらこんな世界だからって、そんな賢いウリボーいないだろう…?


 俺は思わずスネアを振り返る。スネアも顔を引き攣らせるしかなかったようだ…。


「カシラ、マズイ。ヤツに感付かれました。次の突進が来ますよ!!」


 その言葉に俺は正面に向き直り、巨大イノシシを確認する。完全にこっちに気付いちゃったようだ…。


 俺は、リンゴ大の石を握りしめた。俺達が次の突進に備えているその足元で、ウリボー達は呑気に臭いを嗅ぎ回っている。


 …きみ達、なんて事してくれちゃったのよ…。


 目の前の巨大イノシシは既に前足で土を蹴り、態勢を低くしていた。


 そして次の瞬間、巨大イノシシが突進して来た。ドッスンッ、ドッスンッと土埃を上げつつ、俺達を狙って走ってくる。


「スネア!!木が多い方ヘ逃げろ!!少しでも突進の勢いを殺してくれるからな!!」

「カシラはどうするんですかッ?」

「俺は、少し応戦してから逃げる。だから先に行けッ!!」


 そう言い放ったと同時に、俺はリンゴ大の石を思いっ切り投げ付ける。


 ドゴォォッ!!


 激しい音と共に、巨大イノシシの鼻に直撃した。ヤツは少し怯んだものの、すぐに態勢を直してそのまま突進して来た。


「クソッ、この程度の石じゃ止めるのはさすがに無理か…」


 石を二つ投げた後、俺はすぐにその場所から退避して、木の多い方へと逃げていく。木が多いのが幸いした。


 こういう場所なら、突進系の危険動物は本領を発揮出来ないだろう。


 俺達は再び、木々の間の藪から様子を窺いつつ、少しづつ後退していく。このまま気付かないでいてくれたら助かるんだが…。


 しかし、俺達がどこに隠れたか分からず捜している親イノシシに変わってか、またもウリボー達がトコトコと寄って来た。


「何であのチビ達は、こっちに来るんだ!?」


 俺の言葉に、スネアは咄嗟に俺の持っていたズタ袋を見た。


「…カシラ、おそらくその袋の中だ!!その中の獲物の血に反応してるんだ!!」

「そうか!!そう言う事か!!仕方ない、一匹位ならくれてやるか…」


 俺はすぐに、血の付いた獲物を明後日の方へと投げてやる。それに気付いたウリボー達は、必死にそっちへと走って行った。


「やれやれだな…」

「今のうちに、さっさと逃げましょう…」

「そうだな…」


 しかし安堵していたのも束の間…俺は獲物を投げてしまった事で、自分達が隠れている位置を巨大イノシシに教えてしまった事に気付いた…。



 ああぁぁぁッ…やっちまったあああぁぁァァッ…!!



「スネア、先に逃げろッ!!」

「…いや、あの辺りは俺がいつも罠を仕掛けている場所です。そこにヤツが足を踏み込めば、罠に挟まれて動きが鈍くなるはずですよ!!」


 俺達は後退しつつ、再び鼻を鳴らし土を蹴って突進をしてくる巨大イノシシを見た。


 すると突進の途中で足を踏み外し、ヤツは小さな穴に足を踏み込んだ。


 …罠に掛かったか…!?


 どうやら鉄製の罠に足を踏み込んだようだ。しかし俺達の期待を裏切るように、巨大イノシシは穴から悠々と足を引き抜いた。


 マジかよ…。


 確かに罠に掛かっていたが、ヤツは全く意に介していないようだった…。俺は慌てて、リンゴ大の石を四つ、手元に準備する。なりふり構っていられなかった。


 再び突進をしてくる巨大イノシシに、連射で、思いっ切り石を投げつける。

しかし慌てていたせいか、四発中一発しか当たらなかった。


 クソッ、ここで終わりか…。


 もう目の前まで巨大イノシシが迫っている。俺はズタ袋を放ったまま、逃げようとして、枝に足を引っかけて転んでしまった。


 万事休す…。


 そう思った瞬間、スネアが俺を思いっきり引っ張ってヤツの突進の軌道からズラしてくれた。


「…ふぅッ、危機一髪だった…。助かったぜスネア…」

「そんな事よりカシラッ!!(ほうき)だ!!ヤツが体勢を戻す前に箒の技で目潰しですッ!!」


 スネアに言われて、俺はハッとした。そうか!!それがあったな!!


 巨大イノシシを見ると、木に突進をかまして頭をぶつけたようだ。今すぐ反転してくる様子がない。今のうちだ!!


 俺は倒れたまま、急いで背負っていた箒を取り出して構える。


 そしてそのまま俺は箒を使って空間を掃いた。俺は仰向けに倒れたままなので、空間に砂はない。

俺はドジ子の言葉を思い出した。


 …空気!!いや、空気でも良いが空気中の酸素が良いッ!!


 咄嗟に思いついて、俺は意識を集中する。


「集めるのは酸素だッ!!『大量の酸素』を『勢い良く』、『目の前のイノシシの肺の中に』、『一気に掃き集める』だッ!!行けェッ!!」


 俺は、それはもう必死で空間を掃いた。倒れたまま、レ〇レのおじさんのように、超高速で箒を動かす。


 はたから見れば、相当シュールな姿だったろう…。


 俺が履いたその瞬間、箒がピカーッと光輝く。そしてゴウッ、という凄まじい音と共に、突進してくるイノシシに向かって、一気に高濃度酸素が飛んでいった。


 そして―。


 フゴッ!!、ゴフッ、フゴッ、フゴォッッ…。ブゴオォォォ…!!


 一気に酸素を肺に送り込まれた巨大イノシシは、過呼吸を起こした。呼吸が思うように出来ず、苦しみ暴れる巨大イノシシ。


 藻掻き苦しみ、暴れていた巨大イノシシは、ついにもんどり打って倒れた。


「…やったか!?」

「カシラァッ!!やりましたよッ!!まさかあんな巨大ホーンボアを箒一本で…」


 感動の余り、涙ぐむスネア。…いや、今はそっちに感動してる場合じゃないだろう…?(むし)ろ命が助かった事の方を喜ぶべきだと思うが…まぁ、良いか…。



 何とか土壇場でのスネアの言葉で箒スキルを使い難を逃れた。そしてこのスキルが使い方によってはかなり使える事も解った。


 倒れたまま苦しみ藻掻く巨大イノシシ。俺が放り投げた獲物に飛び付いていたウリボー達も、苦しむ親が心配になったのか、獲物を放ったまま近づいてくる。


 苦しむ巨大イノシシと、心配そうにその周りをうろつくウリボー二匹。


 それを見た俺は、何故そういう行動をしたのか分からなかったが、咄嗟にズタ袋から獲物と麻痺弾、石を全て出すと親イノシシの口元を塞ぐように被せた。


 苦しみの余り、暴れて巨大な角が当たりそうで危険だったが、とにかく暫くの間、口元に袋を被せたままにしておいた。


 浅く早かった荒い呼吸が、徐々に落ち着いて来た。これぐらい回復すればもう大丈夫だろう…。


「…カシラ、助けてやって大丈夫なんですか…?」

「…あぁ、無駄に山の動物を殺すようなことはしたくないんだ。というか俺自身も何でこんな事したのか…。とにかく俺達はコイツを狩りに来たわけじゃないしな…」

「…記憶を失くして人間が変わっても、カシラはそこだけは変わりませんね…。狩りはしても無駄に殺す事はしない…」


 スネアは感慨深げにそう言ったが…。単純に俺が地球での記憶を残しているからだ…。動物達を狩り過ぎて、人間が種を絶滅させてきた歴史を知っているからな…。


 俺は足元でようやく落ち着きを取り戻した親イノシシを見る。呼吸は正常に戻り安定していたが、まだ立ち上がる所まで回復して無いようだ。


 俺は気配を感じて、チラッと木々の奥を見た。木々の隙間から、ドジ子が俺達を見ていた。


「…オイ、ドジ子。まさかずっとそこで隠れて見ていたのか…?」


 突然、木々の奥に向かって話す俺を見てスネアが聞いてくる。


「…カシラ…。一体誰と喋ってるんで…?」

「…ん?あぁ、前に湖で見たろ?天使様だよ。そこにいたから話してみたんだ」

「…て、天使様の名前が…ドジコ…」

「あぁ、正式名はドジルエラ・ミスリコル・ヤラカシエル(嘘)って言うんだが長すぎて覚えられないからな。略称『ドジコ』で呼んでるんだ…」


 俺の説明に、スネア顔が?になっていた…。


「…もーっ、夏…いや、グランジさん。その呼び方はやめて下さいよぉ…」


 そう言いつつ、木々の間の藪から姿を現すドジ子。


 コイツ今、夏目って言いそうになったな…。まぁ男達は聞いても解らないだろうが、万が一があるからな。今度ポロリしたら、ドジコ呼びをもっと素敵な感じに変えてやるからな!!


 夜には光が無いので男達には見えないが(何故だか俺だけ見える)、今は昼過ぎなので、スネアにもドジコが見えたようだ。


「…天使ドジコ様。この度は我々を見守り頂き、ありがとうございました…」


 そう言いつつ、深々と頭を下げるスネア。


「…いや、だからその呼び方はですね。ちょっと…」


 やんわり抗議するドジコの言葉を遮る。


「そんな事は良いから、手伝ってくれ!」

「いや、そんな事って、呼び方って大事ですよ!?」

「解った。じゃあ、ミス・ヤラカシエル様。お願いがあるんだ…」

「いや、その『やらかしクイーン』みたいな呼び方もちょっと…」


 しかし、俺はその抗議を無視したまま話を進める。


「この親イノシシを少し回復して欲しいんだ。俺達がここから退避するまででいい…」

「何故ですか?殺されそうになったのに?助ける義理なんかないでしょう…?」

「あぁ、そうなんだが…。山を下りて餌を捜しに来るのは恐らく環境の変化があったからだと思う。その原因を作ってるのは大体が人間だからな…」


 俺の話に、スネアも頷く。


「それは大いにあると思います。そもそも近年は山中に山賊やら盗賊が増え過ぎてるんです。そういうヤツらが山の奥まで行って狩りをするんですよ。それで餌が少なくなってきたので、このイノシシ親子も山を下りて来たんですよ」


 スネアの説明に、ドジコ改めミス・ヤラカシエルは無言で俺をチラッと見る。


「…今回だけだ。今回だけ助けてやってくれ。別に俺達はコイツらイノシシ親子を殺しに来たんじゃないしな…」

「…そうですね。スキルの確認も出来ましたし、他ならぬグランジさんのお願いですから、今回だけ手を貸しましょう…」

「…ありがとう。助かる…」

「ありがとうございます!!ミス・ドジコ様ッ!!」

「…いや、ミス・ドジコって…」


 思いがけず、スネアが名前を合体させてしまったが、俺はそれを放ったまま小屋へと戻る準備をする。


 ウリボー達へのプレゼントで、幾つか獲物を置いて行く事にした。スネアは間違えた合体名前を連呼して、何度もドジコにお礼を言ってた…。


「…ミス・ドジコ…」


 どんよりと鬱な表情のままのドジコにイノシシ親子を任せて、俺達は小屋へと向かう。少し離れてから、チラッと見るとウリボー達と遊びながら、親イノシシをヒーリングで回復させていた。


 そのまま、小屋に戻ろうとする俺に聞こえるように、ドジコがウリボー達と遊びつつ、大きな独り言を話す。


「…こんな世界で、危険な動物助けるなんてお人好しも良いところな感じだよねー。ウリちゃんに、ボーちゃんもそう思うよねー」


 …ウリちゃんに、ボーちゃん…。


 ウリボー達に名前つけたのか…?しかしドジコのヤツ、ネーミングセンス壊滅的だな…。俺はドジコの独り言を無視したまま、皆が待つ小屋へと戻って行った。

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