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転生ミスで弱小盗賊団の頭になっちゃいました。やり直しは出来ないと言われて頭に来たので地味スキルで生き抜いてやろうと思います。  作者: 駄犬X
序章

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12 スキル活用法

 12 スキル活用法


 俺は、ドジ子の提案した作戦で行く事にした。成功率が高い作戦の方が安全だしな。炎の向こう側では、ドジ子がいまだに悪い顔でニヤニヤと笑っていた。悪い自分に酔ってんのかw?


≪アンタの作戦の方が成功率は高そうだ。そっちで準備を進めて行くよ≫

≪…えぇ、その方がゴミのようなヤツらを簡単に潰せますよ…≫


 天使が使っちゃいけないような言葉を使い、ニヒルに笑うドジ子。その悪魔的キャラはもう良いから、いい加減元に戻れ!!


 俺は心の中で突っ込んだ。


≪…それからもう一つ、的当てに付いてですが、次は動くもので試してみたらどうでしょう?≫

≪動くものか…動物とか?≫

≪そうです。練習ついでに山の中にいる危険動物を退治するのが良いかと思います≫


 ドジ子は(ようや)く、通常モードに戻っていた。


≪しかし、危険動物を的にしろって簡単に言うけど、いきなりはかなり難しい気がするぞ?逆に危険動物を怒らせて、こっちが襲われるのも嫌だしな…≫

≪夏見さん。弱気になってはいけません。人と言うのは死地に於いてこそ、隠された真の能力を発現するのです≫

≪…アンタは俺を殺す気かw?悪いけどまずは動く的で練習するよ。マンガや小説じゃあるまいし、いきなり無茶やっても痛い目見るだけで、スパーパワー覚醒なんてならないから…≫

≪…そうですか。盗賊狩りゲームが始まるまでに、少しづつでいいので山の危険動物を退治出来るくらいになってて下さいよ?≫

≪簡単に言うな!!健闘はするがな…≫


 ドジ子と話していると、辺りが薄っすらと明るくなってきた。そろそろ陽が昇ってくる様だ。今日からは動く的を投げて貰って石を当てていく練習をするか…。



 完全に陽が上り、男達が起きてくる。いつものルーティンの始まりだ。俺は軽い掃除のついでに、固有スキル『掃除』を試す事にした。まぁ、試すも何も、掃除してみて何か有効活用出来そうなスキルだったらラッキーくらいに考えておこう…。

 

 俺は箒を持って、軽く小屋の中の床を掃いていく。男達も自分達の寝床を綺麗にした後、掃き掃除をする。その塵やら埃を集めたものを俺が建て付けの悪い扉の外へと掃き出す。


 なんとなく、掃き出した塵と埃を見ていた。


 そこら辺りに掃き出すだけだとまた風で中に入って来るかもしれない。俺は湖とは反対の方を見て、そっちへ掃き出していく。その瞬間、サイクロン掃除機の中の様に、塵や埃がふわっと回転しつつ、俺が見た方へと飛んで行った…。


 …目の錯覚かと思ったが、それにしては動きがハッキリ見えたな。どういう事だ…?俺は小屋の周りに散らばってる、製材した時の木屑を掃いて集めると、再び試してみた。


 サッサッと掃きつつ、木屑が邪魔にならない場所に視線を移す。


 すると先程とは違い、はっきりとサイクロンしながら飛んで行った木屑が山の様に積もっていく。

その瞬間、俺は確信した。


 この『掃除』スキル、使えるかもしれん!!これは石投げとは違って練習などしていない。ただスキルを意識して、『掃き掃除』という行動をしただけだ…。これが例えば塵や埃ではなくて、砂だったら?


 これがもし、小さな撒き菱(忍者が使うヤツ)だったら…。俺は興奮を隠せなかった。上手くいけばこの『掃き掃除』で対象を攻撃して大ダメージを喰らわす事も出来るかもしれん。


 これは後で、ドジ子にスキルを確認して貰おう。俺は意外な発見に、喜びを抑えられなかった。


 掃除、身だしなみを整えた後、皆で朝食を済ませ、フィネスは情報集め、俺とヒュージ、テジー、ガイ、スネア、ラスツはいつもの様に補強木材と板を作っていく。


「…なんだ?アニキ、今日はやたら楽しそうだな…?」

「あぁ、石投げに続いて、面白い攻撃手段の発見があってな…」

「新しい攻撃手段だと?」


 俺はテジーの疑問に答える。


「あぁ、そうだ。ちょっとカッコ悪いんだが、面白い攻撃が出来そうなんだ。そこに辺りの木屑を纏めて置いといてくれ。休憩の時に見せるからな」


 俺の言葉に、男達は顔を見合わせていた。



 午前中も半分、製材作業を終えた俺達は、休憩に入る。汗を拭い、水を飲んで一心地ついた俺は、余興がてら皆に、朝発見したスキルを見せる事にした。


「これは朝、偶然気付いたんだが…まぁ、取り敢えず見てくれ」


 俺の言葉に、男達も水を飲みつつ、俺に注目する。箒を手に持ち、俺はレ〇レのおじさんの様に、山になった木屑を掃く。そして俺はここからかなり離れていた、朝方掃いて山にした木屑の方を見る。


 瞬間、木屑は魔法で動いているかのようにサイクロンになって既に山になっていた木屑の上にあっという間に積もっていた。


 男達は口を開けたまま目を見開いていた。


「…あ、アニキッ!!それどうやったんだッ!?」

「…いや、見ての通り箒を持って掃いただけだ…」

「グランジ、さっきのヤツ、使いようによってはかなり凄い事になるぞ?」


 テジーの言葉に、俺も頷く。


「…だろ?木屑でも良いけど、もし砂だったら?これが撒き菱だったら?更にこれが粉末麻痺剤とか毒剤だったら…」

「そうですね、ゾッとしますよ。カシラ、色々なモノで試してみると良いと思いますよ」


 スネアの言葉に、ガイが頷く。


「距離や威力がどういう状況でどう変わるかも確かめたいですね」


 続いてラスツも提案する。


「さっきのアレはグランジさんの意志でやったのですか?視線を動かしてましたが、そこに意識的なモノを加えるとまた何か変わるかもしれませんよ?」


 皆の反応が良かったので、俺の気分は上々だ。


「あぁ、色々試してみる。今日から動く的当ても練習するから、お前らも手伝ってくれ」


 俺の言葉に男達は頷いた。


 午前の製材を終えて昼食を取った俺達は、午後も二時間ほど、製材作業を熟す。もう少しで、小屋の壁板、床板と壁の補強材が揃う。明後日くらいには小屋の補修を始める事が出来る様になるだろう。


 午後の製材を終えた俺達は少しの休憩の後、早速動く的当てと俺のスキルの検証に入った。



 動く的当ても最初こそは苦戦したが、俺は動くランナーを牽制球で刺すイメージで投げ続けた。


 俺は的当ても、ラスツが提案した事を意識して投げるようにした。的をキャッチャーミットやダストボックスに見立て、そこに入るように強くイメージする。


 漸く慣れてきて、動く的にも徐々に石が当たるようになり、威力も命中精度もかなり高くなっていた。


 次に『掃き掃除』の方だ。昼までは塵や埃、木屑だったが今回は砂を試してみた。そこらの砂を箒で掃き集めてみる。まずはラスツの言ったように意識してやってみた。特定の場所に、『勢い良く』『掃き集める』だ。


 すると地面を回転する様に、視線の先に掃いた砂が集まっていく。男達は黙ってその様子を見守っていた。


 その集めた砂を、特定のモノにぶつけてみる。森の中にある一本の木に視線を向けた俺は、意識して『勢い良く』、『木の真ん中に』、『砂を掃き集める』で砂を掃く。


 すると砂の山が一つのサイクロンになって木のちょうど真ん中あたりに勢い良くぶつかって散らばった。


「…かなりイケそうだな。グランジ『意識』はしたのか?」


 テジーの言葉に俺は頷く。


「あぁ、言葉を決めて意識すると、その通りに動くみたいだ」

「よし、アニキ。色々試してみよう」


 ヒュージの言葉に、皆が色々と提案し試していく。


 距離はどこまで届くか、どれくらいの重さまで動かせるのか、どういった意識ワードで動かせるかなどだ。


 まずは砂をどこまで飛ばせるか確認する。先程は10メートル程だったので一気に距離を開いて20メートルにしてみた。


 勢いは少し落ちたが、ほぼ同じ木に砂のサイクロンが当たった。徐々に距離を伸ばしてみたが、50メートルを過ぎた辺りで砂サイクロンは崩れて落ちてしまった。


 ギリギリ48~50メートルなら、届くようだ。次に砂を拡散して木々に当てる事が出来るかを試してみる。


 『目の前の木々に』、『掃き集める』で砂を履いてみる。しかし、飛んでは行くが途中でばらけて落ちてしまった。


 皆で砂を拡散させるワードを考えてみる。しかしどれも巧く行かず、飛ばした砂を拡散させる事に行き詰ってしまった。


 そろそろ夕食の時間なので、『掃き掃除』の練習は一旦切り上げて、夕食の準備に取り掛かる。食事の準備の最中にも、色々とワードを考えてみたが、どうも良いワードが思い浮かばなかった。


 夕食後も暫く考えていたが、その日は考える事に疲れていてそのまま寝てしまった。



 数時間して、見張りの交代の時間が来た。ヒュージに起こされ、俺は小屋の外に出る。


 焚火の番をしながら、ぼーっと座る俺の前に、いつもの様にドジ子が現れた。今日は焚火の向こう側で、切株を椅子代わりにして座っていた。


 そしていつもの定例会議が始まる。


≪…夏見さん、今日はどうでしたか?≫

≪…あぁ、今日はどうも巧くいかなくてな…≫

≪石投げですか?≫

≪いや、『掃き掃除』の方なんだが…≫

≪…掃き掃除?何ですか、それ…?≫


 そう聞かれて、そう言えばコイツにはまだ話してなかった事を思い出した。


≪俺の『掃除』スキルは知ってるよな?≫

≪えぇ、知ってますよ?夏見さんの唯一の固有スキルですよね?≫

≪それなんだが…≫


 そう言いつつ、俺は昼にあった事を話した。


≪ふむふむ。ちょっと夏見さんのスキルを確認しますね…≫


 ドジ子が俺をじっと見つめる。改めて、じっと見つめられると恥ずかしいんですけど…。暫くして、ふむふむと言いながらドジ子が説明してくれた。


≪…確かに、スキルツリーの中に『掃き掃除』がありますね。掃いた対象を指定した場所、物、空間に集める事が出来る。半径50メートルまで可能。となってます≫


 それを聞いて俺は、掃除スキルがツリーになっている事に驚いたが、指定すれば空間にも集める事が出来る、という事にも驚いた。


 『指定する』…か…。


 俺が考えている事を読んでいたのか、ドジ子がこのスキルの活用について昼間の例を取り上げながら提案する。


≪恐らくですが、『拡散させる』と言うワードが、この掃除スキルと矛盾してしまっているので上手くいかなかったのかもかもしれません≫

≪…そうか。掃除のスキルだから、『拡散』だと散らかしてしまっている事になるのか…≫

≪…ですので拡散と言うワードではなく、別方向からのアプローチが必要になりますね≫


 ドジ子の説明を聞いて、俺は改めてワードを考えてみる事にした。


≪…解った、夜が明けたらまた試してみる≫

≪えぇ、頑張って下さい。所で…砂を拡散させたいのは対集団に対する目潰しを狙ってるんですよね?≫

≪まぁ、そんな所だが…≫


 ドジ子は何か思う所があるのかもしれない。俺はドジ子の話を聞く事にした。


≪このスキルの説明文を読んでいて思ったんですが、例えばですよ?『大量の砂を』、『指定した場所に』、『勢い良く掃き集める』。これを対集団に置き換えてみましょう…≫


 一息ついて、話を続けるドジ子。


≪『大量の砂を』、『視界に入る全ての人間の目と鼻の中に』、『勢い良く掃き集める』。…これで、拡散と言うワードを使わなくても夏見さんが狙っていたスキルの活用にかなり近づくのではないでしょうか?≫


 そうか!!『指定』の部分を変えてやればいいのか!!


 俺が感心していると、ついでにもう一つ。と言いつつドジ子が更に『掃き掃除』スキルの活用法について提案する。


≪『周辺の空気を』、『視界に入る全ての人間の顔に』、『突風の様に掃き集める』。…こういうのもイケると思いますよ?砂と違って集めてくる必要もないですし、空気ならそこら中に漂ってますからね≫


 ドジ子の提案に、俺は思わず唸ってしまった。


 …ううむ。コイツ、ドジ子の癖にこういうえげつない事を考えるのは得意の様だな…。コイツ、本当はかなり底意地の悪い天使なんじゃないだろうか?


 ドジ子の、天使らしからぬアドバイスに、やっぱりコイツは悪魔の方が職業的に向いてるんじゃないかと俺は思った。

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