9話目
9話目
僕はそこに置いてある二冊の本を手に取ると、どこか満足感を感じていた。・・・どんな魔法がかかれているか分からないが、これから僕が人生をともにする魔法が書かれているのだ。途方もない独占欲が湧いてくるのはしょうがないだろう。
ここに来るまでは早く与えられる魔法が知りたかった僕ではあるが、なぜか今本を開けば確認できる状態であると言うのに、本の表紙を見ていた。
確かに早く魔法が知りたい。その気持ちは今でも途切れていないが・・・いざ知るとなると、どこか緊張して一歩前に出れないと言うか、鑑賞に浸ってしまうと言うか。だが、少し言い訳をさせてくれ。
そもそも、自分の魔法をあまり人に教える事は無いみたいなのだ。たとえそれが一般的な魔法だったとしても。だから、今目の前にこの人がいる状態で見ても良いのかと思ってしまう。
「2冊ですか・・・初めてですね。」
だが、僕の考えは察してくれなかったのか、お門違いな事を考えていた。早くどこかに言ってくれよと思うが・・・なぜかずっとそこに居る。
と言うか・・・そう言えばなんで僕の目の前には本が二冊あるんだろう?魔法全科に書かれていた事によると、1冊とのことだったけど、それに2冊もらったなんていう事例に関しても書かれていなかったんだけど?
・・・もしかして転生した影響なのかな?確かにこの1人に一冊と言う条件が体に対してではなく、人生に対してなら前世がある僕は2冊貰う事になるだろう。
ツーか早く出て行ってくれないかな?流石に魔法を確認したいんだけど。そう思い、担当の人をジーッと見ているとその事に気付いたのかすみませんと言いながら出て行った。だが、僕がその人に影響を与えたからか、『制限』が発動して魔力を取られる羽目になってしまったのであった。
・・まあ切り替えて行こう。やっと楽しみだった魔法を確認する事が出来るんだから。
僕は先に古く草臥れているほうの本を手に取り、ページをめくる事にした。魔法はこの本の中に書いてあると言う事らしいので、その本を見ればどんな魔法なのか分かるんだとか。ちなみに、空想図書館以外で儀式をすると別の形の物が与えられるらしいのだが・・・その場合はどんな魔法を授かったか調べるのは大変らしい。
例えばお父さんが儀式を受けたお城の前だと、ペンダントが授けられるらしいのだが・・そのペンダントに魔法の説明が書かれてはいないみたいなのだ。だけどそのペンダントの形でどんな現象が起こるかを予測する事は出来るみたいだ。
実際にお父さんのペンダントを見たけど・・・全体的に真っ赤で荒々しい感じのペンダントであった。だけど、僕にはどんな魔法なのか分からなかった。
その分空想図書館は、本にその魔法の事が書かれているので、どんな魔法を授けられたかは直ぐ分かるらしい。ちなみに、魔法師になりたい人はどんな魔法を授けられたか分かっていなくてはいけないので空想図書館に来る人は多いみたいだ。
ただ、他にも本の形で魔法を授けられる、教会と言う場所があるのだが・・・そこは魔法の事は文字で書かれてはいるが、結構抽象的にどんな事が出来るのか書かれているおかげで分からない人は分からないらしい。
でも、だからと言って皆が空想図書館に来ればいいと言う訳でもないみたいなんだよな。
なんでかと言うと、その授けられた場所って言うのは今後の人生を左右させる要因の一つになるみたいなのだ。例えば、お城の前で儀式をすると、国王にも忠義を示したとされて騎士になりやすかったり。
反対に、他国の場所で授かると特定の職業には慣れなかったりする。なので、適当に目先の効率だけで決めるのはあまりよろしくは無いのだ。
まあ、と言う訳で確認しますか。
僕はドキドキしながらその本のページをめくる。これから僕も魔法が使えるんだとドキドキしながら1ページ1ページめくり確認する。
・・・だが、僕の表情はドンドン苦くなり途中でその動作をやめ一度深呼吸をすることにした。
超簡単に言えば、予想外の事が起きた。
再度確認しようとその本を開けて見るとそこには、何も書いていなかった。そう・・・その本は白紙になっており、どこまでめくっても文字が書いてあるページが見付からない。期待していた魔法が書かれていなかったのだ。
正直その時点で担当の人を呼んで、白紙の理由を聞きたかったが魔力量的に、担当の人を呼ぶともう一冊を見ることが出来なくなる。なのでしょうがないが、一旦無視してもう一冊のを見る事にした。
知らない事象だったので、しょうがない。
僕はもう一冊の方の豪華な装飾がされており、王様とかが家宝として持つ様な本であった。古そうな本では少し勢いを途切れされたけど、こっちは結構期待している。だって、こんなに豪華な装飾がされているのだから、凄い魔法が書かれているんだろうと期待していた。
緊張で手汗がドロドロ出てくる。だが、それは期待しているからこそである。
僕はお願いしますと念をかけながらその豪華な本のページをめくる。すると今回はちゃんと文字が書いてあるみたいでひとまずは安心することが出来た。前回の事が有ると、文字が書いてあるだけでも興奮してしまう。
さあ!とその文字を読み始める。すると順調にその魔法の事が分かってきた。魔法の事は分かってきたのだが・・・またもやと言うべきか、僕の気分は沈んでいた。
だってそこに書いてある魔法は・・・魔力をクソほど使うクソ魔法なのだから。
いや、別に効果が弱い訳では無いのだ。反対に凄い強いと思う。だけど、、、僕にとってこんな魔法はいらないし・・・そもそも、魔力が無いと行動が出来ない俺にとって、沢山の魔力を消費する行為はゴミに等しい。
なので、この魔法はゴミである。ていうか、そもそもこの魔法の最低魔力消費量が、今の僕の魔力上限よりも多いみたいなんだよね。だから、発動すら出来ない。・・・そして発動すると、魔力を一気に取られる事になるから、さっきの「制限」みたいに体がボロボロになる。
はぁ。僕は久しぶりにため息をつくと、なけなしの魔力を消費して親の元へ戻るのであった。出来れば、この『制限』の発動が無効か出来る魔法が欲しかったなと思いながら。
☆
僕はトボトボと歩きながら、親のところに戻ると、そこにはお母さんとお父さん以外に担当の人がいた。多分儀式のあとの僕の状態を説明しているのだろう。まあ、血を吐き出すほどボロボロになっていたのを僕から説明するのは嫌だったからありがたかった。
僕が説明するとしたら・・・そのまま何も言わないで有耶無耶にしてしまうと思うから。
すると、僕が戻ってきたことに気付いたのかおお母さんが手を降ってきた。
「どうだったの?」
「あんまり良くなかった。」
僕は誤魔化そうと考えてみたが、ごまかす方法がないので適当に答えることにした。それに、僕にとってのいい魔法って、制限を発動させない魔法だから。
「そっか、それじゃあ帰ろっか。」
すると、、これ以上何も言いたくないのをさっしてくてたのか、そこで会話は終了となった。
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