6話目
6話(お父さん)閑話
今俺がミツキに感じている感情は一つだけだ。あいつには才能がある、これは俺が今まで見てきた人物と重ねて感じた事である。だから、確信を持っている。
それに気が付いたのはあまりにも動かないミツキを心配して教会に行った後の事だ。
☆
「はい、【鑑定】の結果この子には呪いがかかっていると言う事がわかりました」
やはり・・というべきか。小さいころから、あまり泣かず、今になっては動く事さえ少ない。そんな状態であったから、何か呪いでも受けてしまっているのかと思って検査をしてもらった。
その結果は俺の予想通りだった。
呪いとは他者から与えられその人を不幸にするもの。呪いに関しての研究はあまり進んでおらず、どんな呪いがあるのかしか分かっていない。・・・だが、特定の呪いに関しては呪い方は分かっているので、意図的に呪おうとすることは出来る。
けれど、その呪いを解く方法は見付かっていないので、不治の病と同じ扱いなのだが。
「どの様な呪いなのでしょうか」
目の前にいるのはこの教会の魔法士だ。その証拠に、虫眼鏡の刺繍が入っているローブを羽織っている。この虫眼鏡の刺繍には研究系の魔法士の証明としての機能がある。だから、この教会に来たのだが・・・。
「私の概念鑑定によりますと、この呪いは『この世界に干渉するたびに魔力を消費する』呪いです」
この魔法士は鑑定を得意とする魔法士らしく、何でも『物事の真実』を見極める事を目標としているみたいなのだ。だから、嘘を付く事は嫌うみたいで・・・この人なら信用できるとここに来たのだ。それに、結構な実績を持っているみたいで・・・俺も、団長の推薦が無ければ見てもらえなかった。
「少し難しいと思いますが・・・例えば、この子が腕を動かしたとき、それはこの世界で腕を動かして干渉したとされて、魔力を取られてしまうんです。他にも、私たちの側からこの子に干渉しても魔力を取られてしまいます。
例えば、貴方がこの子に干渉した。それはこの子がここにいるから干渉したので会って、この子がいなかったら干渉できなかった。と言う事はこの子はこの世界に干渉している。
みたいな感じです」
俺はその事を聞いたとき思わず呆然としてしまった。その呪いはまるで、「この世界から出ていけ」と言っているようであるから。
今までミツキは1人でこの呪いを背負ってきたのだ。ここまで凶悪な呪いをまだ幼い子供がだ。それなのに、一番近くに居たであろう自分がきずく事すらなかった。俺は自分の事をせめてしまいたくなった。
もっと早く検査に来ていれば良かったとそう強く思った。
「それで・・・この呪いを解く方法はありますか?」
淡い気持ちで質問する。・・・解ける呪いは数少ないと聞いているから、そこまで期待はしていない。ただ、もし解けるのであれば解いてあげたい。そう思いながら聞いてみた。
「ん~。そもそも、この呪いは初めて見つかった奴なんだよね。だから、あるか無いかは研究してみないと分からないかな。まあ、呪いに関しては発生数がそもそも少ないから、研究している人なんて少ないだろうし・・・それに、研究してもゴールかあるか分からない部門だからね」
・・・遠回りではあるがやめた方がいいと言われたんだろう。もし、その研究者が見付かったとしても、どんなことをされるか分からない。
それなら・・・この先この呪いと付き合って行かなければいけないんだな。
俺は想像していた最悪な想定に絶望していた。あらかじめ気構えていたが、それでもこの衝撃は強かった。・・この先ミツキは普通の暮らしが出来ないのかもしれない。それは親として、認めがたい事である。
最低限幸せな気持ちで生きてほしい、そう思って育ててきたのに。
「ありがとうございました。」
俺は気絶してしまっているミツキを持って連れて帰る事にした。・・・何も出来ないのであればここにいる意味は、何のだから。何もしないのに、ここにいたら相手にも迷惑が掛かってしまう。
そう思い、俺は家に帰るのであった。
だが、俺のその意気消沈している感情は次の日のある事で切り替わったのだ。
そのある事とは、ミツキが俺に声をかけているのだ。・・・ただ、俺は何もしないようにと言われて。
「こんにちはお父さん。」
それには衝撃を受けた。今まで真面に言葉を発していなかったミツキが、当たり前の様に喋っているのだから。もちろん「ご飯」等の言葉は聞いたことはあるが、その時は決まって単語だけで終わっていて、接続詞を使う事は無かった。
「返事はしないでください。・・・まず僕は行動すると魔力を消費してしまいます。」
それからは、ミツキから呪いの説明を受ける事となった。ただ、俺は何も喋らないで一方的に聞くだけだが。だが、それだけでも俺は嬉しかった。初めてちゃんと息子の声を聞くことが出来たのだから。思わず涙が出てしまいそうになるが、今はミツキが大事な事を説明してくれている。
ミツキから聞いて大切だと思った事を纏めると、この呪いは1歳にも満たない時からあったのだと。さらに、その時には魔力が無くなって気絶してしまう事が多く、一日中寝ている事が大半だとのこと。
ここで、ミツキに呪いをかけた奴を潰したくなったが・・・呪いをかけるのは人間に限らないみたいなので探し出すことは無理だろう。
そして、最後に重要なのが・・・魔力を消費して気絶をすれば、魔力量のだとか。だから、1歳の時は真面に動く事すら出来なかったが、今になっては一方的にではあるが喋る事も出来るとのこと。
これは、気絶しまくっていた成果でこれからも気絶をするから気にするなと言われた。
「・・・」
親として、気絶をすることを了承するのは心苦しく、親失格だと思われてもしょうがないと思ってしまうが・・・ミツキがこれから生活をしていくため、やらなければ行けない事なのだろう。
俺はそれで話は終わりと思い、久ビリに喋ったから喉を炒めないように水を持ってきてあげようと立ち上がると、ミツキが思い出したように喋りだした。
「あ、あとこれからの意思疎通はこの魔力でやるから」
何のことだと思いミツキを見ると、そこには見えるまで濃縮してある魔力を操っているミツキがいた。なんでこんなことが出来るんだと思わず驚いてしまった。・・・俺は専門外だがミツキのお母さんであるアカリが自慢していたことに、魔力を体の外に出せた!と言う物が合ったと思い出したからだ。
何でも、魔力を外に出せる人は魔法の使い方が上手くなる?からと言う事なのだ。俺には良く分からないが、結構難しい技術らしくそれを成功させた時は凄い喜んでいた。
だから、思い出せたのだが・・・その外に出す以外にも魔力が見えるほど濃縮されているのだ。・・・これの凄さは俺にも分かる。
俺たち騎士団の中には魔法戦闘を専門とした集団がいるのだが・・・そいつらが本気で戦闘をしたら、その跡地にはもやもやとした魔力痕が残っていることが多々あるのだ。それは魔法に変換できなかった魔力が多量に集まったからと聞いているのだが・・・それに、魔力痕が残るのは消耗戦に突入した時以外はあまりなく、俺は2回しか見たことが無い。
そんな魔力を再現した人を俺はまだ知らない。俺が無知なだけなのかもしれないが、それでも凄い事には変わらないだろう。
思わず呆然としてしまった。
「えっと、こんな感じで」
すると、その魔力の塊をに何をするのかと見ると・・・何と操っているではないか。それも、鮮明に分かりやすい文字に変形させて。
呆然としながらもそんな事も出来るのかと感心してしまった。
「魔力だとなぜかコストを支払わなくてもいいみたいなんだよね。」
・・・後でアカリに聞いてみよう。俺はそう決心して、水を取りに行くのであった。
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