57話目
57話目
そのキング級の魔物は、神から魔法を授かった魔物で出来る事は置き換える魔法だ。そのまほうは攻撃を喰らった瞬間に自動発動して、視界に映る魔物と入れ替わることが出来る。さらには、短い詠唱をする事によって、大量の魔物を呼び出すことができてその魔物たちは自由自在に操ることも可能。
だが、そんな魔法を使う反面、身体能力は高くないように思える。それは僕が仕掛けた一度目の攻撃の時、攻撃の直前になるまで僕に気付く事さえ出来ていなかった。
さらに明確に判別が可能なのは、その肉体である。
その体はがりがりに痩せ細っており、どこから見ても筋肉がある用には見えない。さらにはその歩き方から何らかの武術を身に着けているように見えない事から魔法を使う事に全振りした魔物と言う事が分かる。
と、いうことは相手の魔法さえ何とか出来れば倒すことは容易であるように感じるが、そこで厄介になるのが、攻撃の際に自動で置き換わる魔法だ。これは現在の僕の状態ではどうにもできず、魔法や魔術を使うことが出来なければ対処はこんなんだろう。
だが、ここで重要なのはその自動発動の条件である。
☆
僕の体はゆっくりとじわじわと握り潰されている。その痛みに耐えることは出来ずに騒ぐことしかできない。これが物語の主人公ならこの状態でも抵抗したり、もしくは打開の案を考えるのだろう。だけど、僕はそんな諦めない心を持っているわけではない。
ただの呪いに侵されて死に物狂いで生きている研究者なんだ。そんな僕に、この手に対抗する方法はを思いつくほどの余裕はない。
「あ゛!あ゛!あ゛!」
ただ、悲鳴を上げるだけだ。それしかできない。
でも、そんな僕でもある事を考えていた。だが、別にそれはこの場の打開策でも何でもない。
ゆっくり握られるからこそ、体の骨が折れたり、四肢が握り潰されたり。それが鮮明に分かってしまう。そんな状態が脳裏に焼きついているだけだ。
ほら
パキ
肋骨が折れた。その肋骨の折れ方がダメだったのだろう。手がゆっくり握られていくなかで肺に刺さっていく。ゆっくり。
ぐさ。何て言う生ぬるい感覚ではない。ブチ…それは折れた骨が肺に穴を開けてゆく音だ。
そして、その骨はドンドン中に入ってゆく。それは僕に痛みという苦痛を与えてゆき、痛みを理解させようとしてくる。
「あ゛!」
すると、肺側の骨だけではなく心臓側の骨まで折れ始めた。ベキベキと、ゆっくりだ。
それは手が閉じていくごとにドンドン折れて行き……今のは肺のように心臓にも刺さるのだろう。
僕はその感覚を鮮明に想像してしまい、そのような痛みを味わいたくないと言う一心でこの巨大な手から脱出しようと今出せる最大の力で暴れる。
だが、一切開かない。だからこそ、その手は僕を捻り潰そうという意思を感じる。
逃げられないということを再度理解した時僕はまた暴れた。
逃げそうと、逃げようと。
たった一度の見落としでこのような状態になってしまった事に後悔して……数分前の僕を恨む。でも、それは一瞬の事だ。
心臓に骨が当たった。
それは、今から痛みが来ると言う合図であり、ゆっくり閉まるその手は僕が暴れる合図でもある。
でも、もう僕は暴れすぎた。
声を出すほどの体力はもう残っていない。
ぐちゅ。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
僕の感情は支配される。
そして、痛みで意識が落ちそうなときある事に気付いた。それは痛みによって思考が全く機能しなく、さらに意識が沈みかけていたというのに……いやだからこそ認識出来た。この魔力の存在に。
【第五魔力】
それは僕がどれ程研究をしても解明できなかった魔力だ。
そんな魔力が心臓から溢れている。滝のように。勢いよく。
なぜ心臓から出てきているか分からないが……でも、この劣化していない魔力を使わない選択はない。
「【誕生せよ!!!グリモワール!!】」
僕は無我夢中になりながらこの手から逃れる事だけを考えていた。それはいい方向に動いたのだろう。
痛みで意識が殆どないながらも口だけは動く。
「【僕がグリモワールの指名に基づき命令を下す!!】『僕を助けろ!!全ての魔力を持っていけ!』」
そのあいまいな呪文に命令され腰につけていた魔法書がひとりでに動き出す。
「承知しました!」
するとその魔法書から悪魔が出てくる。だが、その悪魔はいつもの姿とは違い、なぜか……マネキンと言えばいいのだろうか。明らかに僕が調べた悪魔の形態としてそぐわないような物になっている。
・・・これは第五内魔力を使ったから怒ったことなのだろうか。でも確かに第五魔法の謎とされていた一つに、魔法には使用されないと言う物があった。でも、僕は第五内魔力をしようして魔法を発動した。
使用するときは無我夢中だったからそんな事は頭から抜け落ちていたが……多分イレギュラーなのだろう。
「いや~、今回はマスターが魔力を奮発してくれたうえに、召喚の時には特別な魔力を使ってくれたからね!頑張っちゃうよ!」
だが、悪魔は喜んでいるようなので、悪影響は無さそう。
するとその直後に僕はその巨大な手から解放された。それは別の場所に転移をしたとか言う訳では無く、その手が開いたからだ。でもなぜそんな事になっているか分からない。だって、悪魔はまだ何もしていないようであったからだ。
でもそれはすぐに解決した。
手から離された僕は背中を打ちながら地面を転がった。肋骨が折れているので地面に落ちた衝撃で心臓や肺にダメージを追いながらも何とか意識を保って魔物たちを見た。なぜか手を放してくれたが、すぐに襲ってくるかもしれないと警戒をしているからだ。
でも、そんな警戒をしたところで今の僕には何も出来ないのだろうけど。だが、その行動で今何が起きているのか理解が出来た。
「魔物たちが怯えている?」
そう。
なぜ手を話したのか疑問に思っていたが、魔物たちが僕が呼び出した悪魔に怯えているのだ。
理由は分からない。
「あれ!まだ何もしていないのに契約が終了してしまうじゃないですか!私はまだマスターと一緒にいたいのに!」
でも、悪魔が出てきたことでこうなったのだから悪魔に原因があるのは確かだ。
「そうだ!契約の解釈を変えさせていただきましょう!」
すると、僕が知らない事をやり始めた。
【行動上限があるミツキくんは最強になりたい】をご覧いただきありがとうございます。もしよければブックマークや評価をしてくださるとうれしいです。
投稿時間 7時&17時で毎日投稿です。




