56話目
56話
あたった!
僕そう確信した瞬間、眼の前のキング級の魔物はなぜか他の魔物に置き換わっていた。
すると、その魔物は見るも無惨に抵抗することすら許されず爆散していった。それは、放った型の威力を物語っており、もしキング級の魔物に当たっていたら確実に倒せていただろう。それくらい僕は気合を入れていた。
なのに、なぜか逃げられていた。だけど、僕はあたったことがちゃんとこの目で確認したし、更には一瞬だがそのキング級の魔物に技があたったことも手の感触で確認できる。
だが、そのあたったのはホント一瞬で型として効力が発揮する前に逃げられた。
でも、これでキング級の魔物がどうやって逃げたのかわかった。それは、自動発動魔法の【置き換え】だ。その魔法は視界に写っている対象と設定した対象の位置を変える魔法だ。そして、その魔法が何らかの方法によって【攻撃を食らったとき】という条件の自動発動になったのだろう。
だから、僕が攻撃をしたときその視界に写っていた魔物と位置を変えていた。
それなら僕の横に突然移動したりしたのが理解ができる。そして、このキング級が使っていたと思われる召喚魔法も説明がつく。
このキング級の魔物が使っていたのは召喚魔法ではなくて、置き換えの魔法に準ずる魔法だと考えれば、同じことも可能だろう。
予め大量の魔物にマーキングを施して、それを一度に呼び集めればスタンピードの完成だ。
……だが、手の内がわかったとはいえ、本当に自動発動ならば少々苦戦するかもしれない。なぜならば今の僕には物理系の攻撃しかなく、このような魔法に対抗できるような手を今は持ち合わせていないのだ。
もちろん魔術が使える状態ならば、精神系の魔術でも、避けることが出来ない必中魔術でも、広範囲魔術でも何でもある。だけど、今の僕には何もない。
……さて、どうしようかね。
★
倒すにはまず自動発動が起動する条件を見つけないといけない。そもそも、自動発動は普通に生活していては授けられない機能だ。それなら、どのようなときに授けられるのか?
それは神聖術のときが一番多い。
神から様々な制約をもとに、一つの機能として自動発動を授けられる。だから、そのキング級の魔物が使っている自動発動は神がわざわざ魔法に対して制約をつけて授けているのだ。
そして、少々違うことになってしまうが、さっきキング級の魔物が自動発動で逃げるときになぜか魔物と入れ替わっていた。
それは、明らかにおかしいことであり、僕ならばそこらへんにある石ころと置き換わる。だって、そうしないと味方が一人死んでしまう。だから、わざわざ魔物と入れ替わる意味がわからないのだ。
と、ここでさっきの話に戻るが制約の一つの条件として自動発動では魔物としか置き換われないのではないのだろうか?
そこで、1つ目の対抗策
周りにいる魔物たちをすべて殺す。
これをすれば置き換える対象がいなくなるかもしれない。
だが、これをするには少々時間がかかりすぎる。更にはその倒している間にキング級の魔物が逃げてしまうかもしれないという危機感もある。
なので、2つ目の……
僕が想定を確立させようとしている時、キング級の魔物は僕に対抗するためか動き始めた。何をするのかと思うが、それは僕が理解できる範疇である。
キング級の魔物は魔物を呼び出し始めたのだ。それは僕が勘違いしていた召喚魔法ではなく、考察通りの置き換えの魔法である。そのキング級の魔物は何らかの呪文を唱えると、その身に放出させている大量の魔力を使い手から投げえだした石ころと置き換わらせて魔物の集団を召喚する。
その魔物達はここまで来る最中にいた魔物達とは一風変わりそこらへんには絶対いないような魔物であった。一つはドラゴンに似るいしている魔物。一つは霊系の物理攻撃が効かない魔物。さらには、巨大な体を持っている巨人の魔物。
それらは、僕ですらあったことが無い魔物もいるくらいには出会うことが無い魔物たちである。だが、それは弱いということではなく、人類存続のために、それらの脅威になりそうな魔物たちはあらかた倒しているから、合うことが無いのだ。
なので、これらの魔物は本来出会うことが無い、魔物立ちだ。
でも僕はそれらの魔物にあまり恐怖心を抱いていなかった。それは、なぜなのか?
簡単に言えば、そのキング級の魔物の魔法が召喚魔法ではなく置き換えの魔法だからだ。つまりは魔物たちをただ呼んでいるだけなので、その魔物たちを操る事は出来ないと言う事。なので、それぞれの魔物たちが仲間割れするかもしれないと言う確信ある気持ちから恐怖心はない。
だが、僕は重要な事を見逃していたんだ。
「まだだ!」
その魔物たちによる乱戦が怒ると思われる場所を通り抜けてキング級の魔物に攻撃をするために、脚に魔力を集める。これはこの場所に来るために使った移動の術だ。だけど、今回は一瞬でその魔物の集団の中を通り抜けたいので魔力による衝撃を強くする。
「魔力俊動」
僕は一気に移動する事で、魔物の中を通り抜けようとする。
すると、その時なぜか目の前に大きな手が出てきた。なぜなのか分からない。でも、その手はあまりにも大きくそして、強靭であった。急に目の前に出てきたことにより何の抵抗もすることが出来ずに、真ん前から当たってしまう。それは魔力によって移動していた僕には致命傷になるほどの傷を残すことになる。
その衝撃で手にぶつかってしまった僕はその場に倒れてしまう。ぶつかった衝撃で体が動かなかったからだ。
だが、それがダメだったのだろう。その巨大な手に掴まれて持ち上げられた。それは明らかに攻撃の意思を含んでおり、多分だが力を入れやすい位置に手を移動させているのだろう。このまま何もしなければ僕は死んでしまう。
そう思うが、一つある事を思った。
この手は多分巨人族の手だ。それなら、一緒に移動してきたほかの魔物たちに攻撃されるのではないのだろうか!
僕はその手に進路を阻まれるのは完全に想定外であったが、それでも挽回の余地はあると感じていた。
だが、それは災厄な方向で裏切られることになる。
それは持ち上げられたことで判明した。
魔物たちが一切行動していないのだ。
まるで僕が死ぬところを待ちぼうけているかのように。一切動かない。そこでやっと僕が見落としていたことがある事に気付いた。
それは目の前のキング級の魔物は魔物を操れると言う事。置き換えの魔法を使っていたと言うのになぜ操れているのかは分からないけど……だけど、ここに来たことに興奮して忘れていたが、確かにここに来るまでの魔物たちも操られていた。
その魔物たちは僕が一定の距離離れると、機械のようにメソミア王国へ向かっていたのだ。それを頭の片隅へ追いやって思い出せなかった。
僕は考え不足という最大の過ちに思わず顔をしかめる。
だが、そんな反省も出来ないようだ。巨人族の手がドンドンしまってくる。ゆっくりゆっくりと。それはいたぶっているような。
その瞬間体からボキッと骨が折れたような音がした。
「あ゛!!!」
僕は痛みに耐えきれず悲鳴を上げてしまった。今まで痛みとは無縁の生活を送っていたからか、耐えるということが出来ないせいで精神がゴリゴリ削れて言っている。今すぐにでも死にたいと思うくらいには。諦めたくなってしまう。
でも、その瞬間にあるものが見えた。それはニタニタと悪趣味に顔を歪ませているキング級の魔物だ。
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