55話目
55話
「見つけた！」
僕は大きな声を上げながら、先制攻撃として魔纏を使った打撃を仕掛けた。腕を含んだ手全体に魔力を大量に纏わせて、巨大な疑似的に手を作りその手で打撃を仕掛ける。
それはやっと見つけたからの興奮や、その魔物から発せられる魔力の量に気持ちが高鳴って知ったから、起こした行動ではあるが、戦闘と言う面では奇襲は高い確率で攻撃が出来る、価値が高い戦法だ。
だから、戦闘経験が未熟な僕からしたら結構上手く行った行動だと思う。
有る一点を除けば。
すると、僕の攻撃はなんの障壁もなくそのキング級の魔物に近づいて行く。
その容易さに驚きながらも僕はその打撃のスピードを変えない。だが、少々遠くから攻撃を仕掛けてしまったせいで、その魔物に到着するまでに時間がかかってしまっている。その時間が致命的だったのだろうか。
「ぐぎゃ！！！！」
僕の存在に気が付いたそのキング級の魔物はこちらを見ながら回避行動を始めた。偶々ではあるがちゃんと背後を取っていたので、気付かれる前に攻撃が届くかと思っていたが、容易く知られてしまった。
だが、この距離と速度ならばそのキング級の魔物が取ろうとしている回避行動……肉体による横転運動は間に合わない。もしジェームス君ならば、自身を転移させることも出来るので、一瞬の好きに魔法を発動させ回避する事も出来ると思うが、これはキング級の魔物の手札不足だ！
僕は確信を持って当たると分かったので、その纏っている魔力にさらに付け加える形で魔力を込める事にした。当たると確信しているのに妥協する事は出来ない。さらに攻撃の威力を高めるのだ！
「おりゃぁ！！！」
僕は気合を入れてその打撃を繰り出した。すると、その攻撃は当たったのかちゃんと手ごたえがあり、さらにはゴリゴリと言う音まで聞こえた。
相手は神から祝福されたキング級の魔物とは言え魔法は召喚魔法だ。そんな魔法であればこの攻撃から逃げる事は出来ないはず！そう思っていた攻撃は命の革新まで付けたのだろう。その肉体はすぐそこの気に当たるまで飛ばされさらにはその気をなぎ倒し、地面を転がりながら静止していった。
倒した！
その気持ちでいっぱいだ。
だが、そう簡単には行かないらしい。
「！！」
その威圧的で強力な魔力はその倒した魔物ではなくなぜか僕の横から発せられていた。これは明らかに倒せていないという合図であり、さらに僕の後ろにいるということはさっきの攻撃は当たっていないということだ。
完璧ともいえる奇襲を仕掛けた上にその攻撃を避ける事が出来ない事も確認したなのになんで、そこに居るのか僕の頭の中は混乱していた。
だって、その魔物が僕の攻撃に気付いたのは本当に一瞬まえだ。それならば肉体の運動では避けることが出来ない。であれば、魔法に寄っての回避しか想定が出来ないが……だが、キング級の魔物の魔法は召喚魔法のはずだ。それは、この魔物の大群を見て分かる。なのに、なぜ避けることが出来たのか。
僕は何か見落としているのかもしれない。
☆
しょうがないと、思いながらも一旦仕切り直しだ。
僕は最大の攻撃を仕掛けるために、手に移動させていた魔力を元の場所に戻す……そう、さっき僕がやった攻撃とは、全身の魔力を拳に移動させると言う技だ。これをすると、結構のパワーを出せる。
だけど、その分全身の魔力を使っていることから、防御力が落ちてしまう。だが、瞬間的に火力を出そうと思うとこういう事をしなくてはいけないのだ。それは魔力を外に出そうとおもってから、出すまでにはそれなりに時間がかかってしまうからで合ってしょうがないと諦めなくてはいけない。
それも今の状況なら、相手を倒せると確信していた。だから全身全霊の最大限を持って倒そうとしていたのだ。
だが、今は倒せていないと言うのが現状。それにどう対抗するか考え切れていないと言うのも失態である。これは戦闘経験が乏しいからであってこれだけ多くの手を持っていた僕でも、戦闘経験がないだけでここまでボロボロになってしまうのだ。
でも、今の状況にウジウジしている時間はない。そう思いながらも、どうしようか考えが出てこない。さっきキング級の魔物がつかった魔法がなんなのか分からない状態で、攻撃を仕掛けたとしてももしかしたら、手痛い反撃を喰らってしまうかも知れない。
それに、攻撃を仕掛けられないといけない魔法を使っていたとしたら……僕が攻撃を仕掛けること自体がデメリットとなってしまう。これだから、魔法を使う相手と戦いたくはないんだ。それも相手には無制限ともいえる魔力がある。
これでは、僕から動くことはできない。
だけど！！
動かないのもダメだ！
僕はその停滞しそうな空気を感じて、一手仕掛ける事にした。
「魔纏 二の型 業」
それは魔力を纏わせる場所を限定する型。つまりは、いまは全身淀みなく魔力を纏わせているがそれでは無駄が多い。もちろん、全身を守るということを考えれば【装】の方が良いかもしれない。でも、今は相手がどんな魔法を使ってくるか分からない状況。それならば防御するよりも回避する事の方が重要だと思った。なので必要な場所にだけ魔力を集中させてさっきよりも効率がいい魔力運用をさせる。
これで、攻撃も防御もさらなる可能性がのこせる。
だが、これではもしもの時の防御力が無い。 そう思うかもしれない。
でも、よく相手を見てほしい。相手のキング級の魔物の体は二足歩行で、ゴブリンのような人型であるが、貧弱で決して武術等の体を動かす攻撃をしてくるようには見えない。それならば、魔法に集中すればいいだけ。
僕はそう結論づけて攻撃を仕掛ける事にしする。何か魔法を使われてもこの型ならば避ける事は容易いと思う。それに、相手を翻弄できることから魔法の対象にされずらいと言う利点もある。
『【型 水式 霧】動作および干渉を確認。
スキル 制限 の効果により、魔力を5徴収します。』
僕はとある歩行術を使い相手の認識をごまかしながら前へ進んでいく。多分相手からは、僕の事はブレて……・見ているとドンドンブレてきて、さらにさらに。
そして、最終的には僕と言う認識が曖昧になって来る。見えているのに、僕がどこに居るか分からない。でも見えているし、目の前にいる事は分かる。そして、僕はこの型を使用してキング級の魔物の懐に入る事が出来た。
この型は正直習得するのに時間がかかった術だ。だって脚の使い方が他の武術と比べて特徴的過ぎるし何といっても相手の認識をズラすという行為になじみが無さ過ぎた。だから、習得までに時間がかかったが、でも、その時間をかけるほどの価値はあったと思う。
だって、この型は相手を選択しなければいけない魔法に対しては最大の効力を示すからだ。それは僕と言う人間を選択させない……いや選択できないと言うことが出来るから。
すると、使われる魔法は限られてくる。
対魔法の必殺技ともいえる。
僕もこの型をやられたら、結構な魔術が使用できなくなるし困ってしまう。なので時間をかけてまで習得したのだ。
そして、僕の事が認識出来なくなった事で相手の懐に入れた。
絶好のチャンス！そう思い再度攻撃を仕掛ける。今度は逃げられないように至近距離で最速の攻撃を！
「フ！！」
『【型 炎式 破炎】動作および干渉を確認。
スキル 制限 の効果により、魔力を10徴収します。』
その攻撃は相手の内部から破壊する僕が持っている物理攻撃の中で一番殺傷能力が高い攻撃だ。そして今回はそこに魔纏による補助が入る事から、さらなる攻撃へとなり替わる。
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