50話目
50話
『【型 炎式 提灯】動作および干渉を確認。
スキル 制限 の効果により、魔力を2徴収します。』
僕は拳を掲げながらスタンピードに突っ込んでいった。もちろん何の策もなくこんな事はしない。ただ…・・・ 魔力消費量を抑えるために拳で対抗しているだけだ。
その僕の攻撃は【雷鳴流 霧断ち】によく似ており、手は握っているのではなく指を突き立てており、さながら殴るのではなく突き破る為の形だ。そしてその攻撃を喰らった相手は予想通りと言うべきか、体の急所……言えば心臓に一突きされて死んでいる。
これが武術と言うべきものなのかは分からないが…だけど、このような事は普通の研究者なら出来ないだろう。
「鈍っていないね。」
その言葉は確認だ。
僕は結構前の事ではあるが、お父さんから武術を習っていた。まあ、最近は研究で忙しかったり、授業で忙しかったりしたから満足に稽古を行うことは出来なかったけど……それでも体に染みついている物が変わらず使えた。
すると、その魔物を倒した次の瞬間またもや新たな魔物が襲い掛かって来る。今度は魔物の群れに入り込んでしまったからか複数体が同時に攻めてきた。こんな至近距離での戦いは魔法士にとってみれば、苦手な部類だ。
偶に近距離が得意な……今は授業補佐になってしまっているアルカロール君の魔法みたいに剣をかたどる様な物だと近距離で戦わなくてはいけないだろうけど、魔法士になるような人の多くは遠距離で攻撃する事が多い。だって、近距離は武術家等にに任せておけば良いから。
でも、僕はそうは言えなかった。
だって、魔法を使うにも魔法で攻撃するにも沢山の魔力が必要になって来る。それに魔法や魔術は消費魔力量が多いのだ。だから、どうにかしようと考えた末がこの武術だ。
『【型 炎式 円邪】動作および干渉を確認。
スキル 制限 の効果により、魔力を3徴収します。』
今度は腕をある程度伸ばし手を開いた状態で一回転をした。すると、魔物たちはの祖手に触れるや否や体勢を崩しその場に転んで行く。魔物たちは何をされたのか理解が出来ないようで数秒間動いていない。
怪奇にばかされたような感覚だろう。だって僕の手にふれただけで転んでしまう。その瞬間は何をされたか分からず、そして自分に何が起きているのか分からない。ただ、目の前が回っているかのように感じるだけ。
その型は僕の周りをかこっていた魔物たちをやすやすと凪払って行く。
もちろん、転んだ魔物たちはちゃんと始末をする。顔を踏んで潰したり、持ち上げて奥まで吹き飛ばしたり。
多分僕の事を始めてみる人は武人だと間違えてしまうだろう。でも、武術は消費魔力が少ないし、それにその型を継続している時は【反撃】だとか【攻撃】だとかで毎回魔力を取られる事はない。
なので、もし魔術を研究していなかったとしたら、武術を極めていただろう。それくらいは好きだ。実際にそれを裏付けるように、今使っている型は僕が作った武術なのだ。【炎式】と言うのだけど、他の武術から派生させたりして作っている型が多いから、武術かの人たちは見覚えがある方は多いと思う。
「さあ!早く撤退しろ!」
僕は大きな声で騎士団がいる方向に呼びかける。騎士団の周りの魔物達はあらかた弱らせることに成功しているので、撤退しようと思えば容易くできるだろう。まあ騎士団に入っているのだから、こんな事をしなくても大丈夫だったかもしれない。
まあそんなことはどうでもよくて、僕が食い止めている間に早く撤退してほしいんだが…
「うるせー!!」
だけど、それは上手く行かないようで自己中心的な人たちは勝手に行動をして引く気配を見せない。剣を持って突撃をし続けている。なまじ力があるせいかしっかり魔物を倒す事が出来ているから撤退の余地を見せていない。この後来るキング級の魔物の対処の為に早く引いてほしいのだが……これでは死人が出てしまうかも知れないのに。
僕はその様子に諦めてしまいたくなった。だって研究者になって僕の指示に従わなかった人なんてそこまでいないし、その人たちは理論的に動いてくれた。全ての行動にはちゃんとした理由が合って、もし反抗されたとしても僕が納得する理由が合ったりもする。
実際にアルカロール前教授は指定されていた授業を行っていなかったが、それは必要ないと思っていたせいで会って、その行動の最終的な利益は生徒の将来の為であった。決して自分中心ではなかったのだ。
だから、僕自身この状況を改善させる方法が分からない。成果を上げると言う事をに夢中になってしまっているその集団の対処法が分からない。
……だけど、こんな事で諦めるのはダメだ。
死人なしに撤退させないと、国が滅んでしまうかも知れないから。
「ぎゃぁー!!!」
そんなとき騎士の方から大きな声が聞こえた。誰かが倒されてしまったのだろう。力はあると言ってもギリギリの状態で耐えていたようだ。これなら対抗するのでは買う早く逃げてほしかったのだが…なってしまったものはしょうがない。幸いにも、声の主はまだ生きているようだから、まだ取り返しはつく。
「しょうがない……」
だから、僕は決心をした。これ以上犠牲を出さないために……木陰に隠れて懐から真っ赤な瓶を取り出す。
☆
僕が今武術を使って対抗しているのは一概に魔力が少ないからだ。ここに来るのにも、ここで行動しているのにも魔力を使った。そしてそれは回復され切る事は出来ていなかった。
だから、僕の魔力量は少なくなっており、前回使った絶対零度のような魔術を使う事は出来ない。しょうがなくこの体で対抗して、しょうがなく魔力を使っていない。
でも、そんなとき僕の魔力を回復させる方法が合ったら。それも、瞬間的に、莫大な量を。
……懐から取り出したその瓶。
それは禍々しく、見ているだけで強烈な存在感を感じて意識が飛びそうになる。決して人が触れて良い物のようには見えない。そして、それが……魔力の塊だと認識する事はこんなんだろう。
「魔力増強剤」
それがこの瓶に入っている薬の名前だ。間違えてはいけないのは……この薬は魔力回復薬とは別物だということだ。
この薬は魔力回復薬を作るために研究している時に偶然出来上がった代物だ。だからと言うべきか効果は似ている。第一内魔力と第三内魔力を結合する事によって魔力量を回復する事は合っているのだ。
そんな中で一番違う点は……制限なく魔力を回復させることが出来ると言う事。
これだけを聞くと良いようにしか聞こえないと思うが、問題なのはその行っていない部分。この魔力増強剤は魔力回復薬とは違い結合を強制させるのだ。つまり、結合限界を迎えているのに、無理やり結合をしてしまう。
・・・それの何がいけないかと言うのは簡単には説明できないが……言えば魔力の劣化を引き起こしてしまう。つまり、本来の魔力とは別の魔力の変質してしまう可能性があるのだ。一番分かりやすく言えば、ガンを作っているような感覚。
その魔力増強剤によって結合を繰り返した魔力は本来とは違う挙動によって、その昨日が変わってしまう。本来体の機能を助けてくれているはずの魔力たちは変質を起こして、体を攻撃し始める。
結合の対象にしている第三内魔力に関しては、一度変質させてしまった事が有るから事例を知っているのだが…その時は無差別に変質をしてしまい、その時は体の内部がグチャグチャになってしまった。
でもその時は、摂取量が少なかったおかげでそれだけで済んだのだ。
つまりだ、この薬は制限なく結合を繰り返してしまうのだ。でも、魔力を回復させるためだけで言えばこれ以上に最適なものはなく、さらに言えば、僕の魔力を全回復させる方法で一番リスクが少なく、安価な物がこれなのだ。。
他の方法で魔力を回復させようと思うと、こんな瓶一つでは収まりきらない程の機械が必要だったりするから持ち運べない。そんなわけで、今僕が魔力を前回復させる方法はこれしかないのだ。
でも、魔力増強剤の後遺症を直す方法はちゃんと確立させているから、一時の苦痛だと飲み込めばそこまで考えるほどのものでもない。もちろん飲む量だったり、結合時の対処を間違えたりすると簡単に死ぬから油断はできないが……
僕は覚悟を決めてそれを飲んだ。
だけ僕が手を下さない事を考えたが、その騎士は騎士と名乗っているのに、戦闘力はそこら辺のC級討伐者よりも低く、何もしなければ勝手に死んでしまっているだろう。それでは、ダメだ。何とか考えて撤退させなければいけないだが……
「ノ・ラ!早く撤退するぞ!これ以上ここにいたら死ぬのは俺たちだ!」
「ハハハ!何を言っている!今この状況を見えないのか!この俺が魔物たちを蹂躙している様子を!」
「そんな事はどうでもいい!上官命令だ!撤退しろ!」
「却下だ!!!はははは!」
ダメみたいだ……
いまこの考えている時も時間は進んでいる。早く撤退させたいと思っていたが……その行動がこのような裏目に出るとは思ってもいなかった。そもそも、真面に現実を直視できない奴を騎士団なんかに入れるなと言いたいが……こんな奴が騎士になれる国がそもそも終わっているのではないのだろうか。
あの暗部総隊長が国王の代わりに言葉を出せたように、もう国の内部はボロボロなんだろう。改めて認識させられる。
こんな様子を見せられると、しっかりとした訓練を行っている、おじさんがいるアルンガルド王国がどれ程優れているのかが分かる。
「くそ……無理やり、押し飛ばすか?」
だから、僕は無理やり強硬手段に出ようと考えた。だけど、ここから門まで押し飛ばすと言う行為を、魔力増強剤によって劣化した魔力で出来るのだろうか……いや出来ないだろう。そもそも、僕は劣化した魔力の精密な調整が出来ない。それ用の訓練を詰んでいないからだ。
今も、魔物たちの攻撃を妨害するために魔力投射を操作しているが、それもいつもより精密性に欠ける。偶に失敗している場面が見られるし。
だから、失敗したら見るにも耐えない程の肉片になってしまう操作をやろうとは思えない。
だが、それでもやらなければ騎士団を撤退させることは出来ないだろう。それを騎士団の隊長も分かっているようで、死人一人でないように今も行動している。
「……」
僕は無言で一つの魔力投射に対して魔力を溜めていく。その騎士を門まで飛ばすためだ。
劣化している魔力の操作に戸惑うが、それでも魔力はちゃんと溜めれて行っている。
「ふぅ」
僕はその一瞬のために、一度深呼吸をして心を整えるのであった。まずはその魔力投射を第二外魔力で硬化させ、その後劣化第三外魔力で性質を変化させる。やわらかく、そして、どこまでも飛ばせるように。形状を変化させる。
チャンスは一回だけだ。
3.2.
僕はカウントダウンをおこない、飛ばす機会を伺う。
だが、そんなとき、その騎士団を全体囲うように大量の魔力が発生した。なんの魔力かはわからない。でも、その魔力の性質は攻撃のための物ではない事は分かる。なので、今は自分の事を心配してその範囲から思いっきり離れる。
体が変態しているが、それでも事前に発動していた肉体強化のおかげで、横に移動することは出来た。
ズザザ……と、地面をすりながらその魔法から避けるが、その跡地には誰もいなくなっていた。僕は思わず目を疑ってしまうがそれは現実である。目の前には魔物以外誰もいない。
そこで一つ考察が出来た。一つはキング級の魔物の魔法だ。その魔物は召喚魔法を使うと言う事だったから、範囲指定をすればこのような召喚はできるだろう。実際に僕自身出来る魔法を知っている。
だが、それはあまりにも難易度が高い為……本当にその方法ならば、キング級の魔物を倒すのに気合を入れなければ行けないだろう。
すると、そんなときとある声が聞こえてきた。
「「騎士たちの転移に成功しました!」」
それはジェームス君の声だ。
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