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行動上限があるミツキくんは最強になりたい  作者: 人形さん
一章 転生は呪いと一緒~僕の呪いは自由を与えないみたい~
5/58

5話目



5話




 「まずは槍の使い方に入るか。」


 お父さんが所属している騎士団では槍を主体とした騎士が多いらしく、その中でお父さんも槍をよく使うみたいなのだ。異世界なのだから剣は使わないのか?と思うかも知れない。確かに、物語の主人公は剣を使う所をよく見る。


 だが世の中には剣道三倍段と言う言葉ある。この言葉の意味は、よく剣と拳で比べられることが多いが元は剣と槍、もしくは薙刀と比べられていたんだ。剣で槍を倒すには3段もの差が必要。


 それはなんでなのか?剣と槍で戦うときに顕著に出てくる問題はリーチの差だ。剣に対して槍のリーチは倍くらいある。だから、相手の剣による攻撃はそもそも届く事が無い。


 一番の差がそこなのだ。その差を縮めようとするには使い手の力量が必要。言ってしまえば、戦いにおいて間合いは命と同義なのだ。だから、その間合いが短い剣はそれ以下の間合いしか持ち合わせていない拳に対してなら強く出ることが出来るかも知れないが、それ以上の間合いを持っている槍に対しては本来の力を出せない。


 だって槍にとってみれば、自分が剣の間合いに入らないで入れば負ける事は無いのだから。


 ・・・そうだ前世のまだ銃が出来上がっていない頃の戦争・・古代ギリシャが得意とされていたファランクスと言う戦術を知っているだろうか。その戦術は負けなしとまで言われるほど強く、その戦術のみで様々な場所を侵略しに行ったんだと。


 なら、どんな戦術なのか?それは槍のリーチを最大限使った最強ともいえる守りの戦術。沢山の人が整列してすっごい長い槍と盾を持つ。


 それだけの戦術だ。ただ、それだけなのに、相手は近づく事すらできなかった。なぜなのか?槍の間合いに入る事が出来なかったからだ。


 もし入ったとしたら、目のまえに余すことなく並んでいる槍に刺され、何も出来ずに死んでしまう。これは普通の槍よりも長いからこそ出来た戦術だ。


 たった、間合いの違いのみで難関不落とまで言われた戦術が誕生したのだ。・・・このように、間合いとは戦いの上で大切なものなのだ。だから、この世界の住人は剣よりも槍を使う事が多いらしい。


 ・・・この世界の事はお父さんから聞いたこと以外知らないんだけどな。


 まあ、そんな訳で騎士団で好まれて使われている槍を中心に教えてもらっている。


 「まずは型からだ。見本を見せる。」


 すると、お父さんはよりを持って振るった。その型は相手を殺す事だけを考えたような側面を持った型であるが・・・芯には一本の棒が合って、綺麗と思ってしまう。そんな型だ。


 「【水流式】の【屍】という型だ。前にも水流式は教えたと思うが、それとは一風違った型だ。それじゃあ、いつも通り3回だけやれ。やり方は分かっているもんな。」


 お父さんは意味深な風に言っているが結構前からこんな感じなので、何を言いたいのかは分かっている。


 何が言いたいのかと言うと・・・俺は行動する度に魔力を消費してしまうから型を何回もリピート出来ないのだ。だから、本来の稽古とは違うやり方で練習をしなければ行けないのだ。だから、型をやる回数は3回だけど絞った回数しかやらない。


 だけど、こんな回数では型が身に染みなくてとっさに出ないのではないかと思うかも知れない。・・・戦闘とは0.1秒の単位で攻防を繰り広げる。だから、頭で考えて出すのでは遅い。


 だから、型を何回も練習してどんな時でも出せるようにするのだ。それに何回もやっていれば、どんな時でも型が綺麗になっている。それは練習から来ているものだから、何回も復習した方が良いのだ。


 なら俺の場合はどうなのか?・・・俺はその逆の方法で練習をする。その方法とは、自分に合っている効率のいい型を見つける。方法だ。

 だから、既存の型に拘る必要が無くて自分に合っている型だから体にしみこませるほど練習をしなくてもいい。


 ただ・・・この方法は熟練の戦士がもっと強くなるために新しい型を開発するためにやる方法なのだ。だからド素人の俺では出来ないかも知れないが。・・・俺が武器を振るう為にはこの方法しか無いみたいなのだ。

 たった3回という少ない数でどれだけその型の意味を理解できるか。そして、理解した事をどれだけ体に反映できるか。・・・これは初心者の俺にとっては無茶ぶりだ。


 『【物質 槍】に対しての干渉を確認。

スキル 制限 の効果により魔力を5徴収します。』


 ふぅ。集中しろ。

 この方法はお父さんが真面に動けない俺のために調べて考えた方法だ。だから、ある程度は理にかなっていると思うし・・・その期待を裏切りたくない。


 『【型 水流式 屍】動作および干渉を確認。

スキル 制限 の効果により、魔力を5徴収します。』


 最初は出来るだけゆっくり。どんな筋肉を使うのか、どんな振り方をするのか。それを動く中で感じていく。・・・この【水流式】の型は、お父さんの知り合いが入っている道場の型らしい。それをお父さんに友人が教えてくれたんだと。


 だから、今俺が出来ているのだが・・・この【水流式】の槍の使い方は攻防一体の物が多く、一つの型から複数の型に移せる物が多いみたいなのだ。例えば今やっている【屍】は完全に攻撃寄りの型だが、一つ拍子がすぎるといつの間にか別の型に変わっている。なんてことが出来る。


 変幻自在と言われる流派らしい。・・・実際にその名の通り今やって分かったが、この【屍】の攻撃の型から防御の型に直ぐ移行出来る。それに、【屍】から別の【水流式】の型にある【冷】と言う攻撃的な型にも変化させる事が出来そうだ。こんな攻撃をされたら嫌だろうなと、思ってしまう。


 ただ・・・


 「終わったか。」


 この三回を通して分かったことは・・・俺にこの流派は合わないと言う事だ。確かに、筋肉の使い方とか面白く、新鮮な部分はあった。だが・・・俺の『制限』は型の種類を認識していまう。


 だから、



 『【型 水流式 屍】動作および干渉を確認。

スキル 制限 の効果により、魔力を5徴収します。』


 『【型 水流式 雫】動作および干渉を確認。

スキル 制限 の効果により、魔力を5徴収します。』


 『【型 水流式 冷】動作および干渉を確認。

スキル 制限 の効果により、魔力を5徴収します。』



 今のは相手がいると想定して、この流派の型を乱立させて見たのだが・・・こんな風に多量に型を連続してしまうと俺の魔力消費が尋常じゃ無くなる。もし、この型一つ一つがそこまで強くないとかそう言う事であったのならば、ここまで魔力消費がされていないと思うが・・一つ一つの型がそれぞれで強力なので、『制限』の性質と相性が悪い。


 ・・・もしかしたら言っていないかも知れないが、『制限』のスキルは物や事の重要度?もしくは価値観によって消費する魔力量が違う。


 だから、【歩く】や【話す】なんかの行動は消費魔力量が多くなってしまうみたいなのだ。・・・普通の生活くらいは出来る様な消費量にしろよ。と思って居るが、こんな設定なので喋る事すらままならない。


 まあ、なので型の価値が高くてその型を乱立させる【水流式】は俺にとって相性が悪いのだ。


 「それじゃあ、そのまま摸擬戦に入るぞ。」


 お父さんはそう言うと、槍を持って俺の前に立った。

 いつもの事なのだが、俺がちゃんと【型 水流式 屍】を理解できたのか試そうとしているのだ。

 本来【水流式】の型は何回も繰り返すことで体が反射的に出せるようにする事を前提とした技のはずなんだ。だから、今のさっきで無茶と言われればそうなのだが・・・これを稽古の時は毎回やらされるので、慣れてしまっている。


 俺は槍にもう一度力を入れなおしてお父さんの前で構える。・・・そこに開始の合図はない。


 戦いはもう始まっているのだ。


 先手は渡さない。俺はそう意思を込めて槍を振るう。


 『【型 木葉流 落ち葉】動作および干渉を確認。

スキル 制限 の効果により、魔力を6徴収します。』


 俺がよく使わせてもらう、汎用性が高い攻撃の型。ただし、木葉流の弱点でもあが両足が地面に付いていないと行けない。。。それでも、どこに攻撃が来るか分からない、幻影の様な槍は相手にしづらいはずだ。


 揺れる様なその槍は、いつ攻撃をしてくるか、もしくはもう攻撃に入っているのか分からない。なぜなぜその木葉流とは体の仕組みを沢山取り入れた、演芸の武術。


 遊びから作られた型なのだから。だが、お父さんには何も効果が無いだろう。なぜなら摸擬戦の時毎回のように使っているから、対策などは出来てしまっている。


 だから、


 『【型 水流式 屍】動作および干渉を確認。

スキル 制限 の効果により、魔力を5徴収します。』


 一度通しで振った時、気付いたのだ。この水流式と木葉流の槍は似ていると。筋肉の動きを起点にして作っているからこそ、似たり酔ったりな部分がある。どちらも振った事が有るから気が付いた。だから、【落ち葉】から【屍】に水流式の様に移行できる。


 俺は【落ち葉】の奇妙な動きで意識を槍に移し、その一瞬の隙をついて間合いを詰めた。お父さんは、俺の制限を知っているからこそコストが高い【落ち葉】を囮にするとは思わなかったのだろう。


 いつもよりも一手遅れて対応する。だが、その遅れは俺にとって最大の好機。そして選んだ技である【屍】はただの攻撃ではない。瞬を跨ぐ神速の槍だ。


 だからこそ、その戦いは一瞬で終わってしまった。


 俺の槍はお父さんの胸を貫くように槍先で叩いていた。幸いにも、と言うべきかもしくは摸擬戦だから当たり前と言うべきか、槍は木製なので軽い打撲はあるがその程度ですんでいた。


 それに、お父さんはいつも騎士団の訓練でこれ以上の攻撃を受けるみたいなので、大丈夫なのだろう。


 「強くなったな。」


 俺はお父さんに何の反応も示さないようにする。反応してしまったらコストをしはらわ無ければいけないからだ。もし、うなずくだけでも言葉に反応して肯定したと判断されて魔力を4は持っていかれるだろう。


 今の俺にとってそれは致命的だ。稽古でもう60~70近く魔力を消費してしまっている事から、もう日常生活で精一杯だ。もしかしたら普通に生活する分も残っていないかも知れない。


 なので、今日の稽古は終わりにする。


 俺はお父さんに投げられた水筒の中の水を貰い、何も言わないまま家に帰っていくのであった。






【行動上限があるミツキくんは最強になりたい】をご覧いただきありがとうございます。もしよければブックマークや評価をしてくださるとうれしいです。


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