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行動上限があるミツキくんは最強になりたい  作者: 人形さん
3章 出会いの始まり~僕に会いたい人は多いみたいです~
40/58

40話目


 40話


 ギルド長



 それが出てきたのはその大きな声が国に響いてから10分も立たなかった頃のことだ。ギルドから、緊急依頼によって招集された討伐者。騎士団から対魔物戦部隊の第4騎士団である機動隊員。


 それらは焦ったように。もしくは焦らされたように急いで街の外に駆け出していき、あたり一面を見渡し始めた。それはその大きな声で知らされた、事象の確認を行っているのだとすぐに気づくだろう。


 そして、その成果が出たのか周りを見渡し数分がたった頃、視界の奥に物陰が見えるようになった。・・・そう。魔物だ。。


 幸いにも冒険者および機動隊は最低限ではあるが武器を所持しており、中には弓矢や投げ槍を持っている人もいた。さらに言えば、魔法書を所持しているのでほぼ全ての人が、命令されれば今すぐにでも魔物を倒す事が出来るだろう。


 だが、そんな最低限としか得いないような対抗手段は心を安定させるには乏しく、一重魔物を見た人たちは今すぐにでも、逃げ出そうとしている。それは前回のスタンピードによって与えられた精神的な傷であり、もしかしたら前回のような事が起きるのではないのだろうかと言う恐怖で体が思うように動かない。


 そして、それは1人や二人ではなく、討伐者および機動隊の面々の殆どである。


 こんな状態で目の前の魔物に対抗する事は、自殺と同義でありそのような事をしてしまえば、スタンピードに対する対抗手段が無くなってしまうだろう。


 そんな恐怖にさいなまれている中でも当たり前のように魔物はドンドン近づいてくる。それは集団だからかもしくは本能が刺激されているのか、一切足を止めずに行進が緩まる事は無い。


 だから、気付いたのだろう。魔物の数に。


 そのスタンピードの魔物の数は、、、前回の比では無かった。前回の5倍は行かなくとも2倍3倍は目視で確認できる。


 その数は縮こまっていた体が逃げるには容易い情報であった。なぜならば前回であってもその数で押し切られ国の内部が破壊された。その数を優に超すそれは、本能に従う事でしか動けなくなってしまうだろう。


 そんな中、幸運な事にその魔物の集団を刺激するような輩はいなかったみたいだ。変に攻撃をしてしまうと襲撃の対象を定められてしまい、魔物たちは殺すことに全力になってしまう。それは進行の速度を上げる事に繋がってしまうため、結果的にこの国の破滅へのカウントダウンが早まってしまうだろう。


 その事を分かっているのかいないのか、もしくはベテランだからか静かに足音すら気負付けてその場から立ち去った。


 結果的にそれがよかったのだろう。報告はギルドおよび騎士団へとちゃんと届きその情報は正確な物へとなっていた。


 どの様な魔物がいるのか、どのくらいの時間で到着するのか、進行速度はどれくらいなのか。ボス的な存在はいるのか。さらに言えばその魔物たちは飢えているのか、土地が欲しいのか。


 そういう情報は、その魔物たちへの対処を考えるうえで大切なものとなって行く。それは前回のスタンピードで学んだことであり、このスタンピードを対処する上での最適な行動を計算するうえで大切な事だ。


 前回は真面に情報が無く、スタンピードが目の先と言う所での報告だったため、対処の方法が無かった。だから、前回はS級討伐者を呼ぶことが出来なかったし、他の対処手段を考え出す事すらできなかった。



 ☆



「と言う訳だから、そちらの対応を聞きたい。」


 その文言から聞き出したいのは騎士団の動き方だ。前回はスタンピードを楽観視しており、魔物が城壁内に入ってからやっとの事行動に移していたため、今回はちゃんとした対応をしてもらう事を希望している。


 前回の損害を考えると今回は動いてもらわないと、国は簡単に潰されてしまうだろう。


「こちらの対応としては、第一騎士団および第二騎士団、第四騎士団を門外の戦闘へと向かわせようと考えている。」


 第一騎士団は遠距離および近接戦を無難にこなせる万能型である。だが、その力量は無難とは言ったが無視は出来ない程。それぞれが個人として担当している分野は上級者以上の力量だ。


 だから、討伐者の基準で言えば簡単にBもしくはA級へとなって来るだろう。

 さらには第二騎士団。こちらは魔法による広範囲殲滅を目的とした騎士たちだ。だからその近接に関しては一切信用できないが、魔法に関してはスタンピードにうってつけだろう。その魔法による広範囲の殲滅は俺も一度見たことがあるが、あまりに壮大な物であった。


 その者たちが魔法を打った場所は必ずと言ってもいい程、魔力痕が残るのだから。


 そして、最後は第四騎士団。第四騎士団は通称魔物専門部隊。何て言われている。それは平常時は門外の付近に出て魔物を倒すことで国の平和を保っているからだ。・・・だが、今回に関しては戦力となるかは少し疑問視をしなければ行けないかも知れない。


 それは、第四騎士団の魔物の倒し方にある。簡単に言えば一体ずつ確実に倒すやり方であり、今回のスタンピードのような量をこなす戦いではその殺傷力は発揮されないだろう。平常時であれば、その殺傷性の高さからこの国の力量の高さとして有名なのだが。。。それはしょうがないとしか言えない。


 俺は情報を整理する事で、戦力の調整を測る。


「人員に関しては分かりました。では次に出費金額に関してです。国政としてはどの様にお考えでしょうか。」


 人に関しては正直何でもよかった。こちらには討伐者の集団がいるので騎士団から人を出されても誤差の範囲だ。でも、その強さは当てにできるので個人的には保険として動いてもらえてよかった。


 そして、大切なのは国が出せるお金だ。


 この国のギルドは自営ではなく国と密接に繋がっており、基本的に運営費用は税金から賄っている。だから、今回のような緊急事態の際は、こうやって請求するのだ。


「基本的に討伐者およびs級討伐者に対しての成功報酬は全てこちらで負担しようと考えている。」

「ありがとうございます。」


 つまりギルドとしてはすべての戦力でこのスタンピードに対抗するということだ。いつもならこちら側が出せる報酬にも限りがあるから、無制限に依頼を出すなんてことはできない。


 この様子を見て国としても本気で対処しようとしている事が感じて取れる。

 前回で反省したのかはわからないが、この事態に対して危機感を感じ取ったのだろうか。


 その発言に安堵を感じ浅く座っていた椅子に深く座った。それは今回のスタンピードはほとんど損害なく解決するのではないのだろうかという、予測がそうさせてくれたのだろう。


 実際にこの国は半端な小国ではなくて、立派な大国だ。そんな国が全力で対抗するのだから、生半可な結果にはならない。


 そう確信出来るほどの戦力だ。


「では、前回のようなことにならないようs級討伐者全員に10億ベリーの報酬を設定した、依頼を出します。」

「分かった。」

「詳細は後に出しますので見ておいてください。」


 そして、今回は前回のようにS級が誰一人来ないなんてことになって欲しくないので、前回の2倍である10億出そうと思う。他のS級依頼と比べて緊急と言う事を加味したとしても、適正依頼量を遥かに超えている。


 だが、そんな事は関係が無い。なぜなら誰も依頼を受けない方が問題になるからだ。だから、出来るだけ依頼量を出す。国側もそう考えて無制限にお金を出すと言ったのだろう。俺はそう言う風に確信したので、依頼量に関してはそう言った。


 後の依頼の内容は、スタンピード用にフォームを作成しているのでそれを使用すれば良いだろう。


「それでは質問はありますか?」

「いや、大丈夫だ。」

「では会議を終了いたします。」


 緊急が高い時だから無駄な報告や話は一切せずに会議は終わった。こんな時だからか、いつもぐちぐち言ってくる王国騎士団総指揮官ダレラソラールも何も言わなかった。その顔は真剣だったからこの事態をちゃんと認識しているのだろう。


 よく前ギルド長がダレラソラールはやる時はやる男だと、言っていたがそれがよく認識出来る。


 俺は会議が終わると一番最初に席を立ち真っ先にギルドへ戻って行った。今の会議は今回のスタンピードをどの様な方法で撃退するかの方針を決める会議だ。だから終わったとはいえ一息付ける状況ではないのだ。


 様々な契約書を記入しなければいけないし、一番大事なのはその行動を出来るだけ早く終わらせること。今回のスタンピードを退けるのはギルドが中心となっている。そして、ギルドは俺がしきっている。


 つまり、俺が動かなければこの国は無くなってしまうのだ。


 そう心の中で自身を圧迫させ作業を始めた。


 スタンピードが到着するまで……あと4時間だ。




【行動上限があるミツキくんは最強になりたい】をご覧いただきありがとうございます。もしよければブックマークや評価をしてくださるとうれしいです。


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