28話目
28話
死にかけた。それは僕のことを酷く傷つける。
だけど、そんな事に感傷に浸っている暇はない。そんな事をしていたらいつ次の『制限』が発動するか分からない。
英雄と言う自分で蒔いた種が僕を殺しに来ている。それはいつか来る未来なのだから対策の一つでも用意しなければいけない。
☆
それはとある本に書かれている文章だ。
「ビャーミャ神の末裔であるミャソポラント神はビャーミャ神の血が色濃く出ており、そのおかげか特別な回復魔法に適する。だが、その特別な回復はビャーミャ神とは違い特色が違う物であった。
その回復とは回転するから来ており円を描いたものとなっている。つまりは万全の状態から怪我をしたとき、怪我をした状態を回転させると万全の状態となる。
もしくは何とも思っていない状態から嫌な気分になった時、回転すると何とも思っていない状態となる。
イメージとしては円をかいたときその一番上と一番下にそれぞれの前後をかく。それを回転させていると思ってくれればいい。」
僕は神聖術を授かるためにその本を読んでいたのだが、、難解すぎて読むのが疲れてきた。思わずその本を投げてしまいそうになるくらいには頭が痛くなってきている。だって、ジェームス君にすすめられてビャーミャ神を調べているけど、難しすぎて辛い。
なんだよ、回転だか回復だか知らないけど分からないよ!
はぁ、流石につかれてくるよね~。こんな意味が分からない設定集を読まされると、本当にこんな神様がいるのか?ってい疑いたくなるし。ここに書いてある神様って全部チート級に強い能力を持っているんだよね。
概念的に回転させたら治りますってなんだよ。それにこの先の説明を読むと、回転させる内容を決めることが出来るから「死」と設定して世界を救いましたとか何とか書いてあってほんと意味が分からない。
はぁ。ほんと試練を授かる為に読んだけど、まったく決まらない。・・・そう言えば呪いに関する神様っているのかな?
僕は一つ疑問を持ち、教会から貰ってきたその本で探してみる事にした。割と分厚いから探すの大変なんだよな。目次とか無いし。
☆
無かった~。頑張って最後まで探したけれど、それらしい神様は1人もいなかった。全員良く分からない超常現象を起こしているだけで僕が普段使っている魔導のような理論で組み立てられた神様もいなかったし。
「あ゛~疲れた~。」
「お疲れ様です。どうでしたか?」
すると僕が読み終わったことに気付いてくれたのかジェームス君がお茶を出してくれた。集中すると飲み食いをしないから喉が渇いていてありがたい。
僕は渇いたのどを潤すためそのお茶を飲んでジェームス君に返事をした。
「ん~。アラリ神とかラクラ神とかは良かったかも。」
「確かに回復系の神様ですよね。」
すると神様の名前を言っただけでなんの神様か当ててきた。流石助手だ!と思う。
「それはそうとしてこの前言っていた『魔力回転に関する実用的な使い方の考察』はどうなりましたか?論文にしなきゃいけないって言っていましたよね?」
「・・・あ」
僕は重要なことを言われ思わず声が漏れてしまった。なぜならば忘れていたのだから。
「あ、ってなんですか!もしかして全然進んでいないんですか!」
「いやー、、最近色々あったししょうがないよね。校長に言えば伸ばしてくれるから、、大丈夫でしょ。」
「・・・それでいいなら。」
なぜジェームスくんがここまで僕に言ってくるかというと・・その論文を出さないと僕は教授から降格になってしまうのだ。これは、この第一魔法学園の特別性にもあるのだが、実力がない人が弁を立つのは理解ができないという校長の言葉から始まったことだ。
それは、成果を出さない教授は必要ないという制度につながったのだ。だから、そろそろ僕は成果、、論文を出さないと教授ではなくなってしまう。
なので、ジェームスくんがガミガミあってくれるのだ。・・・だけど、僕はその事を忘れていた。
いや、前のスタンピードを治めたときまではしっかり考えていたんだけど、それからは結構忙しい日々だったから研究ができずに忘れていたのだ。
だから、その研究は一切進んでいない。・・・今の状況を一言で言えば『ヤバい』だ。さっきジェームスくんには、校長に話せば何とかなるといったが、そんな訳ないわけで。
つまり、今から僕は虚無の研究コースと言うわけだ。こんな時『制限』がなければ徹夜もできたが、『徹夜』なんてしたら魔力が回復しないので厳禁だ。
なので、できるだけ高速で思考を回して徹夜分も圧縮しなければいけない。
「・・・ねえ、ジェームスくん。」
「何でしょう?」
だが、僕は一つの可能性を見出していた。この方法は諸刃の剣ながらも今の状態では使わなければいけないほどの切り札。
それは、
「『試練』休暇が合ったよね?」
そう、休んで逃げてしまおう作戦である。それにこの方法はただの休みではなく『試練』という無限に頑張らなければいけないことであるから、その間は教授としての義務はなくなる。
ちょうど『試練』の事について調べていたから一瞬で思いついたのだ。
「・・・論文から逃げたって悪い噂が広まりますよ。」
「いやいや!僕は『試練』を授かるために休むのだから、決して論文から逃げているわけではないよ!決してね。」
僕がどう出るかわかったのかジェームスくんは、呆れたようにため息をついた。確かに今の僕は早急に『制限』に対しての対策をしなければいけない。
それは、僕がメソミア王国で英雄と言われているのが他国に広まったら、それをきっかけにまた『制限』が発動して先のように死んでしまう可能性が出てくる状態になってしまうかもしれない。
だから、僕が『試練』を受けに行くのは真っ当なことなのだ。決して論文から逃げなわけではない。
なので、ジェームスくんは何も言えない。そして、僕は何も言わせない。
「ハァー分かりました。確かに教授の今の状況は早急に対処しなければいけない事案です。そして、実際に校長も『試練』を受けるのには賛成したのでしょう。
それなら俺が何を言っても意味がありません。」
・・・なんで、僕がジェームスくんを言いくるめようとしているかというと、『試練休暇』をもらうには僕のサインと助手のサイン。そして、校長のサインがいるのだ。
でも、僕は休暇を取りたいと言っているし、校長は試練をつけたほうがいいと言っている。つまり、あとは助手であるジェームスくんだけなのだ。
「そんな見え見えの魂胆に疑問を持ちますが・・・今回だけはしょうがないです。サインをしましょう。」
!!!やった!ジェームスくんは女たらしのくせに正義感強くて魔法系のことに関しては真っ当だからこういう手続きに関しては手強いと思っていたから嬉しい!
「うんそれじゃあ、僕はさっそく『試練』を受けてくるよ。」
「書類の手続きはしておいてくださいね。」
「分かってるよ!」
そう言い僕は意気揚々とこの論文地獄から抜けるのであった。この時期は他の教授は成果を出そうと忙しいのに僕はそんなことしないでいれるなんてどこか得をした気分だ。・・・まあ、別に研究が嫌いとかそう言う訳では無いんだけどね。
研究をすればするほど呪いの真理に迫っているような気がするし。それにやりたいからこの道に来たわけだし。だけど、こんかいはその範疇に物事が無かったかと言うか。
僕はその呪いの特別性から人よりも行動出来る範囲が狭いんだよね。それなのに無理やりやれと言われても出来ないから・・こんかいはしょうがない!
僕は自分を肯定して早く書類を出しに行くのであった。
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