25話目
25話
悪魔が僕と契約した瞬間、悪魔の体はドンドン凶暴な肉体へと変化していく。その体を見たものは思わず発狂してしまうのではないのか?と思うような容姿をしているが、これは悪魔の正常な機能だ。
悪魔は契約を必ず遂行するために、契約の内容に応じて肉体を変化させる。時には目に見えない程小さくなったり、時には類を見ない程の美人になったり。
だから、いま悪魔が凶悪な体になっているのは『制限』を対処するのに必要な事なのだろう。
だが、呪いに対して体を変化させたところで何か意味はあるのかと思ってしまう。
「痛いけど許してね。」
すると、悪魔は変身が終わったのか僕の方に近づいてきて丁度胸の部分を触ってきた。・・・いたいと言っていたがどんな痛みか分からないのでどう意気込めば分からず、意味もなしに無駄になるかも知れないが体に力を入れて痛みに備える。
「はい3、2、1」
すると、僕が痛みに警戒していることが分かったのか悪魔は丁寧に掛け声をかけてくれた。優しいと思ってしまうが、、まあ、悪魔とはいっても残忍で残酷と言う訳では無いから、良心で気にしてくれたんだろう。
僕はその掛け声に反応して丁度0になるタイミングでグッと、体に力を入れて痛みに耐えようとする。・・・だけど、
「あ゛!」
その痛みは肉体に来るものではなく、精神と魔力に来るものだったらしい。アドレナリンが出まくっていて十分に頭が回らなかったからか、僕はその可能性を見落としていて、悪魔が掛け声をかけてくれたにもかかわらず、完全に無防備な状態で痛みを食らってしまった。
その痛みはどこかにある精神がぽっかりと空いてしまう感覚で、そして僕の魔力が微振動をずっと繰り返しているような感じ。
痛いと言う感覚ではないと思うが、だけどその感覚は痛みと系統が似ている感じ。・・・精神的な痛みと言うか、、鬱の様な感覚だ。
「ミツキ君!!」
すると僕の様子に不安を感じたのか校長が大声で僕の事を呼ぶ。だけど、【魔法 未来予知】の代償でその場から動くことが出来ず、僕には声しかかける事が出来ていなに状況だ。だけど、【魔法 未来予知】を使ったにもかかわらず、動けない程度でいられるのは校長の凄さだろう。
だけど、その凄さは今は意味が無かっただけだ。
「まだだよ!」
その悪魔の行動はずっと続いている。早く終わらないのかと思うがその意志とは反してまだ終わらないいつまで続くのかと思うが、、、
『【メソミア王国国民】に対しての多大なる干渉を確認。対象を【英雄・救世主】と崇拝しております。また、【メソミア王国国民】の生命救助を果たしており、以上の事によりスキル 制限 の効果で魔力を1万徴収します。』
その時が来た。
僕はこの『制限』をどうするのか聞いていないので、いまだに恐怖を抱いている。だって、1万もの魔力を取られたら・・・校長が言った通り内部から爆発するかもしれない。それに、僕の魔力量はこの前確認した時は5000くらいだった。その時よりも増えてはいるだろうが・・・自分の魔力の倍の魔力を取られたらどうなってしまうか僕は知らない。
いや、過去に自分の魔力以上の魔力が取られた時どうなるか研究した時はあったんだ。その時は、まずその時に保有していた魔力は全部取られてそのうえで、僕は数週間眠ってしまったんだ。
その寝ている間は魔力は回復していたが、回復した瞬間にどこかに取られてずっと0の状態だったみたい。そして、最悪なのは魔力が0になった時体の機能は殆ど動いていない。それは魔力が無くなったからだ。
最低限の機能はあるがそれは盆等に脆弱な物。だって今まで日常生活で補助をしていた、第四内魔力の『安定』や第三内魔力の『変化』は存在していないのだから、しょうがない事だ。
だから、もし僕が内部から爆発したような状態で生き残ったとしても・・・そのまま死んでしまうだろう。それは第四内魔力の『安定』がないからである。もし、回復系の魔法士が来たとしても・・・特殊な魔法でなくては回復は出来ない。
そもそも、回復の魔法はその回復対象の第四内魔力を活性化する事で今までより早く治すと言う魔法だ。だから、魔力が無い僕ではその恩恵が受けられない。ただ、もちろん例外はあって・・・僕が魔法書を授けられた時のことを覚えているだろうか。
あの時僕は神に対して干渉したということで、魔力を沢山取られてしまい瀕死の状態となった。だが、あの時は特別な・・・「神聖術」を使える人がいたおかげで回復できた。
それならその『神聖術』をつかえる人を呼んでくればいいと思うかも知れないが・・神聖術を使える人はそうやすやすとは動くことが出来ない。だって、神聖術を使える人は神に仕えている人たちなのだから。
だから、神から魔法を授かる時は回復してくれたが・・・それ以外の時では回復してもらった事が無い。
今ほど神聖術を渇望している時はないが、、、まあ、なのでもし魔力を1万も徴収されたとしたら僕は死ぬしかないのだ。神聖術に変わる薬屋魔術はまだ開発できていないしね。
・・・・すると、、、僕は身構えていた『制限』は発動しているがいまだ一切徴収されていない。
「ふうぅ~。契約はおわり!」
「え、」
すると、悪魔は僕の事を放してくれた。・・・何か凄い事でもするのかと思っていたけど。結果として静かに終わったな。
僕は悪魔が何をしたのか理解が出来なかっただって、触られたときは精神的に異常があったから何かしているなとは思ったけど・・・だけど『制限』が発動したあとまでそのままで、どんな風に回避したのか分からない。
「なにをやったの?」
なので、僕は悪魔に聞いてみた。だって、もしこの事を僕が自分自身で出来るようになったら『制限』に怯える必要は無いのだから。・・・ただ、そこまで期待はしていない。
「ん~分からない。だけど、今回の方法は一回限りの回避方法だから次同じことをやろうとしてもちゃんと徴収されると思うよ!」
悪魔は契約をしたときにその契約を遂行するために、その契約内容にあった力を発現するが、その力の詳細は一切わからな。ただ、使い方とどんな風に使えばいいかだけしか知識がない。だからどんな事をしたのかやどういう行動なのかとかを詳細に語る事は出来ないのだ。
だから、あまり期待していなかった。だけど・・・次は使うことが出来ないとは言われた。なんで同じことが出来ないのか分からないけど、それを教えてもらえただけでもよおかった。
「じゃあ、報酬を貰うからね!いつも通り魔力が満タンになったらその2割を貰うでいいよね!」
「うん、そうして。」
僕はいつも通り悪魔が魔力とる許可を出すのであった。・・・正直最大量の1割を取られるのは結構しんどいのだが、それでも一気に取られないだけ良い。もし一気に取られたら爆発はならなくても内臓に傷は出来るだろうから。
・・・あ~よかった。もしかしたら死んでいたかもしれない事態を悪魔のおかげで解決できて。
正直こういう魔力が一気に取られることが無いように生きてきたから、魔法書を使うこと自体が頭から離れていた。だけど、ちゃんと思い出せてよかった。
すると、そんな安堵していた時突然ピロン!という軽快な音が聞こえた。
『対象の魔力徴収時に不明な魔力に置き換わっておりました。このような行動は徴収違反のため今後は無いようにお願いいたします。』
そこには割と怖いことが書かれていた。今回の徴収を回避するために悪魔がやった行動に対しての警告なんだろうけど・・・次は出来ないと言っていたのはこういう事だったのかと改めて理解した。
それにしても魔力を徴収するときに規約なんてあったんだなと『制限』に対して理解が深まった気がする。
「だいじょうぶ!ミツキ君!」
するとさっきまで動く事すら困難であった校長が僕の所に来てくれた。
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