24話目
24話
「そう言えばミツキ君はエルクト博士君の所に行ったんだよね。」
「はい、先ほど御呼ばれされていかせてもらいました。」
僕は現在校長とお話をしていた。最近は僕と満足いくまで喋る事が出来なかったと愚痴を言っていたので、この機会だと思い規約違反を理由に僕を引き留めていた。だけど、僕自身校長と話すことはそこまで嫌ではないので、規約違反を理由にしなくてもいいのにと思っていたりする。
だって、学園の校長と言う立場であるから結構色々な知識を持っており、様々な論文や様々な意見を漁っているらしく、そこら辺の専門研究者では、その分野ですら追いつけない。
それくらい知識がある凄い人なのだ。風邪のうわさで聞いたのだが、とある国の王様はこの校長に忠実を誓っているのだとか。それは王様としてどうなの?と思ってしまうが、その王様が誰なのかは判明していないので、それくらい凄い戯言と思えばいいだろう。
まあ、それくらい凄いのだ。
だから、校長と話しているだけで色々な知識を貰えると言うか・・・それとなしに行き詰っているところを言うと、様々な情報を教えてくれたりする。・・・まえに教えてくれたのは、呪いを文化的に取り入れている一族の事だったり。
ほかにも、魔導的理論の解釈だったり。色々な事を教えてくれて、出来れば僕の方から話したいと思っている。
ただ、校長という立場から暇を弄ぶ時間はなく、今回の様にちんまりとした僕の規約違反を指摘できる機会はそうそうないのだ。ただ、今回はそれとなく空いていた時間を僕の規約違反を叱るという口実の下に埋めたらしいのだ。
だから、今回に限っては規約違反をしてよかったと思っていたりする。だけど、今度はこんなことをするなと怒られたけど。
「魔導に関して興味があったみたいで、僕に教えてもらいたいと御呼ばれされたんですよね。」
「へ~よかったじゃないか。私でもあの研究室に入れることは少ないんだから。」
「はい。僕もエルクト博士の考え方には感銘を受けさせてもらいました。」
僕はあの研究室でエルクト博士に魔導のことを教えていたのだが、博士は分からない事が有ったら毎回なんでなのか?と質問をしてくれて、その目の付け所が僕とは結構違っていたので、楽しい時間だった。
あんな見方で研究をしたらまた違う物が見えるのではないかと、早く魔導の事について考えたいと楽しみになっていた。
「そう言えばエルクト博士くんは何か変な様子はなかった?」
「変な様子?」
するとさっきの様子とは打って変わって、思い出したように僕から何か心当たりがあるか聞いてきた。だが、僕は博士にたいして変だという感情は抱かなかったので、良く分からない。
それに、エレクト博士とあったのは今回が初めてだから、変だとしても分かるはずがない。
「いやね、最近エレクト博士くんの周りで嫌な噂が多々立つから気になっているの。」
「そうなんですか?普通に笑顔で話していましたし・・それに悲壮感もありませんでしたが。。」
「そっか~。まあ立ち直れたなら良いのかな。」
その事は僕にいして話す気が無いのか、全体をぼかして何かあた事だけしか分からない。・・・でも出来れば博士のことは知りたいな。だって、今日あれほど話して楽しかったのだから、何か出来る事が有ったらいいんだけど。。。でも、今日あった時は何かあったような様子は見せなかったから、もう解決しているのかな?
僕はその話題を深堀たかったが、校長はあまり話たくあんさそうなので、自分の中で飲み込こむことにした。
「・・・そうだ!エルクト博士から報酬としてこの紙を貰ったのですが、校長に見せればいいと言われて。」
暗くなった空気を一変させたく何か話題が無いのかと考えたら丁度いい物が見付かった。
僕は忘れていたように手帳に挟んでいた金券を校長に渡した。正直校長と会える機会は少ないから、渡すのは結構先になってしまうのではないのかと思っていたが、今回あえてよかった。それに金券を渡すだけに合うのは下品だし。
「お!よかったじゃないか。1000万エルも貰うなんて。分かった、これは私が変えておくよ。」
「ありがとうございます。」
これで僕は校長に対しての用件はなくなった。
気楽になったその手帳をしまいまた校長と向かい合う事にした。だがそろそろ次の要諦が来るところだろう。
「そう言えば、話は戻るんだけど今のメソミア王国の事は知っている?」
「何かあったんですか?」
メソミア王国は僕がスタンピードを倒した場所だ。だがその事があってから僕はメソミア王国に関してそこまで興味が無かったので、あまり情報を入れていなかった。だって、スタンピードを倒したのは知名度を上げるためであったので、国に対してはそこまで興味はない。
なので、今のメソミア王国に関しては知らないのだが・・・もしかして、またスタンピードが起きたのかな?一回救った国だから興味がないとはいえ滅んでいるとかは嫌なんだけど。
「ミツキ君人気みたいだよ、メソミア王国で。」
「・・・?」
すると僕の予想とは裏腹に予想外の事を言ってきた。・・いや、予想外ではない。スタンピードを倒したのは知名度を上げるためと言う理由もあるんだから、人気になるような演出をしたつもりだ。
だから、人気なのは嬉しいのだが・・・校長が言ってくるほどなのか?
「ほらさっきも正門の前で人だかりが出来てたじゃん。あれ、ミツキ君のファンだよ。」
「え、、、」
嬉しい。僕は素直にその言葉を言い出せなかった。だって、メソミア王国からこの学園まではそれなりに遠いのに、この短期間で来るなんて・・・メンヘラ彼女の様な感じがして何か嫌だ。
僕の想定では「今回のスタンピードを治めてくれたミツキ教授は凄い人です!」位だったのだが、もしかして想定外の知名度になってはいないか?
「私が聞いた話だと『英雄』とか言われているみたいだよ。」
・・・え。。。待って完全に想定外なんだけど。そんな風に祭り上げられたら、、『制限』が暴走しちゃわないか?
僕の呪いである『制限』僕と言う人間によって干渉した度合いによって魔力消費量が変わって来る。だから、、今回の様に英雄なんて言われてしまったら、、、どれだけの魔力を取られてしまうだろう。
僕はその想像をしたら思わず寒気がしてくる。
だって、取られる量が想像つかないのだから。
「・・・もしかして、まだ『制限』は発動していなかったの?」
『制限』が発動していないとはどういうことなのか。・・・これは僕がこれまでの人生で気付いたことなのだが、、、制限で魔力を取られる時、その取られる魔力量が多い程発動まで時間がかかるのだ。
つまりだ。僕がスタンピードを治めてから約一ヶ月前から『制限』が発動していないと言う事。
「っ!!早く魔力回復薬を持ってこなきゃ!」
いつ来るか分からないその『制限』の恐怖。もし今発動したとしたら、僕は何も出来ずに死んでしまうかも知れない。それくらいの消費力が『制限』にはある。だから、・・・早く対策をしなければ!!!
「ちょっと待って!いつ発動するか確認する!」
すると僕が急いで校長室から出ようとした時校長は僕の事を止めた。正直早く魔力回復薬を取って来たかったが・・・取ってきたところでストックしている分で足りるか分からない。そんな心配は僕の焦りを加速させる。
そんな僕をなんで止めたかは、校長の魔法にあるだろう。
「【魔法 未来予知】」
その魔法は未来を知ることが出来る魔法だ。全てを見通し生きることが出来る最強の魔法。この魔法を使って校長はその地位まで来たのだとよく僕に自慢していた。・・・そう。この【未来予知】という魔法を与えられた人は校長ただ1人と言う希少さだったのだ。
だから、こそその未来予知を上手く使い校長になれたんだと。もし日本で未来予知が出来る人がいたとしたら宗教団体に拘束されてあれやこれやされただろう。
だけど、この世界はその時は未来予知と言う概念が無かったみたいなのだ。
そして・・・その能力とは、、これから起こるであろう可能性の一つを見る事が出来るのだ。その「見る」とは予測ではなく、超常的なものだと思ってくれたらいい。
だから、僕の『制限』が発動する時を、何の情報もなく予知出来るのだ。
「・・・あと10分後みたい。」
その予知から導き出されたタイムリミットは残酷な物であった。その事実に思わず気絶してしまいたくなるほど。
なぜならこの校長室から魔力回復薬がある研究室までは優に20分はかかる。だから、取りにいく時間が無いのだ。・・・もしさっき取りに行っていたら道の途中で倒れていたのだと、思わず冷や汗が出てきてしまう。
だが、回復薬が取りに行けないと言う事が決まっただけで、事態は悪化している一方だ。
「それに、、発動したら内部から爆発したような状態になるくらいダメージを受けていたよ。」
・・・やばい!!!早く何とかしなきゃ!
僕は校長から受け取ったその言葉に焦りが生まれてきた。だって爆発したようなダメージってどれくらいの魔力を勢いよく抜かれたらなるんだよ。
「・・・そうだ!」
そんな状態だから思い出した。そんな極限の状態だからこの状況から向けだせる方法が分かった。・・・それは、、
「【誕生せよグリモワール】」
それは僕の1冊目の魔法書を起動するための言葉だ。
すると僕の腰にしまわれていた凄い豪華な装飾がなされている方の魔法書が中に浮かびながらバサバサと開かれた。その様子はまるで本が意思を持っているような感じであるが・・・この魔法書は実際に意思を持っている。
「【我がグリモワールの指名に基づき命令を下す。『僕の魔力最大値量分まで持って行っていいから『制限』を何とかしろ!』】」
そして、本来ありえないであろう魔法書に命令を下す。だが、これは僕の魔法書の機能だ。ちゃんと神から授けられた魔法書に付随する奇々怪々な魔法。
その魔法は・・・とある悪魔との契約だ。
ポン!
「は~い!!承知しました!!」
すると中に浮かんでいる魔法書から可愛らしい姿の生物が出てきたではないか。・・・この生物が悪魔だ。だがその見た目に案ずるなかれ。今のその姿は僕が悪魔の事を制御しようとした末の姿。つまり仮の姿だと思ってくれればいい。
そんな仮の姿の可愛らしい悪魔は僕の契約に応えて魔法書から出てきてくれた。その契約は僕の魔力を半分上げる代わりに、どんな方法でもいいから『制限』を何とかして対処してくれと言う契約。
なんで悪魔とそんな契約をしたかと言うと、、悪魔は契約の報酬の度合いでどんな事でも叶えてくれる種族なのだ。ただ、契約をしないと何も出来ず、反対に莫大な報酬を用意するとそれ相応の力が湧き出てきて必ず叶えてくれる。
つまりは、願い事を叶えてくれる存在なのだ。だが、どんな願い事でも叶えてくれるかと言えばそう言う事ではない。あくまで契約だから悪魔側が「嫌だ!」と言えば契約は出来ない。それに、ちゃんと報酬を用意しないと悪魔側も力が出てこないからどうにもできない。
そして重要なのは、悪魔は契約をした事は「必ず」叶えてくれるということだ。つまりは、中途半端な報酬では悪魔側もその契約内容を遂行できるか分からないから、受けてくれない。だから、悪魔と契約をするときは出来るだけ多くの報酬を用意する必要があるのだ。
その報酬は願いの価値に対して2倍や3倍。もしくは5,6倍あった方が良いのだ。だって、悪魔は種族として「必ず」契約を遂行しなければいけないのだから。
・・・と言う事は?今僕と悪魔との契約は成立したので、、今回の『制限』は何とかなると言う事だ。
・・・・ただ、契約の内容に「何とかしろ」と言ってしまったから、どの様に解決してくれるのかは想像もつかない。
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