12話
12話
まずはと言うべきか、先ほどと同様に本を開き再度紙を破る。それが当たり前かのようになされた行為に疑問が湧いてくるが、そういう仕様だからしょうがない。
そして、僕はその紙に書かれた模様を起動する。起動の仕方は結構シンプルだ。だが、助手のジェームズくんは難しくて出来ないと嘆いていたが。それはしょうがない。難しいのがこの術の難点なのだから。
では、その難点とは何なのか?
魔力を通す事だ。
もっと詳しく言えば、体の中にある内魔力を体の外に出して外魔力にした後、自然魔力という人間には生成できない外部魔力と結合した上で、特定の形に変形させることで発動する。
これが……魔術である。
さっきから術、術と何回も言ってたが僕が使っているのは魔術という魔導の一種だ。魔力を特定の形に変形させることで超常的現象を発生させる。それが魔術。
そして、僕が研究しているのも同様に魔術であるが、認識として合っているのは魔導全般である。最近はとある研究のために魔術だけに注力していたから、生徒たちには魔術専門と思われている節はあるが・・・まあ、しょうがない。
それで、今回発動させた魔術とは何なのか?
さっきも言ったが魔術とは特定の形に魔力を変形させる事で起きる超常現象。そしてさっき僕は魔術を発動させていたのだ。紙にその特定の形。今回だと2次元の模様という形で目印を書いておき、その目印に合わせて魔力を通して変形させた。
そう、僕はもう魔力の変形を終わらせたのだ。だから、魔術はもう発動している。
「ちゃんと発動しているね」
先程まで阿鼻叫喚の嵐であったその国は、現在静けさが漂っている。何が起きたのか?簡単に言えば驚いているのだ。その時起きた魔術による現象が絶体絶命の状況をひっくり返したのだから。
「魔導系列魔術 絶対零度」
その魔術はすべてを凍らせる最強の魔術。指定範囲内の特定の対象の体温を-273℃にする。変化系統の最強の必殺技だ。
「おじさん後はよろしくね。」
何かを考えているであろうおじさんは、僕が魔術を立つどうしてから一切動いておらず、間違えておじさんにも-273にしてしまったのではないのかと疑ってしまう。だけど、そんな状態ではあるがそこはギルド長としての意地なのだろうか。僕の返事には直ぐに返してくれた。
「あ、・・・ああ。報酬は、、アルトラに預けます。」
「は~い。ありがとね。」
なぜかギルド長は敬語になっているが・・・まあ大学では敬語で話されるのが普通だから、大学の様に感じてしまう。
報酬に関しいては何も考えていなかったので、アルトラ君に預けてくれるのはありがたい。僕はギルド長からお金を貰う手段が無い。何も考えていなかったのはm、おっちょこちょいではある。
「・・・あ!そうだ。最後の仕上げを忘れていたよ。」
僕は何かを思い出したので、それを実行しようと先ほどの様に同様の本を取り出して、一枚ページを破くのであった。だが、さっきの絶対零度の様な魔術ではない。今回使うのは・・・ただの声を大きくする魔術。
絶対零度の前に僕がやりましたと宣言をするために使った魔術だ。
僕はその紙に魔力を流して魔術を起動する。
「「「「「ミツキ・アトラスコールにより今回の戦いは終了を迎えた。」」」」
僕はそれだけ言い、直ぐに魔術を切る。
正直少し機械じみた言葉になってしまったが・・・これ以外の言葉が見付からなかったのでしょうがない!と思っておくことにする。
「じゃね~。」
僕はまだ停止しているギルド長に一声かけて大学に戻る事にするのであった。
☆
なんだったんだあの人は。。俺の頭の中にはその言葉がこだましていた。
最初俺に話かけてきた時はなんだ?と思った。だって、その時はスタンピードの対処をしている時で・・・少し絶望して何もしていなかったが、それでも部下に対しての命令をしなければいけなかった。そんな時に話しかけられたものだから、・・・まあうざったいなとおもった。
だけど、・・・その行動を見た時俺の考えは変わったんだ。
なんなんだよあの魔法は。俺が今まで見てきた魔法にはあそこまで広範囲で多数を選択できて、そして、精密な魔法は知らないぞ。絶対零度、だったか?
あの人がたまたま呟いていたのかその断片的な所だけ聞こえたのだが・・・確かに絶対零度、と言う魔法はある。だが、その魔法はあそこまで広範囲で影響を及ぼす対象を精密に決める能力は無かったはずだ。
もしかしたら、あの人の魔法にしかない特性があるのかも知れないが・・・それでもあそこまで芸術の域に達した魔法を与えられる人がいるのであれば、、、少しは有名になっているだろう。
だって、一般的に知られている絶対零度と言う術は、水系の魔法書によく授かる魔法なんだが・・・指定した極小の範囲内の温度を徐々に下げていくという効果なんだ。だから、さっきの街中の様に広範囲で一気に温度を下げるなんて言う事は出来ないはずなんだ。
もしかしたら魔力の量とか使い方で変わるのかも知れないが・・・それでも、あんな風に絶対零度を使う事は困難だろう。だって、絶対零度と言う名前のインパクトの割に使用用途が無いせいか、授かった人は水を氷にするのに使ったり、果実を凍らせることくらいしかしないみたいだ。
だから、・・・絶対零度では無いはずなんだが・・・それならあの魔法はなんなんだ?
・・ちっ。考えても分からない。今はそれよりもやる事が有るから、上手く思考が回らない。これから街の復興や、魔物の処理。さらには今回のスタンピードに関する問題。考えるだけで頭が痛くなるような事案ばかりで逃げ出したくなるくらいだ。
「・・・しょうがないか。」
俺は一旦意識を切り替えて行動をするのであった。判断材料が無く分からない時は何をやっても無駄だ。それなら、考えない方が時間が無駄にならない。そう言う風に考えて行動を改めるのであった。
だが・・・
「第一魔法大学と言ったか。・・・」
分からない事を分からないで終わらせるのは、人の上に立つ人間としてあってはならない。知らないなら調べる。なら、今回の事も調べて行こう。
俺はその人が言っていた場所に手紙を出すよう忘れないようにすることにした。
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