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あの日の俺へ

アクセスありがとうございます!



 俺が白と共に神山町に残ると手の平を返した後は楽しいパーティー。


 円の夢は叶わなかった(ことになった)ので俺の退院祝い、そして光ちゃんの言ってたたくさんのお祝いは白の誕生日パーティーも含んでいたので同時開催。

 更には事情を話して駆けつけた姉貴となで子さんも加わって、そのなで子さんが近々神山町で暮らすことも発表されて引っ越しのお祝いも先駆け夜遅くまで賑やかな時間。


 でも結局、俺の夢は叶わなかった。


 俺と円と茜と光ちゃん、四人で毎日くだらないことでも真剣に楽しむ。

 それがずっと続けば良い……なんて俺の夢は、叶わなかった。


 なぜなら――


 ◇


「お兄ちゃん早くするです!」

「はいはい。分かったから静かにしてろ」


 デジカメを三脚にセットしつつ俺は急かす白に注意する。ピョンピョン跳ねてると綺麗に纏めたツインテールが乱れるぞ。


「白ちゃん、せっかくの記念撮影なんだから可愛く写らないとだよ。ほら、リボンが曲がっちゃうから」

「乱れた髪はそれで美しいが……ふ、残念だがいくらシロンナでも人妻の乱れ髪に比べると見劣りしてしまう」


 光ちゃんも同意見のようで髪を纏める白いリボンを直している。ちなみにあのリボンは俺たち四人で買った白への誕生日プレゼントだ。

 ちなみのちなみに茜、お前こそ残念だよ。ほっこりする二人のやり取りに水刺すな。


「光はすっかり白のお姉さん気取りだな」

「たしかに」


 背後に立つ円の意見に俺も同意。今まで同好会の妹ポジションだった光ちゃんは自分よりも幼い白の(同級生だけど事実白はまだ〇歳だ)世話を何かと焼きたがる。まあそれはそれで可愛いし、俺たちには以前と変わらず甘えてくるのがまた可愛い。

 六月に入り今日は白の神山高校への転校初日。懸念していた円と同じ顔立ちも髪形を変えたことで周囲は気づくことなく、中途半端な転校にもみんな温かく受け入れてくれた。

 そして転校初日ということは白が正式に夢同に入会した記念日、なので俺が入会した日と同じように放課後、いつもの教室で会員全員の記念撮影をすることとなった。


「――よし、こんなもんか」

「だな。では私たちも並ぶとしようか」


 フレーム越しに俺と円が確認してみんなの元へ。黒板を前に左から茜、光ちゃん、白、円、俺と並んだ。

 後はタイマーで……なんて普通のシャッターとはいかない。あのデジカメは円お手製でお約束の言葉を口にすれば音声認識でシャッターが切れる。

 結局、俺の夢は叶わなかった。

 俺と円と茜と光ちゃん、四人で毎日くだらないことでも真剣に楽しむ。

 それがずっと続けば良い……なんて俺の夢は、叶わなかった。


 なぜなら今日から白を加えた五人で毎日くだらないことを真剣に楽しめるんだ。


 もちろんずっと続く時間はない。例え最強の魔術師でも時間の流れを止められない、俺たちはこれから成長していく。

 それでもこの貴い時間を、限りある青春を謳歌しないともったいないだろ?

 だから今は、許される限り楽しもうと思う。


 残念さいこうな仲間達と共に――。


「全員、お約束が何か分かっているな? ではいくぞ――」


 会長として円が音頭。

 記念写真のお約束と言えばもちろん、一たす一はでニッと笑う。古くさいけど王道――


 ボンっ!


「木っ端微塵っ!」


 突然デジカメが木っ端微塵、 もう条件反射でツッコミを入れてしまった。

 いったい何が起きたと遅れて驚く俺だが隣りで円が満足げに頷いた。


「完璧だ」

「なにが完璧っ? デジカメ木っ端微塵ですけど!」

「なんだ朋、もういいぞ」

「なにがいいんだよ! つーかまさかの失敗かっ?」

「何を言っているのか知らんが、お約束はもういい」

「……はへ?」


 意味不明なままの俺を残し円は木っ端微塵となったデジカメの破片を飛び越え、机に置いてあった予備のデジカメを手に取り戻って来る。


「三枚も撮れてしまったがまあいいだろう」


 と、操作するデジカメの画像をのぞき込めば歯をキランと見せてポーズを決める茜。

 満面の笑顔でピースする光ちゃんと白。

 腕を組み微笑を浮かべる円。

 ツッコミをしている俺。

 うん……まさかとは思うが


「お約束は俺のツッコミだったとっ?」

「他に何がある。うむ、これぞ我が同好会に相応しい記念写真」

「あきらかに俺だけおかしいだろっ?」

「なにがおかしい。その証拠に他の者はお約束で伝わっていただろう」


 ……たしかに俺以外はみんなポーズ決めてる。


「だよねー。わたしたちのお約束って言えばトモ先輩のツッコミだもん」

「突然の爆破に怯むどころか己を貫く……さすが心の朋、みごとなツッコミだった」

「お兄ちゃんのツッコミは最強です!」


 え? 俺ってやっぱその認識なの? 新メンバーの白にまで常套句にされると怒り通り越して悲しくなるんだけど……。

 改めて自分のポジションを見つめ直していると円が胸(まな板の鯉って言葉知ってるか?)を張った。


「デジカメの破片や爆風も邪魔になっていない。計算通りだ」

「そんな計算する前にもっと別の方法があったと思うけどね!」


 同好会のお約束らしい俺のツッコミが神山高校に響き渡った。



 前略――八ヶ月前の俺へ。


 お前、残念美少女に勧誘されただろう?

 それは怒濤の残念ライフへのお誘いだ。引き込まれたらお前が夢見ていた普通の暮らしは出来なくなるぞ。

 でも受けておけよ。

 大変なことはある。

 一族のしがらみに巻き込んで苦悩することもある。

 でもお前が夢見ていた以上の夢がその先にあるから。

 だからまあ……どうせ照れくさくて言えないかも知れないけど、いつか言おうぜ?


 俺を誘ってくれて『ありがとう』ってな。


 追伸――のど飴は常備しておくこと。



これにて今作は完結となります。

一人称で、ノリと勢いの作風は書いていてとっても楽しかったです。

読んでくださったみなさまも楽しんで頂けたのであれば幸いです。

また、作者の別作品は今後も続くのでそちらも楽しんで頂ければと。

そして今後も作者をどうか見守ってください。

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