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魔神ちゃん止まって!!第一章は「1滴の泥を落とされた楽園の中であっても」  作者: ショコラ・ホワイト・リリムリリス
1滴の泥を落とされた楽園であっても
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二人の日常:キスアとクゥちゃん

キスアが毎日してるのはこんな感じ!

 キスアは事件の後、すぐに衛兵に預けたクゥちゃんを迎えに行った。喫茶店で二人が一緒にいる様子が窓から目に入り、ほっと一安心。けれどクゥちゃんはげんなり、衛兵の膝上でひたすらパフェを食べていた。


 ―――――――――――――――――――――――――


「衛兵さん、ありがとうございました!クゥちゃんのこと見ててくれて助かりました」


 キスアは衛兵の向かいの席に座り、お礼を言った。クゥちゃんもキスアの隣でなんとなく同じようにお辞儀をしてみた。


「あぁああいいのいいの!全然いいの、わたしも今日の見回りが終わって交代したあとで暇してたから!休憩時間の良い気晴らしになったし、クゥちゃん可愛かったから癒されたよ」


 女性の衛兵は「こっちこそ今日は楽しかったよ!じゃ、また縁があったらね!またねクゥちゃん!」と快活に笑って、去って行った。


 喫茶店を出て、疲れ切った二人はキスアの家に戻り、ぐっすりと眠った。キスアとクゥは並んで一つのベッドに収まって、それぞれに今日あった出来事を振り返る。


 キスアはあの場での異常な空間での出来事を、

 クゥちゃんは喫茶店での衛兵のデレデレな様子を。


(あの時、人は誰一人いなかった…人形の魔女以外誰も。…あの場で何があったの)


 いくつも可能性を考えてはみたものの、キスアははっきりとした答えを出すことはできなかった。人形の魔女のことを詳しくは知らなかったが、マキーリュイの知り合いだったらしいことを別れ際に聞いて、話を聞く為に、マキーリュイの家を尋ねることを決めた。


 僅かでも、何か答えに繋がる事があるかもしれなくて、その可能性に縋りたくて――



 クゥちゃんは、(あの人すごい良くしゃべってたなぁ)と考えていた――



 翌朝、二人は起床して朝食を食べた。


 パンを二枚に、それぞれ焼いた卵を乗せ、しっかりと焼いた、人の頭ほどの肉塊を添えて、二人揃って食べた。


 調子に乗って作ったためにキスアは食べきれなかったので、クゥちゃんが残りを食べました。(一部日記と本人たちからの証言を参照)



 マキーリュイに再び会うことを決めたとはいえ、仕事を休むわけにもいかない。


 キスアはお金のかかる女なので、どうしても稼がなくてはならない。


 錬金の材料がとにかく高価で、かつ、入手が難しいものが多いため、見つけた機会を失う前にすぐに買えるよう、いつでもある程度の金額を用意する必要があるからだ。


 生活費の三倍ほどを要する錬金素材は仕事や、キスアの新たな錬金魔法試作実験のために瞬時に消えてゆくので常に仕事を探しに歩いて、お得意様の顧客を確保することが大事となる。


 その日課のためにキスアは出掛ける準備をしていた。


 最初、クゥちゃんはお留守番にしようかと思ったが、色々なものをみて、色々なことを学んで欲しいという思いから、キスアはクゥを連れて出掛けることにした。


「どこいくの」


「お仕事を探しに、ね」


「お仕事ってなに?」


「いろんな人を助けること」


「助けること…」


「そっ!それでお礼を貰うの」


「ふぅん」


 クゥちゃんの表情からは興味の色は伺えないものの、キスアはクゥちゃんからの質問がくることが嬉しくて、にへにへと笑顔が零れていた。


「それじゃクゥちゃん行くよっ」


「うん」


 玄関の扉を開けて、眩い日の光にキスアは一瞬目を細めた。この瞬間がいつもの日常を感じさせてくれて、そしてまた新しい一日の始まりが訪れたことを受けて、キスアは昨日までの空気と、今日の空気を入れ替えるように深呼吸をした。


「まずはこの通りのみんなから困ってることが無いか聞いていくよ!ついてきてね!」


「わかった」


 キスアのアトリエは大通りから入って少し先に進んだところにある。この通りには職人が多く、日曜品を扱う店もあって、色んな人が訪れる。


 そこで生活している人たちの困りごとは、大体はお互いで解決できるので助け合いの精神が培われていった。そしてその地区に住むキスアもまた、助け合いのために奔走するのだ。


 キスアは特に重宝された。


 錬金魔法でこなせる仕事は多岐に渡り、水道管の修理に、金槌など金属加工に使われる道具の強化、屋根の修復、なかなか手に入りにくい金属の抽出作業に迷子の捜索、遺失物の捜査…。ありとあらゆる困りごとを引き受けた。もはや何でも屋である。


 ただし、デザインセンスが壊滅的なため、試しに創作したアクセサリーなどが独特すぎるので、そういったことは苦渋の選択で断っていた。本人はやる気に満ちているのにセンスが駄目だった。死んでいた。この世のものではないデザインになってしまい、見たものは衝撃のあまり気絶することもあった。なので苦渋の決断で断ることにしている。


 ということで、まずは外で朝からアクセサリーの売り子をしている二ーナの所へやってきた。情報収集のためだ。


 朝から外に出ているということは今朝の近所事情は一足先に把握しているということ、キスアがこの地区にアトリエを構えて、いくらか経った頃からの日課。


「おはようニーナ~っ」


「おはようございますキスアさん~っ」


「今日も新作出てるかな~っ??」


「もっちよぉ~!出てるよォオ!新作ゥウ!こんなんとこんなんとこんなんんんんよォオォ!」


「ウワァオ!ウフフうーーん実に素晴らしい出来ですなぁ!」


「そでしょそでしょ~♪フフフフ…」


 独特な挨拶とテンションで会話を行う二人をみて、訝し気に眉間にしわを寄せるクゥちゃん。( 'ᾥ' )


 キスアはいつものように会話し、それから本題に移る。


「ん~でっ今日はどんな感じ?」


「そねぇ~…あそういえば、タトミティナさんが占いに使う魂針こんしんの調子が悪くなってきたから素材と加工の準備しなきゃいけないとか言ってたかな?ハシマナさんは仕事に使う木材が足りないとか…それからリザルトさんは仕事に使う金属が不足してきたから製錬しておかないとなって言ってたね」


「よっしわかった!全~部っ解決しちゃおう!」


「やる気だねぇ~!」


「クゥちゃんにわたしの仕事を見せたいからねぇ!はりきっちゃうよ~っ」


「そっかそっかぁ!あれ?その子ってキスアの子?」


「みたいな、ものかな?説明すると長いんだけど…」


「それじゃまたゆっくり出来るときに聞かせてもらお~う!時は大切!有限であるが故にってね!」


「なにそれっどこかの言葉??」


「うーん、どこかで聞いたような気がしたんだけど…よくわかんないっ!けどほらどっちみち言葉通りの意味っしょ!ほら大切な時間無駄にしないでっ行った行ったっ!」


「はいはいっわかりました~っ!行ってきま~す!フフっ」


「はいは~いっ行ってらっしゃーい!ふふふっ」


 そんなこんなで、これからキスアは三人のうちどこから解決しに行こうか考えながら、クゥちゃんと大通りに向かった。


「あのニーナって人、キスアみたいだった、キスアが二人で凄いことになってた」


「そっかなぁ?でもなんだか気が合っちゃうんだよね…結構長い付き合いだしもしかしたら勝手にお互い似るようになったのかも??」


「ふぅん…」


「一人ずつ解決していこうっまずはタトミティナさん、次にリザルトさん、最後にハシマナさんで行こう!ハシマナさんは結構あちこち移動するから決まった場所で会えないからねぇ」


「わかんないけど、わかった」


 そうして、キスアは一人、また一人と順調に解決していった。その仕事ぶりをクゥちゃんは側で見守り、大変だなぁと感じていた。


 クゥちゃんもお手伝いをしてくれたので、キスアもいつもよりは気が楽であった。ただ、『あの力は理解不能すぎる』とキスアは思った。


 まず、単純に力が強いことがわかった。


 クゥちゃんは切り倒した丸太を軽々持ち上げることができた。


 片手である、片手で丸太を持ち上げてしまった。


 どこにそんな筋力が…?否、キスアにはそれは理解できたのだ、魔力だ。


 クゥちゃんの体内にある魔力を物質に対して作用させている。しかし原理がわからない…。



 未知の転用、未知の応用、あるいは未知の魔力なのか。今のキスアにはそこまではわからなかったが、とにかく力が強いことが判った。



 それはクゥちゃんにも仕事をお願いできるということで、それから…本当はしたくはないけれど、一緒に戦うことも出来るかもしれないということ…。


 そんなことをキスアは思ってしまった。


 それに、木の根もとを一瞬にして球状の穴を空けて伐採したり…その力は全くみたことがなかった…。


 木は焼けるでも吹き飛ぶでもなく、急に大きな音と共に大穴を開き、直立を維持出来ずに穴を起点にゆっくりと倒れた。


 キスアはそんなクゥちゃんの力をはじめて目の当たりにすることになった。


 とはいえ今回の解決の報酬はしっかり頂くことができたので、そのことはひとまず置いておいて、ホクホク顔で買い物を済ませて、帰路に就くのだった。






あなたがこの物語を観測した証を、評価に残すことで、この灰色の世界に色が付くの。


多くの色で物語を浮上させてね。

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