一番星
君がいなくなって、もう何年たつのかな。
ときどき、思い出して涙がでたりします。
それでも強くいきていける、星が見守ってくれるから。
君のいるあの星がいるから。
───────────・・・
君は流れ星のようでした。
きらめくように私のように目の前に舞い降りて
そのまま涙と一緒にながれていきました。
でも君は一番星でした。
どんなときも強い笑顔の貴方は
私の、この空の、一番星でした。
あの時がもう一度訪れればいいのにな。
──約3年前──
「今日からみんなの友達になる、大川 光くんだ。みんな仲良くするんやぞ。」
透き通るような瞳。サラサラの髪。背はそんなに高くないけど
とっても綺麗だった。女の子みたい。
君は私の隣の席だった。
そのときから、もう始まってたのかもしれない。
「初めまして!」
元気よく挨拶した。
「・・初めまして」
あ、声も高いなあ・・・
「私、音田 舞ってゆうんよ!よろしくねっ」
「うん。よろしく。」
そういって、私達は出会った。
ここは一面畑、人口も絶対少ないだろって感じの田舎。
それでも私は好きだった。ここが好きだった。
都会みたいに大きなビルもなければ綺麗なお店もない。
あるのは古びた商店街と農家ばかり。
遊び場は公園。坂の上のグラウンド。桜おばあちゃんの駄菓子屋さん。
あそこのソーダアイスは絶対に一番おいしい!
そんな、素敵なところがたくさんあるから、私はここに生まれてよかったと思う。
いつしか、あたし達は、下の名前で呼び合うようになった。
登下校も一緒で、でも光はあまり外で遊ばなかった。
私は今、光の家にむかってる。
学校が休みだから、遊びに行くんだ。
「ひーかーるー!」
「おお、舞じゃん」
「なあなあ、外であそばんの?」
「うん、俺はやめとく。舞いってきなよ」
「いやよ!光もおらんと一人であそぶゆうん?笑」
「それもそうだね。笑」
そんな楽しい日々が、一週間、二週間と続いた。
ある日の学校。私は光をホタルを見に行こうと誘った
「めっちゃ綺麗なんよ?みにいかんと?」
「うん。いいよ。楽しみだな。」
「やった!光!約束やんね!」
「うんっ。」
───────・・
「舞、引っ張らないで、危ないよ」
「いいやんっはやくー!」
「ちょ、痛いってば!舞、こけちゃうよ」
「光がおそいんよっはよーきてっ!」
「もう・・・・・・っ」
・・・・・・・・・・・!
「うわあ。すごい。」
「な?綺麗でしょ!」
「うん。すごいね。綺麗だ」
「光!ここはね、空にも地にも星があるんよ」
「地上はホタルか。空もだね。ここにきてよかったよ」
「本当?めっちゃ嬉しい!」
「でも俺は、舞に会えて一番嬉しい」
「光・・・ありがとっ」
「うん。ほら舞、空みて!あれ、ほら一番星」
「どこ?・・あ!本当!・・・きれい」
「強いね、あの星」
「そうやね。すごく強く感じる」
「・・・俺、舞のこと好きだよ」
「な、なにゆってんのっ・・光のバカ・・」
なんとなく。ただなんとなく。
はぐらかしてしまった。
嫌いなわけじゃない。
でも、私もだって。好きだって。
いえなかった。
恥かしかった。ただそれだけ。
それだけのことなのに。
───────・・・
それからの光は、学校に来たり来なかったりした。
光の家にいっても、光のお母さんにごめんねといわれるだけだった。
嫌われちゃったのかな。
私、嫌いだっていってないもん。
嫌いじゃ、ないもん。
好きだもん・・・。
ねえ、光。
何してんの・・・?
二週間・・・
光はまだこない。
先生に休んでる理由をきいても
風邪だという。
風邪がこんなに続くはずない。
何かあったのかな。
そんなことを考えながら、家にとぼとぼ帰っていた。
自分の部屋で宿題をしていた。
もう20時になりかけていた。
その時、
コンッ
窓が音をたてた。
気のせいかと思った。
でもその音は繰り返された。
コンッ・・・
・・コンッ
私は立ち上がった。
そして勢いおく窓を開けた。
少しの期待に胸を弾ませて。
ガラッ
「舞!」
「・・・あほおおおおおおおおおおおおぉぉぉ・・・・!!」
「ごめんね。舞。」
「心配なんか・・してないけど・・でも、心配するんよ・・光のバカ・・」
涙が溢れた。
つもっていた不安が泡のように消え、
花のように喜びが咲いた。
階段を駆け下り、外に飛び出した。
勢いよく光に飛びついた。
「あほおっ・・ばかぁ・・」
「ごめんごめん。舞、苦しい」
「しらんよっそんなんっ!」
「そうだね、いいよ、このままで。」
「・・・うん」
暖かかった。
ずっと一緒にいたけど、光のぬくもりを
こんなに近くに感じることは、なかったから。
きっと心臓がばくばくいってただろう。
あなたも気づいてしまうくらいに。
それから坂の上まで二人で歩いた。
手をつないで。星まで歩いた。
どこか違う世界に、二人だけの世界に
続いてればいいなと思った。
「この道、舞すきだよね」
「うん、めちゃくちゃ好き」
「どうしてか、当ててあげようか」
「うんっあててみて」
「空に・・続いてるから?」
「なんでわかるん?!」
「舞は空が好きだから?いや、星が好きだから、かな」
「お見通しですねえ 笑」
「まかせろって 笑」
そんなことを話していたら
てっぺんまできていた。
まわりは木で囲まれていた。
空は星でいっぱい。何度見ても感動してしまう綺麗さだった。
「舞」
「ん?」
「キスしようか」
「は、何ゆうてんの・・?光・・?」
「嫌じゃ、ないけど・・・」
「ないけど?」
「・・恥かしい」
「・・ぷっ」
「なっなによおおおお!」
「だって・・・笑」
「笑うなあぁぁあ!」
「可愛いよ舞」
「なにゆうて・・ッ」
風が優しい夜だった。
くらくらして覚えてない。
初めてだった。キスなんて。
甘い味なんて、しなかった。
でも、熱が、息が。
伝わってくるたび、
ああ、これが好きってことなんだって
思った。心で感じだ。そんな夜だった。
───────────・・・
もうすぐ夏が終わる。
日は走るように過ぎた。
今日は日曜日。
何をしよう。
光・・・。そうだ。
光に会いに行こうかな。
先に桜おばあちゃんのとこで
ソーダアイスを買っていこう。
「おばあちゃん!」
「あらあぁ。舞ちゃん、いらっしゃい」
「ソーダアイスちょおだい!」
「すきだねえっ・・・はい、どうぞ」
そういって渡されたアイスと引き換えに50円玉を渡した。
「ありがとっおばあちゃん!」
溶けないように上手に舐めながら、一本道を歩いた。
ねぎの匂いがする。セミの声が聞こえる。
風が心地いい。そんなことを思っていたら、
大通りにでた。
光の家が見える。
「え?」
ピイーポーピーポー・・・
光の家から、白いボディの赤ランプがついた車が
走り去った。
同時に私の足も、動いた。
アイスが地面に落ちたことも気づかずに。
まさか・・・
まさか・・・・・・
呼吸がはやくなった。
走ってその場までいった。
光のお父さんがいた。
「光は?!!!」
「病院だ。今から行くから車乗っていきなさい。一緒においで!!」
あたしは振り返って走り出した。
「あ、待ちなさいっ!!」
聞こえない。聞こえない。
光・・・光・・・光・・・・・・・・・・・・!!
家まで走った。自転車を取って
勢いよく飛び出した。
私の土地勘なんて、ずば抜けている。
細い道を突っ切り病院へたどり着いた。
病院の廊下をバタバタと走り、
手術室のほうへ向かう。
光のお母さんがいる。
「舞ちゃん・・っ!」
「光は?!光はどうしたん!?」
「光は病気なの。だから此処へ来たのよ・・っ」
そういって泣き崩れた。
病気?なんで?光が病気?
どうして・・・
手術は何時間にも及んだ。
もう、夜だった。
私はご飯も食べずに、手術室前の椅子に座ったまま窓の外をみていた。
神様。お星様。
どうか、どうか光を助けて。
あたしはどうなってもいい。だからお願い。
光を助けてよ・・・
溢れるのは涙だけだった。
一人にしないで、光・・・
ガチャ
ウイーン
!!
手術室の扉が開いた。
「意識が戻る確立は非常に低いかと・・最善を尽くしましたが、今夜が山だと。
残念です。申し訳ありません。」
・・・・・・・・・・ぁぁぁあああああああああああ
光の両親の泣き叫ぶ声が止まることはなかった。
どうしてこうなったんだろう。
どうして光だったんだろう。
どうして私じゃないんだろう。
一緒にいたいって、ただそれだけなのに。
生きて。お願いだよ光・・・
────────────・・・
「舞ちゃん・・光と・・一緒にいてあげてっ・・」
そういって光のお母さんは辛そうに微笑んでくれた。
光の眠ってる顔はとても綺麗だった。
トンって肩をたたけば、すぐ起きそうな優しい君。
どうしてってしか・・いえないや。私。
「光・・・なんでゆってくれなかったん?
私、泣くと思った?光はやっぱ、バカやんね。
私、大丈夫やで。もっと、傍におりたい。
・・・光?私、恥かしくていわんかったけど、
好きっていってくれて嬉しかった。
私も光が大好き。光は強いやろ。なあ、光・・・
ずっと一緒にいようよ・・。目開けてよ・・・うぅッ」
「・・い」
「え?光!???」
「舞・・・ありがと」
そういって光の右手はあたしの頬の涙を拭いた。
「ううん・・・ううんっ・・」
私は泣きじゃくって何もいえなかった。
「ま、い・・・俺は・・舞、の・・一番星になる・・」
「うぅッ・・・うんッ・・うんん・・ッ」
「辛い・・なら、空みて。な。」
「ううぅううぅ・・ッ・うッうんッ・・・」
「舞、愛してる・・」
「・・うんっ・・・・・!!」
光は優しい涙を流し笑顔で目を閉じた。
ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ
「うぅうううあああああああああああ・・・」
何度、君の名前を呼んだだろう。
それから、泣き叫んだこともあった。
何も口にしないこともあった。
学校に行かないこともあった。
でも、今までこれたのは、
君が。光が。
空にいるからだよ。
あの一番星が、大好きだよ。
光、またいつか会おうね。
あの坂の上で。
甘酸っぱい青春ちっくな恋愛ですが
最後バッドエンドをもってきました。
僕は、大切な人を亡くしたことはありません。
でもそれを考えるとすごく胸が苦しくなります。
大事な人や大切な人はいついなくなるかわかりません。
伝えなければいけないこと、伝えたいこと。
失ってからじゃ遅いです。
これを読んで少しでも皆さんが
心の中を大事な人へ伝えられたらなあと思います。
最後までお付き合いいただき、有難うございました。
このお話には続きがあります。
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