2.パーティ追放、即、奴隷
「あなたは全然役に立たないわ。もう不要よ。ここから出て行ってもらいます」
姫騎士アリーゼ様は、ゴールドの長髪をかき上げて言い放った。
「ま、待ってください」
蔑むような目で見下すアリーゼ様。
マジで悔しい。
だが俺には頭を下げる以外、方法がなかった。
「な、なんでもしますから……」
土下座をして嘆願した。
聖騎士ラガン様が、俺の頭に足で踏みつけてきた。
「何を言っているんだい? 君を召喚するのに、魔石をいくら使ったと思ってんさ? この役立たず君!」
勝手に召喚しやがって! なんて口が裂けてもいけない。
もしそんなことを言うと、八つ裂きにされて吊るされちまう。
彼らは勇者召喚の秘術とやらを使って俺を召喚したそうだ。
俺はやりかけの仕事をすべてほっぽり出す形で、強引にこの世界に呼びつけられたってわけだ。社のみんなやお客様に多大な迷惑を……と思いつつも、その当時は困惑しつつもこの現象を楽しんでいた。
最初の頃は、俺を勇者と勘違いして優しく接してくれてはいたんだ。
だけど。
姫騎士アリーゼ様は、俺に紙をチラつかせた。
「おい、クズ。これ、読め」
何やら数字が書いてある。
この世界の文字は、初めてみる形ばかりだった。
必死で覚えようとしたが、まだ1週間程度でスラスラと読める訳ではない。
「おっとあんた、字もまともに読めなかったのね。とっても親切な聖騎士ラガン、読んであげて」
ラガン様は、ニヤニヤ笑いながら、紙を受け取り読み上げていく。
「食費、2000ゴールド。
宿泊費、6000ゴールド。
召喚用の魔石、12000ゴールド。
指導料、180000ゴールド」
え!? な、なんだ?
「これは君が僕たちのパーティに出した損失額だ。迷惑料として払って貰うよ」
「ま、待ってください。お金なんて……」
姫騎士アリーゼ様は、いっそ目を尖らせて笑う。
「知ってるわよ。あんたは無一文のクズ。だからこれからお前を奴隷市場に売りに行くのさ。死ぬまでこき使われるがいいさ」
もう無理だ。
こんな奴らとこれ以上一緒にいては、完全に俺の人生が詰んでしまう。
俺は身をひるがえし逃げようとした。
だが簡単に聖騎士ラガンに取り押さえられた。
「い、いやだ! 俺がいったい何をしたんだよ!?」
「分からないのかい? クズ君。さっきから言っているじゃないか。君は多大な迷惑をかけたのだよ。だけど僕は聖騎士。とっても優しい正義の味方。だからそんな君でも活躍できる場所に案内してやろうと言っているんだよ。それが奴隷さ。死より残酷な毎日が待っているよ。楽しみだねぇ? ウキウキするねぇ? ククク、アハハハハ!」