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偽善者は宴に酔いしれる  作者: ホシタネ
第参章 真に望む願いは遊楽都市の眺め
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異様な眼差しと裏通りの謀略


 当然のことながら、宮島(みやじま)政哉(まさや)はその日の授業で終始集中出来なかった。クラスメイト達もそうらしく、ボーッとしていたり口を小さく動かしてブツブツ言っていたり。香芝(かしば)(ゆき)だけが冷静であったが、そうであるが故に返って非難の的となっている様だった。

 漸く午前中の授業が終わり、昼食の時間になった。政哉の元へは、いつも通り佐野(さの)雄輝(ゆうき)がやって来ていた。


「政哉、これは噂なんだけどさ」


「…?」


「今回のカードゲーム廃止、殆どの先生が反対だったんだって。というか、スマホ禁止の辺りから必ずしも賛成派が主流では無かったって」


 言われてみれば、その噂は妙に納得がいく。今日の授業で、先生達は対応がいつもと違っていた。

 …1組の担任でもある国語の国見(くにみ)房枝(ふさえ)先生は放心状態の生徒を見ても何も言わなかったし、寧ろ申し訳無さそうに見ていた。

 …新卒の副担任である理科の上郷(かみごう)玲斗(れいと)先生は元々優しい先生だが、今日は色んな対応が一段と甘かった印象が強い。

 …厳しい事で有名な4組担任、社会の古賀(こが)充文(みつふみ)先生すら、表情こそ見せなかったものの当てた生徒がボーッとしていても怒鳴ったりせず、諭すように話しかけるだけだった。

 つまり、少なくともその3人は反対していたと言う事だ。上郷先生は兎も角、国見先生と古賀先生は経験も長い重鎮の先生だ。そんな先生達すら抑え込まれたと言うことが、半ば信じられない。

 3人以外となると、我らが2組の担任である英語の南条(なんじょう)光江(みつえ)先生、3組の担任で体育の川登(かわのぼり)啓治(けいじ)先生、副担任で数学の妙高(みょうこう)(もえ)先生ぐらいしかいない。しかし、政哉には誰も古賀先生を妥協させられるようには見えない。

 そんな考え事は雄輝に中断された。こちらが考えていることを察してか、じゃあな、とだけ言うと他の友達の所へ行ってしまった。


 政哉は考え事がしようと、校舎の外れの廊下に来た。かつて百合奈(ゆりな)が教室から逃げ込んだ場所だ。そして、



 人の気配を感じた。



 政哉は存在感を隠しながら慎重に様子を見る。そこにいたのは



 香芝雪と山江(やまえ)敬人(けいと)だった。



 隠れて会話を聞くことにした。


「雪、また強行採決だったのか」


「そう、もう毎回こうなのよ」


「何となく察してはいるが、雪自身も反対したんだろ?」


「…えぇ」


 政哉は信じられなかった。彼女自身も反対していた…?では、強行採決させたのは一体誰なんだろうか。


「室長だから何も出来ない事は承知の上だが…ひとまず聞いて見るか」


そう言うと敬人は此方に歩いて来たので慌てて逃げた。未だに元凶は想像の範囲に過ぎない。



「やっぱり聞かれていたか…」


 廊下を歩きながら、山江敬人は呟く。


「2組の人間だったら大変だ。



担任の裏切りみたいなものだからな」



 小さな声でそう言った。

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