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「因みに、この倉庫には抜け穴なんてないですよね?」
佐々木は、まさかと思い二人に尋ねてみた。
「抜け穴ですか?」
ローズが顔をあげて、不思議そうに佐々木の目を見つめていた。
「ええ。マジックとかであるような、隠し扉っていうんですか?
脱出マジック何かで使うようなやつです。」
「私が知る限りでは、そういったものはないと思いますよ。
ねぇ、今居くん。」
「あ。はい。そうですね。、窓すらないですから。」
今居はローズとすら目を合わせようとしていなかった。
「そうですか。ありがとうございます。ちなみに今居さんは
Jokerさんを見つけた後、どうされたんですか?」
「先生の傍に駆け寄って声をかけて見たりしたのですが、
全く動く気配がありませんでした。私には知識もないので、
どうにもできないと思ったので倉庫から出て携帯を
使って警察などに電話をしてました。」
「電話をかけるために、倉庫から出た時は鍵はかけました?」
「施錠されていました。それははっきり憶えてます。」
今居は迷いなく即答した。
「そうですか。その時にローズさんは何をされてました?」
佐々木はローズに目をやると、ローズは何故か香椎を
見つめていた。香椎は気づいていないようで、いつも通りに
無表情で手帳にメモをしているようだった。
「ローズさん?どうしました?」
今度は佐々木の声が届いたのか、我に返り佐々木へと視線を戻した。
「あ。すいません。何ですか?」
「事件発覚時にどこで何をしてました?」
「ああ。えーと、私はリビングに居ました。今居くんの叫び声の
ようなものが聞こえたので、倉庫の方へ向かいました。」
「叫び声ですか?初耳ですね。」
佐々木が今居に向かって問いかけると、今居は恥ずかしそうに下を向いた。
「すいません。先生を見つけた時に恥ずかしながら、
驚いて叫んでしまいまして...。」
「私はその声を聞いて倉庫の前に行くと、今居くんが入口の近くで
慌てた様子で電話をしていました。何があったのかと思って倉庫を
覗いてみると、先生が床に倒れているのが見えました。
私も思わず先生の傍へ...。」
ローズは思い出したのか、また下を向いて泣き出してしまった。
「私は電話に夢中で気づかなかったのですが、ふっと後ろを見たら
先生の傍にローズさんが居ました。それからは二人で居ました。」
今居がフォローするように、その後の状況を説明した。
「なるほど。失礼ですが、ローズさんは日本語がお上手ですね。
日本の方ですが?」
ローズは涙を拭い青い瞳を佐々木へと向けた。
「父が日本人で母がイギリス人です。私も産まれたのは
イギリスですが、産まれてすぐに日本に来ました。
それからはずっと日本で暮らしてます。」
「そうだったんですか。それと今居さんの探していた物は見つかりましたか?」
「い、いえ。見つからなかったです。朝に先生から十四時に使いたいから
十三時くらいになったらリビングに用意してくれと言われました。
マジック用のシルクハットを探していたんですが...。」
「私たちも倉庫内を探してみましたが、シルクハットは見つかりませんでした。」
香椎が倉庫内にあったもののリストを佐々木へ渡した。
「ほう。無かったのか。」
佐々木が受け取ったリストには確かにシルクハットの文字はなかった。




