❸
ローズとアコは楽しそうに酒を飲んでいた。
スバルも先ほどローズから奢ってもらったスプリングバンクを
二人と共に飲んでいた。
「この間ね。スバルさんがマジックを見せてくれたんだ。」
「あら。どんなマジックだったのかしら?」
スバルは笑いながら一枚の金貨をローズへ渡した。
「そうそう!その金貨が、いきなり出てきたんだよ。」
アコは、もうほとんど酒が入ってないグラスを口へ運んでいた。
「へー。これかー。」
ローズは受け取った金貨を右手でコインロールして見せた。
金貨はそのまま右手の掌の中に消えた。
そのまま左手でウイスキーを一気に飲み干すと、
ローズは空になったグラスを置いた。
空のグラスの中で氷がカランと音を立てた。
その音を合図にしたかのようにローズは右手を開いた。
「あ!無くなってる!」
ローズの右手の掌には何も無かった。
アコはローズの右手を取り、裏返したり指の間を触ったりしていた。
「アコちゃん。くすぐったいよー。」
本当にくすぐったかったようで、ローズの口から艶かしい吐息が漏れていた。
アコは気にする様子もなく、無邪気にローズの右手と戯れ続けていた。
「アコちゃん!グラスが空よ。もうご馳走様かな?」
ローズは右手を救出するために、そう言うと左手でアコの頭を撫でた。
「嫌だ!まだローズさんと飲むもん!」
美人に撫でられたからなのか酒のせいなのか、アコは顔を真っ赤にしながら
空のグラスを持ち上げた。
「あれ?」
アコが持ち上げたグラスがあったコースターの上には消えたはずの金貨が
残っていた。
「えー!なんだー!」
「そんなに喜んでくれるなんて嬉しいな。」
金貨を不思議そうに見つめるアコが可愛く見えてしまい、再びアコの頭を
優しく撫でた。
「スバルさん。アコちゃんにアドボカートロックで。私も同じものを
おかわりね。アコちゃんの分は私の奢りでね。」
「毎度あり。」
スバルは二人の前からグラスを片づけた。
「ねー!ローズさんもう一回やってよ!」
アコは金貨を片手にローズに抱きつき、小動物のように上目使いと
甘い声でおねだりしてみせた。
「だーめ。」
小動物の誘惑に負けそうになる気持ちを抑え、ローズはアコから金貨を
取り上げてスバルへ渡した。
「マジックっていうのはね。同じものを二度繰り返して
見せちゃいけないの。」
ローズは再びアコの頭を撫でた。




