表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダブルリフト  作者: 桜乃倖
第三条 種明かしをしてはならない。
13/14

  「それで私が犯人だと。」

 取調室内で佐々木と椎名は容疑者を呼び出していた。

「そうです。」

 佐々木は容疑者のローズと机を挟み対峙していた。

 香椎は部屋の隅にある、もう一つの机で供述書を取っていた。

「確かに元恋人で関東技術科学大学を卒業している。更にアリバイも無いと

 なると仕方ないことだと思いますけど、十鳴さんにも助手の方は居たはず。

 何故、私だと断定されたんですか?」

「簡単なことですよ。」

 佐々木は香椎から一枚の資料を受け取り、上から読み上げ始めた。

「第一条。ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を

 看過することによって人間に危害を及ぼしてはならない。」

 読み上げを終えると、佐々木は三枚の資料を机の上に置いた。

「田瀬 琉璃、飯沼 透子。、Jokerこと一木 遼二。

 全員がAIロボットなんですよ。」

 ローズの前にある机には三名の写真、型番、製造年月日などが記載されていた。

 それを見つめたまま、ローズは黙ったままだった。

「つまり、最初の十鳴氏の犯行に関しては助手の二人には犯行不可能なんです。」

 佐々木は最初に読み上げた資料の続きを読み始めた。

「第二条。ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。

 ただし、あたえられた命令が第一条に反する場合、この限りではない。」

 佐々木の読み上げに対して、一切の反応を示すことはなかった。

 ただ机の上のどこか一点を見つけたままだった。

 それはまるで、バッテリーが切れたロボットのようだった。

「あなたはJokerさんの助手でした。そして、家事手伝いも担っていた。

 だけど、もう一つの実は重要な仕事を担っていた。

 あなたの最終学歴は関東技術科学大学の技術工学学科卒業。

 あなただけが担っていた重要な仕事。それはメンテナンスです。

 マジシャンには、より手先や身体の繊細な動きを要求される。

 かなりの重点をメンテナンスに要していたはず。」

 佐々木は更に一枚の資料を提示した。

『一級AIシステムプログラミング』

 近年、新たに新設された国家資格の一つであった。

 この資格は既に生活の一部となっており、急激に増え続けているAIロボットの

 プログラミング及びメンテナンスを行える重宝されている資格だった。

「あなたは大学でAIプログラミングを学んでいた。その知識と技術で

 活動停止命令のプログラムを当日の朝にメンテナンスという名目で

 Joker氏に実行した。」

 ようやくローズは目線を上げ、佐々木の目を見つめた。

 そこにあった青い瞳がいつもより深い青になっているように感じた。

「あなたはJoker氏の身体と一緒に倉庫内に隠れていた。

 調べましたよ。ブラックアートマジックっていうんですよね。

 あの倉庫は壁も床も黒一色。倉庫内に外装を黒く塗られた長い箱に黒い布が

 残されていた。Joker氏を箱の中に入れ、自分は黒い布の後ろに立つ。

 あとは今居さんが時間通りに倉庫に来た際に隙を見てJoker氏を

 箱から出して床に転がすだけ。」

 机の上には、人ひとりが入れそうな長い黒色の箱とカーテンのような黒い布の

 写真がおかれていた。

「刑事さん。私は倉庫内の電球も暗いものに変えたりもしましたよ。」

 ウインクをしながらローズは答えた。

「それは自白と受け取ってもよろしいんですか?」

「ええ。構わないわよ。」

 ローズは椅子から立ち上がった。取調室の窓から差し込む陽射しが、

 彼女の美しい金色の髪をキラキラと輝かせていた。

「だけど、新しい助手が二人ともAIだなんて。あの人も趣味が変わったのかな。」

 ローズがゆっくりと座ったままの佐々木の真横へと移動した。

 ローズの左手側に座っている香椎も不思議そうにローズを見上げていた。

「どうした?」

 佐々木は何も言わずに真横で立ち尽くすローズを見上げていた。

「刑事さん。私の職業って知ってますよね?」

「はっ?」

 一瞬の出来事だった。何もなかったはずのローズの右手には、

 どこからともなく現れた小型のナイフが現れていた。

 ローズは向きを変えると香椎の胸に向かい、思いっきり振り下ろした。

 ローズの思惑通りに刃先は香椎の『身体』を貫いた。

 しかし、貫いたのは『胸』ではなく『掌』だった。

 香椎の『掌』から血は出ていなかった。

 その代わりに『掌』から出ていたのは色とりどりの配線だった。

「第三条。ロボットは第一条および第二条に反するおそれのない限り、

 自己をまもらなければならない。ということです。」

 香椎はナイフの刺さったままの手をゆっくりと下げながら囁いた。

 いつも通りに怒りをぶつけるわけでもなく、悲しみを伝えるでもなく、

 ただただ事実だけを口にしていた。

「彼女もAIロボだよ。」

 そう言うと佐々木はローズの手に手錠を掛けた。

「だと思った。私の一世一代のマジックが、あと少しで完成だったのに...。」

 ローズは力なく椅子に腰を沈めた。

「ごめんね。あなたには恨みはないの。ただの腹いせなの。」

 悲しそうな笑顔を浮かべるローズは香椎を見つめていた。

 香椎は自分自身でナイフを引き抜き、佐々木へ手渡した。

「構いませんよ。私は痛くもありませんし、悲しくもありませんから。」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ