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[現代語訳]夢酔独言  作者: 雪邑基
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十一歳のころ

 十一歳の年のことである。

 駿河台に、鵜殿甚左衛門という剣術の先生がいた。御簾中様(注1)の御用人として勤める、忠也派一刀流(注2)の名人である。友達がそんな風に話しておったから、早速門弟となった。

 木刀の型をいくつも教えてくれたので、これ幸いと精を出していたら、左右(注3)とかいう技を伝授してくれたよ。

 その稽古場に、上役にあたる石川右近将監の息子がやってきたことがある。そいつはおれの貰う高なんかをよく知っていたから、大勢の前で、

「お前の高はいくらだ? 四十俵しかないなんて、小給者だ」

 と言って笑いおった。

 やつが嫌味を言うのはいつものことだし、上役の息子ということもあって内輪のことにしておこうと思った。しかしそいつがしつこく馬鹿にしてくれるから、木刀で思うさま叩き散らし、悪態をついて泣かしてやった。師匠にはひどくしかられた。

 そいつも今じゃ石川太郎左衛門を名乗って、御徒頭(注4)を勤めている。古狸のような性分だから、なんともならん。女を見たような馬鹿野郎だ。


【注釈】

注1 … 御三家・御三卿の正室のこと。

注2 … 伊藤一刀斎(生没不詳)が開いた一刀流のうち、伊藤忠也(1602~1649年)の流れをくむ流派。

注3 … 左右転化出身の秘のことだと思われる。左右転化出身の秘は太刀五本、小太刀三本からなる型で、溝口派(伊藤忠也に学んだ溝口新五座衛門の系譜)における門外不出の七つの組太刀の一つ。

注4 … 将軍外出の際は徒歩で先駆けをつとめ、沿道の警備などを行った役人の長。


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