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[現代語訳]夢酔独言  作者: 雪邑基
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七歳・養子・凧喧嘩

 今の家に養子に来たのは、おれが七つの時だ。家を継ぐため七つを十七だと言わねばならんので、前髪があっては格好がつかん(注1)。芥子坊主(注2)の前髪は落とした。

 養家では、小普請支配の石川右近将監と組頭の小尾大七郎との初めての判元見届(注3)が行われた。

 頭が、「歳は幾つだ? 名はなんと言う?」と聞いてきた。

「小吉。年は当年で十七歳」と答えたら、石川が大きな口を開けて、「十七にしては老けておる」と笑いおった。

 その時の縁は、青木甚平という大御番(注4)、養父の兄貴が取り持ちをしたよ。


 おれの名は亀松と言ったが、養家に入って小吉となる。

 養家には祖母が一人、孫娘(注5)が一人。養家の両親が死んだ後は、親父が殘らず深川に引き取って世話をした。しかしおれはそんなことも知らずに遊んでばかりいた。

 その年、また凧が原因で大喧嘩となった。相手は前町の二、三十人ばかり。おれは一人で叩き合い、打ち合いをしたが、ついにはかなわず追いやられた。

 干鰯場(注6)の石の上で長棹を持った奴らにしこたま叩かれた。髷がとけて、散らし髪(注7)だ。泣きながら脇差を抜いて、辺り構わず切り散らした。しかし、所詮かないはしないと思ったから、腹を切ることにした。

 服をはだけて石の上に座ったら、その脇にいた白子屋という米屋が止めて、家に送ってくれた。

 それから近所の子供は、みんなおれの手下になったよ。おれが七つのの時だ。


【注釈】

注1 … 江戸時代では一般的に、数え15歳で元服となり、前髪を落として月代を剃った。

注2 … 前髪など一部だけ残して坊主に刈る、元服前の子供の髪型。

注3 … 武家からの末期養子の際、幕府の役人が見届け確認する作業。

注4 … 大番。旗本からなる幕府の常備兵組織。また、そこに勤める人物。

注5 … 信。勝小吉の妻、勝海舟の母。

注6 … 肥料となる干し鰯の集荷場。

注7 … 結ばないで無造作に垂らした髪型。


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