表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
[現代語訳]夢酔独言  作者: 雪邑基
2/70

出生

 世の中を探してみたって、おれほどの馬鹿者があまりいるとも思えない。だから孫やその子らのために話して聞かせるが、よくよく不法者、馬鹿者の戒めにするがいいぜ。

 おれは妾の子で、親父の弾が運悪く当たって、母親の内に生まれた。それをお袋、親父の正妻が引き取って、乳母で育ててくれた。


 がきの時分よりより悪さばかりしてお袋を困らせた。親父は日勤の勤めで家にいないから、毎日毎日わがままばかり並べる。癇癪持ちの強情だから、みんなが持て余してあつかった。というのは、用人の利平次が言っていた話だ。

 その頃は深川のあぶら堀(注1)という所にいたが、庭に汐入の池(注2)があって、毎日毎日池にばかり入っていた。八つ(注3)には親父が御役所から帰るから、その前に池から上がって、知らぬ顔で別の遊びをする。なぜいつも池がにごっているのかと親父に聞かれた利平次は、返事に困ったそうだ。

 お袋は中風という病(注4)の麻痺で、立ち居が自由にできない。あとはみんな女ばかりだとばかにして、いたずらをしたいだけする日を送った。兄貴は別宅暮らしだったから、何も知らなんだ。


【注釈】

注1 … 隅田川から木場へ向かう運河、またはその周辺の土地。現在は埋め立てられている。

注2 … 海水のまじる池。

注3 … 午後二時頃。

注4 … 脳血管障害の後遺症。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ