てすと
とあるVTuberの話かも知れません。
「パワアアアアアアア!」
男が叫ぶ。その鋼の肉体が悲鳴を上げていた。しかし男は諦めない。
「パワアアアアアアア!プリイイイイズ!」
呼応したように、コメント欄が「パワー!!」の文字で埋め尽くされる。
「1000RT行ったら、腹筋1000回やってやるよ」
この一言がことの始まりだった。まさか底辺VTuberの俺に来るわけがない。そう思っていた。
しかし、予想に反してすぐにRTは伸びた。今まで100も越えた経験はないのにだ。気が付いた時には、引くに引けなくなっていた。
「これで……せんかいだあああああ!」
最後の力を振り絞る。やり遂げた。そう思った瞬間、力が抜けた。配信には、傾いたアバターとどさっと倒れる音が流れた。
「良かった、と……思ったら、いいねと、チャンネル、登録……お願いします」
力尽きていても、VTuberの心は忘れていない。ついにやり遂げた彼の顔は、素敵な笑顔に満ち溢れていた。
とあるVTuberの話でした。