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8話「登録したばかりなのに、いきなり先輩冒険者に絡まれたんだが!?」

暇つぶしなので、気軽に読んでね!



「冒険者同士の私闘は禁止ということだが、殴り合いとかは問題ないのか?」



 冒険者ギルドの規則を聞いた時、まず初めに俺が疑問に思ったことだ。俺の個人的な意見としては、冒険者同士の本気の殺し合いというものが私闘というものであり、ただ純粋な殴り合いは私闘とは違うはずだと。



 そして、俺の推論は正しかったようで俺の質問を肯定する頷きが返ってきた。



「ギルドの規則は、命に係わる行為の取り締まり程度の抑止力しかないのが現状で、大抵の場合は黙認されています。冒険者の問題は冒険者同士で解決するというのが、現実的な解決策なんですよね。ギルドの受付嬢としては、残念ではありますけど」



 そう言いながら俯く彼女に俺は「そうか、ギルド職員もいろいろ大変なんだな」とだけ言葉を掛け、次の説明をしてもらうことにした。



 彼女の説明によると、冒険者の仕事は主にギルドから発注される依頼を受注しその依頼内容の条件を達成するという俗に言うなんでも屋的な職種で、素材の納品からモンスターの討伐、果ては護衛などの様々な内容が存在する。そして、緊急時にはギルドから緊急招集が掛けられ強制的に仕事をさせられることも聞かされた。



 とまあ、いろいろと聞いてみたはいいが、どれもこれもラノベに登場する冒険者ギルドの内容とほとんど同じなため、すんなりと頭の中に入ってきた。



「以上で全ての説明が終わりましたが、何かご不明な点はございましたでしょうか?」


「いや、大丈夫だ。他にわからないことがあればまた聞きに来るからその時はよろしく頼む」


「はい、その時はお待ちしております。それとイチノジョウ様、あまり無茶なことはなさらないでくださいね」


「ああ、そういう状況になったら全力で逃げるから大丈夫だ。こう見えても逃げ足にはかなり自信がある」


「まあ、うふふ」

 


 彼女の言葉に俺がおどけた態度で肩を竦めると、それを冗談と受け取った彼女がニコリと笑う。……うむ、なかなかいい笑顔だ。



 とりあえず、一通りの説明も聞けたところで彼女に礼を言って辞去しようとしたその時、突如として後ろから声を掛けてきた人物がいた。



「おう、小僧。てめぇ、人の女にちょっかい出してんじゃねぇぞコラぁ!」


「うん?」



 そこにいたのは、いかにも堅気じゃないと言わんばかりの厳つい顔をした三人組の男だった。荒事に長けた冒険者らしく、体つきは筋骨隆々でガタイが良い。そのことになんら問題ないのだが、彼らから漂う汗の臭いや体臭がかなりキツク思わず顔を歪めてしまう。



「なんだその顔はてめぇ! やんのかコラぁ!」


「んー、ちょっと待ってね」



 俺は一言彼らに断ってから受付嬢に振り返り、息を一つ吐き出すと彼女に問いかけた。



「この人と付き合ってるのか?」


「えぇ? そんなわけないじゃないですか!? あり得ません」


「と、申しておりますが?」


「ぐっ、う、うるせぇ! とにかく、登録したばっかりのガキが粋がってんじゃねぇぞ! このランク13のガバル様に逆らおうとする奴が、どんな目に遭うか教えてやる!」



 やれやれ、この世界に来て早くも二度目のテンプレに出くわすとは思わなかったぜ……。さて、どうしたものか?



 他の冒険者やギルド職員たちも遠巻きに眺めてはいるものの、共通しているのは傍観に徹しているらしく誰も俺たちのやり取りに割って入ろうとする気配がない。確かに見た目が少年の俺が、見た目が厳つい連中に喧嘩腰で絡まれているのを止める奴は、よほど正義感が強いか力に自信のある人間だけだろう。



 この場をどうするか悩んでいると、リーダー格の男が俺の胸倉を掴もうとしてきたため、その手を払いのける。そのことに腹を立てた男だったが、男が行動を移す前に俺が動いた。



「あっ、あれは!?」


「うん? なんだ?」



 俺が男の後ろに指を差すと、三人全員がその方向に視線を向ける。その隙を突いて俺は足に力を込めその場を走り去る。男たちが視線を向けた後、振り向いた先に俺がいないことに気付いた男たちが怒鳴り散らす声が聞こえてきたが、それを無視して冒険者ギルドを後にした。男たちが追いかけてくる可能性もあったが、予想に反して追いかけてくることはなかった。



『特定条件を満たしました。スキル【逃走術】を修得しました』


「うん、なんとなく知ってた」



 そりゃ明らかな逃走行為だったし、なんとなく覚えるかもとは思っていたがこうもあっさり覚えてしまうとは……ちょっと複雑な気分だ。何はともあれ、これであいつらに目を付けられたのは確実なので、奴らから逃げ隠れする意味でもこのスキルは有用になってくるはずだ。



 あのあと依頼が張られている掲示板を見て、いくつか依頼を受けようと思っていたのだが奴らが絡んできたせいで受けられなかったことが悔やまれる。ちなみに、受けることができる依頼の難易度は、自身のランクから見て三つ離れたランクまでで、ランク1の俺が受けられる依頼は今のところランク4までの依頼となる。



 ランク5以下の依頼は薬草採集や雑用業務がほとんどで、モンスター討伐などの戦闘行為が必要になってくる依頼はランク6からとなっている。



 とりあえず、依頼に関してはまた今度ギルドに行ったときに受ければよいと考え、俺は今夜泊まる宿を探すべく当てもなく歩き始めた。しばらく歩いたところで宿屋を発見したのだが、残念ながら満室で空いている部屋がなかった。その後二軒目三軒目と空振りに終わったが、四軒目でようやく空き部屋が見つかりそこで宿を確保した。見た感じ良心的な宿の印象で、値段も食事込みで大銅貨三枚とそれほど高くはないようだ。とりあえず様子見の意味も込め、三日泊まると伝え先払いで大銅貨九枚を支払った。可愛い看板娘がいるというテンプレを期待したのだが、残念ながら中年の夫婦が営んでいる宿だった。



「これが部屋の鍵だよ。部屋はそこの階段を上がってすぐの201号室だ」


「わかった」



 部屋の内装は一組のテーブルと椅子にベッド、衣服を入れておくための簡易的なクローゼットと箪笥が一つあるだけの簡素なものだった。まあ大銅貨三枚であればこれくらいが妥当だと結論付け、ベッドに腰を下ろしたまましばらくぼーっとして過ごした。

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