6話「成り行きで助けた女の子からお礼を言われたんだが!?」
暇つぶしなので、気軽に読んでね!
(最初に調べた時もそうだったが、確定だな)
なぜ俺がこれほどまでに盗賊に対し怯えていないのかといえば、あらかじめ【鑑定】でステータスを盗み見ていたからだ。盗賊は基本的に、冒険者や傭兵などが本業で食っていけなくなって落ちぶれた連中のことであり、有体に言えば雑魚だ。
だが、一部の名の知れた盗賊団ともなればそこらの冒険者や傭兵よりも実力が上の可能性があるのだが、幸い今回出くわした盗賊はステータスを見る限り大したことはなかったようだ。ちなみに盗賊のリーダーのステータスはこんな感じだ。
【名前】:ヴァルゴ
【種族】:人間
【年齢】:三十三歳
【性別】:男
【職業】:盗賊
【犯罪歴】:殺人(18人)、強盗、強姦、脅迫、傷害等々
《ステータス》
レベル11
HP 66
MP 10
攻撃力 37
防御力 25
素早さ 30
精神力 18
かしこさ 10
幸運 0
【スキル】:剣技Lv1、逃走術Lv2
一瞬何かの間違いだと思ったが、他の人間のステータスとの比較対象が自分のステータスしかなかったため、低く感じてしまったのだろうと結論付けた。俺はこの世界の住人じゃないので他の人間と比べると元のステータスが高く、加えて【成長】スキルというチートを持っているため、さらにステータスの能力値に開きがあるのかもしれない。
念のため他の四人の盗賊たちも調べてみたのだが、盗賊リーダーよりもさらに能力が低いことが確認できた。だからこそ、俺は今目の前にいる盗賊たちになんの脅威も感じていない。だがしかし、能力値がこちらよりも低いからといって油断するつもりはない。“ステータスの性能の違いが戦力の決定的差ではない”ということを教えられてしまうかもしれないからだ。
「おい、てめぇら全員で囲んでやっちまえ!」
盗賊リーダーの指示に四人がすぐさま俺の周りに立ちはだかり逃げ道を塞ぐ。なるほど、悪い手ではないがその手が通じるのはあくまでも相手の力量が自分たちと互角かそれ以下の場合だけだぞ?
少し考え込んでしまったようで、俺を取り囲んでいる四人の盗賊のうちの一人が背後から剣で攻撃してきた。当然だが、下っ端の攻撃は【剣術】スキルを持っていないため、素人に毛の生えたような攻撃しかできない。そんな攻撃を俺が避けられないはずもなく、横薙ぎの攻撃は空を切る。
俺はすぐさま森で拾った木の棒で反撃をする。体の向きはそのままに木の棒を後ろに突き出す形で襲ってきた盗賊の鳩尾部分にヒットさせた。ただの盗賊がそんな攻撃を食らってただですむはずもなく、あっけなく地面に沈む。一応言っておくが、ただ気絶しているだけなのでご心配なく……まあ、肋骨が無事ではないかもしれんが。
次に二人同時に襲ってきた下っ端盗賊の攻撃を躱し、反撃の一撃を顔面に叩きこむ。手応えから察するに鼻の骨が折れたな……。最後に残った下っ端を真正面から叩きのめすと、余裕を持った態度で残りの盗賊リーダーに言い放つ。
「あとはお前だけだな、どうする? 降参するか、痛い目を見るか、好きな方を選べ」
「ふざけやがって、俺が相手になってやる!」
すぐさま盗賊リーダーとの戦闘になったが、結果的には無傷の生還を果たした。他の下っ端と違い【剣術】スキルを持っていたため、警戒していたが俺の素早さの前では止まって見える攻撃だったため、木の棒を剣道の小手のように使って武器を叩き落とし顔、鳩尾、脛と順番に撃ち抜いてやった。少しやり過ぎた感が否めないが、殺されなかっただけマシと思って欲しいところだ。
ちなみにここまで俺が戦えているのは、モンスターと戦ってきた経験と元の世界でネットの情報で杖術の基本の型のようなものを少し齧っていたからであった。まあ、なんで杖術を覚えようと思ったかは聞かないでくれると助かる。……まあ、若気の至りってやつだな、うん。
「やれやれ、俺の邪魔をしなければこんなことにはならなかったのに」
「……」
俺がそう言ってから、女の子に視線を向けると今までの一連の流れが信じられないといった様子で呆けた表情を顔に張り付けていた。そんな間抜けな顔も見ていて面白いからしばらく見ていたいと頭を過ったが、これ以上面倒事に巻き込まれたくないと思ってその場を後にしようとしたその時、停まっていた馬車の影から男の呻き声が聞こえてきた。
「この馬車の持ち主か、見たところ商人のようだが……怪我をしているな」
そこにいたのは、中年の小太りの男性で身なりからして商人だとわかった。だが、それよりも盗賊から受けた傷によって出血していたため、このままだと失血死してしまうと考え治癒魔法である【ヒール】を唱える。すると、傷は瞬く間に塞がり何事もなかったかのように傷が回復した。さすがに失った血までは元に戻らないようで、意識は戻らなかったがひとまずはこれで命に別状はないだろう。
「よし、あとは盗賊の持ってる金を巻き上げて街に向かうとするか」
そう呟くと俺は盗賊から宣言通り金を奪っていく。え? それって強盗じゃないかって? 盗賊に人権はないから奪っても問題ないでしょ、たぶん。という感じで誰に言い訳をしているのだろうと思いつつ、盗賊の金品を巻き上げた。銀貨や銅貨といった異世界でよくある硬貨ばかりだったが、現状金の価値が分からないのでこれが多いのかはわからない。
「あ、あの」
「うん? ああ、お前か」
「た、助けていただいてありがとうございました!!」
盗賊から金を巻き上げた俺はそのまま街へと向かおうとしたのだが、襲われていた女の子が一枚の布を体に巻き付けた状態でお礼を言ってきた。たわわに実った大きな胸の谷間が、エロ過ぎて思わずそこに視線が向いてしまう。
「気にするな、こいつらが俺の邪魔をしなければお前は今頃こいつらの慰み者になってただろうからな。それに俺はお前を見捨てようとしたんだぞ? 悪態を付けられこそすれ礼を言われることをした覚えはない」
「それでも、結果的には助かりました。仮にあなた様が私を見捨てるつもりだったとしても、あなた様の取った行動で私が救われたのは事実ですから」
まあ、確かにそれはそうなのだがそれは結果論であってだな……まあ、そんなことは今となってはどうでもいいことだな。
それから彼女に名前を聞かれたが、名前を教えるといろいろ面倒そうだったため、「そこの商人が目覚めたら適当に説明しといてくれ」と言づけてその場をあとにした。
去り際に「待ってくださーい」という彼女の叫びが聞こえたが、早く街に行きたい俺は彼女の言葉を無視して歩を進めた。再び彼女らと再会するのは、それから三日後となることをこの時の俺はまだ知らなかった……。
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