1話「寿命で死んだ俺の前に現れたのは、おっぱいのでかい姉ちゃんだったんだが!?」
暇つぶしなので、気軽に読んでね!
「うん? ……ここは、何処だ?」
そこは一言で表すのなら白い空間だ。視線を巡らせてもそこには何もなくただただ白い世界が広がっている。
「なるほど、【神の間】か」
「……察しが良すぎると思いますよ?」
「うん?」
突如として、白い空間に鈴を転がしたような声音が響き渡る。声の質から見て女性ということはほぼ間違いないが、肝心の姿が見当たらない。
「伊達に数多くのラノベを読み漁ってきてないからなぁー、白い空間イコール神の間は俺の中では常識だ」
「ホントにあなたの中だけの常識だと思いますよ? 矢崎市之丞さん」
相も変わらず、姿を見せることなく俺の言葉に返答する謎の声。……まあ、こいつの正体はもうなんとなくわかっちゃいるんだがな。
その前に謎の声に言われてしまったが、ここで俺の情報を開示しよう。
俺の名前は矢崎市之丞。自由と平和を愛するただのライトノベル好きの男である。
口調的に若い男だと思っただろうが、これでも齢八十五を超える爺です。……なんか、すみません。
それはまあどうでもいいこととしてだ。確か俺が最後に覚えてる記憶は、病院のベッドで家族に向かって「いい人生だった、ありがとう」って言って眠った所までなんだよな。
それを考慮するとだ。今俺が置かれている状況を俺が愛してやまない異世界物のライトノベルに当て嵌めると行き着く答えはたった一つだ。
「天寿を全うして死んでしまったが、その功績を称えて別の世界で第二の人生を歩ませてあげようというわけだな」
「何も言ってないのになんでもう説明したみたいになってるんですか! まあ、概ねそういうことですけど。そういうことですけどぉー、なんか釈然としません……」
だって、白い空間、謎の声、自分が最後に覚えている記憶から導き出される答えなんてそういうことだろう? そう思うよね、普通?
詳しい事情を聞くため謎の声に聞いたところ、やはりと言うべきか俺は……死んだらしい。
もともと、年々体が弱っていたこともあってそろそろ寿命じゃないのかと覚悟はしていたが、ホントに寿命だったとは……。
「あのラノベの最終話はどうなったんだろうなぁー。てことで、全部教えてくれ!!」
「そんなめんどくさ……こほん、そんな時間はないのでさっそく転生時についての打ち合わせに入らせていただきます」
えー、今この人“面倒臭い”って言おうとしたよ。こっちはもう死んでるんだぞ? せめてそういう情報を教えてくれても罰は当たらんだろうが!
「まったく、これだから最近の神という名の“管理者”は……ははあ、わかったぞ。お前さん、さては新人だな? やれやれ、これだから最近の新人の管理者はダメなんだよ」
「……わかりましたよっ! 教えればいいんでしょ教えれば!!」
そう言い放つと謎の声は投げやりだが俺の知りたかった情報を教えてくれた。それから三十分ほど俺が愛読していたラノベの最終話のことを聞き終え満足した俺は、一つ息を吐いた。
「おし、聞きたいことは聞けたしさっさと打ち合わせとやらをやろうか」
「……」
俺の言葉に何か言いたげな雰囲気を醸し出している謎の声だったが、観念したようにため息を吐くと突如空間が歪み始めた。
「ほおー、お前さんが管理者か。やっぱり若い女だったんだな」
「……その管理者ってのやめてくれませんかね? こっちはれっきとした神様ですよ? 偉いんですよ?」
歪んだ空間から姿を見せたのは、純白の貫頭衣に身を包んだ絶世の美女だった。見た目も若々しく、均整の取れた体は妖艶を通り越してむしろ神聖ささえ感じるほどだ。
彼女の容姿云々はどうでもいいとして、先ほどから俺たちの口から出ている“管理者”という言葉を説明するとしよう。基本的に世界というものは神と呼ばれる存在が管理していることが通常なのだが、“神”という存在を言い換えたものが管理者であり本来の彼女たちの役割でもある。
「俺からすれば、ただのおっぱいのでかい姉ちゃんにしか見えん」
「なっ!?」
俺の言葉に鳩が豆鉄砲を食ったような表情を浮かべる管理者の女性。……これじゃあ埒があかないな。
「まあ、じゃれ合いはこれくらいにしてホントに打ち合わせをしないか?」
「……おっぱいだけじゃないもん、これでも“ミス女神”に選ばれたもん」
なんか踏み抜いてはならない地雷を踏んでしまったようで、先ほどからやたら「おっぱいだけじゃないもん」と連呼しながら不貞腐れている。
それから、さらに三十分かけて彼女の平静を取り戻すことに成功した俺は、ようやく転生に関する打ち合わせをすることになった。
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