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この魔界は僕の手の中に!  作者: 怪盗N
3/4

堕天使 アゼル

よろしくお願いします



お墓を後に一度村長の家の残骸から持って行きたいものがあり、それを取りに行こうとした時、突如、空からルディアの前に魔族が現れた。

ルディアは直ぐに後ろに飛んだ。

逃げたいが逃げられないと確信する、この魔族…堕天使から。

ルディアがこの後の行動に困っているとその堕天使が話しかけてきた。


「この村をこんなにしたのはあなた様なのですか」


怒りが湧き上がるがどう足掻いても勝てない相手なので、素直に返事を返す。


「違う、この村には僕も住んでいたけど、昨日魔物に襲われた」


堕天使はまた質問してくる。


「あなた様だけが生き残れたのはなぜでしょうか」


いきなり現れて、話しかけてくる、おかしな奴とルディアは思う。


「死んだと思ったんでしょ、魔物が口から魔法を僕にぶっ放して、あっちの岩まで飛ばされたから」


そう言いつつ、さっきまで埋まっていた岩を指で示す。


「魔物の口からそれって《魔力砲マナ・ガン》じゃないですか、どの程度の魔物なのかわからないけど、まともに受けたからあれだけの傷が…」


「話はこれでおしまい、僕はやらなきゃいけないことがあるから」


そう言ってその堕天使の横を通って村長の家だった場所へ行く。


「昨日のことなのに随分と切り替えが早いですね、もしかしてあまり村の人達と仲良くなかったのでしょうか」


ルディアについて行きながら話しかける堕天使。


「はぁあ、みんなとは仲よかったよ、それに切り替えが早いんじゃない、成すべき事があるから立ち止まってられないんだよ」


ルディアの返した返事に驚く堕天使。


「後悔とかないのでしょうか」


「ある、だからこんな事を僕の目の前で起こさせないように強くなるんだ」


「うんうん、そういうところは似ていませんね、その言葉を今の彼の方に言って欲しいものです」


話していてルディアはなんとなく分かった。この堕天使はルディアに危害を加えに来たのではなく、彼の方という者に会って欲しいのだと。


「彼の方って誰」


瓦礫を掻き分けながら聞く。


「あなた様の祖父ですよ」


その言葉にルディアの手が止まる。


「祖父ってなに」


堕天使は僕の問いに答える前に笑った。


「そっかそうなるよね、あなた様は7歳だしお爺ちゃんって言った方がいいですね」


「僕のお爺ちゃん、生きているの」


ルディアは初めて知った自身の祖父の生存に興味を持った。


「存命ですよ、今は抜け殻のようになってしまってますが」


「会いたい」


探すのをやめて、堕天使を見る、見た目は僕より少し年上くらいだ。

と言っても魔物は見た目=年齢ではない。

灰色の髪で身長は170センチのイケメンだ。


「なら一緒に行きましょうか、数ヶ月間だけ旅をしていたのですが、あなた様と出会ったからには辞めざるおえないですね」


「ありがとう」


村で育ったルディアは疑う事を知らない。


「それでさっきからずっと何を探しているのですか」


「村長が持っていた魔剣」


「魔剣ですか…それならあそこら辺にありますよ」


堕天使が教えてくれた場所の瓦礫を退けると魔剣が入った箱が出てきた。


「なんで分かった」


「あなた様…ルディア様こそなぜ魔力感知を使わなかったのですか」


ルディアは忘れていた。

魔剣とは魔法陣を織り込んで作られている。

使用する際、魔剣に魔力を流して使用する、一度使うと魔力が少し残る、その残った魔力が魔剣の劣化を防ぐ。


「僕の名前知っているんだね、あなたの名前は」


ルディアが名前を聞くと堕天使は臣下の姿勢をとった。


「私は今亡きヴァリスロード王国の十柱が一柱、〈黒星〉のアゼルです」


「よろしくアゼル、ところで何歳」


急に雰囲気が変わったけど、ルディアは関係ない事だと思い華麗にスルー。


「年は17ですね、それとあなた様の本当の名前はルディア・ヴァリスロードです」


「17歳やっぱり若かった、それとそのゔぁりすろーどってアゼルが言ってた国の名前だね」


「そうですね、まぁあ、そのうちわかるでしょう、後17歳というのは堕天してからですからね」


「どっちもよくわかんないや、後で教えて」


興味のない話よりも今は魔剣である。

ルディアは箱の中から魔剣をとり出し、魔剣の柄を握り、構える。

すると横からアゼルが話しかけてきた。


「その魔剣を持っていくのですか」


アゼルはこの魔剣があまり強くないことに気づいているために持って行くほどの物ではないと思い理由を聞いた。


「うん、この魔剣をこの村のみんなの形見として持っていく」


この魔剣は村長が魔物と戦う時必ず使っていた。


「それで本当に私と一緒に祖父の元へ行くのですか」


「連れて言ってくれるんでしょ、その間僕に稽古をつけてよ、アゼル強いでしょ」


アゼルは思う、ルディアはいつか絶対どこぞの魔族に騙されると。

しかし、ここで疑うことを教えれば自分の首を締めることになる。

結論、あとで教えることとなった。


「別に急いでいるわけではないのですが、出発はいつにするのですか」


「今から、出発だよ」


そう言ってルディアは歩き出して、止まり、振り向きアゼルに聞く。


「お爺ちゃんにはどっちの方向に行けば会えるの」


ルディアは指でいろんな方向に示す。


「付いてきてください、ここからかなり距離がありますが」


「広さと言えば、アゼル、この魔界はどれくらいの広さなの」


「言葉では表現できないほど、大きいです」


「よし、まずは強くなりつつ僕は魔界を出来る限り見て回ることにするよ」


ルディアとアゼルの旅が始まった。




時は少し遡る。


あたり一帯が灰となった場所の中央には今なお、綺麗な城が建っていた。

その城の玉座に座するのは元この国の王であった、グラファイト・ヴァリスロードその人である。

しかし、覇気が一切なく、朝起きて、朝食、玉座、昼食、玉座、夕食、玉座、就寝このサイクルを7年間続けていた。


そんな元王を見ても生き残りの臣下の者達は今も王に仕えている。

いつかまた、覇気のある王に戻ると信じて。

その家臣たちの筆頭である、十柱の生き残り一人は堕天使のアゼル、もう一人は魔人の男性、名前はベデル。

この二人が1つの部屋にて話し合っていた。


「なぁ、アゼルこのままじゃグラファイト様は…」


「ベデル、この話は何百目だよ、いつも結論なんて出ないじゃないか」


この二人の話し合いは7年前からずっと行ってきたのだが、王の覇気を取り戻すことなどできず、このやり取りだけが繰り返されているのだ。


「せめてディア様さえ居てくれれば」


「あの日以降ディア様はお姿を隠しましたからね」


ルディアをあの村に預け一度は帰ってきたディアだがその後、何かがあり、それ以降姿を隠している。


「アゼルや私たち十柱が負けなければこのような状況にはならなかった…クソが」


「あれから7年、ルディア様はご存命だろうか」


この何気ない一言からルディアの捜索がきまる。


「それだ、アゼルそうだよ、なぜ今まで気づかなかった」


「何がわかったのだ」


こんなやり取りを飽きるほどしている。

しかし、話し合いをして良い意見が出るかもしれない、そう思うとやるという選択肢しかなかった。


「ルディア様を探し出すのだ」


「ベデル、その案は戦後直ぐに実行されたじゃないか、それで見つからなかった、当初0歳だったルディア様が7年たった今存命かどうか」


「あの時はここら辺だけだっただろ、辺境まで入ってない」


確かに7年前の捜索ではこの国の領土だけが対象であり、どこの国でもない場所などは対象外だった。


「本気で探すために俺かアゼルどっちかが行く、どうだ」


「なら私が行く」


アゼルは即答する。


「まぁあ、ルディア様のことに関してはアゼルが一番適任だな」


もし、国がこのような状況にならなかった場合、ルディアの教育係と護衛はアゼルになることが決まっていた。

理由は堕天したことによって体が幼くなっり年が近く、十柱の一柱の実力も兼ね備えているためアゼルになった。

この事は戦争つまりはルディアが生まれる前から決まっており、アゼルは自分が受けた恩をルディアを全身全霊で育てることによって報いることを誓ったのである。


「そうと決まれば行ってこいアゼル、どれだけかかってもいい必ずルディア様を見つけ出してこいよ」


アゼルとベデルは互いに拳を合わせたあと別れた。


それから数ヶ月間、探し続けた。

上空をいつものように飛んでいたアゼルは魔力感知で遠くの方で魔法が使用されたのを感知した。

その魔力には覚えがあった。


「この魔力は」


そこへ向かうと今の国と似たような光景だった。

村を見ている時、アゼルの魔眼に一人の少年が映る。


「あれは」


直ぐに降下してその少年に近寄る。

全身傷だらけで、右腕がちぎれかけていた。


「ルディア様かな…《回復ミムア・シン(真)》」


ルディアかどうかは分からなかったが、もし成長していたらこのくらいになっているだろうし、母親のディアと同じ珍しい黒色だから、早く治さないと思い気づけば魔法を使っていた。


「うーん、治しすぎるのはどうなんだろう、今のルディア様がどこまで魔法を使えるか分からないけど…深い傷だけ治して様子を見よう」

ルディアかどうか分からないため、上空から観察することにする。


「それにしても何があったんだろうなこれ」


アゼルの下には灰となった村?があった。


「もしかしてルディア様が嫌々、岩に埋まっていたし、攻撃を受けて戦場から飛ばされたおかげで生き残ったって感じかな」


朝日が昇る頃、少年が目覚めた。


「起きたようですね」


少年は第4階級の魔法を使う。


「やっぱり、あの魔力間違いないな、ご立派になられましたね、ルディア様」


それから上空でアゼルは考える、どうやって話しかけようかと。

いきなり自分のような強い魔族が話しかけたら警戒されてしまう。

迷ったために、さっき思った疑問から始めることにした。

降下してルディア様の前に立つ。


最初の質問には随分とお怒りの様子、第一印象が最悪。

その後はその場で思ったことを質問していき、村のことに触れた質問をした。


私は、この村の状況と国を重ねていた。


「成すべき事があるから立ち止まってられないんだよ」


こんなに小さな体でも一歩ずつ前に進もうとしていた。

昔のグラファイト様のようだった。

そこで本来の目的を思いだしグラファイト様のことを言うと、会いたいと言い、連れて行ってと言う、疑うことを知らないことに驚いたが、これであとは無事にルディア様が本来いるべき場所へ連れて行くことができる。


村を出て行く小さな後ろ姿を見ながらアゼルはもう一度誓う。


「私のこの命が尽きるまであなた様を支えます」


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