82話 元最強神のレプリカ。
82話 元最強神のレプリカ。
「完全に無駄を削ぎ落す事でしか届かへん、『没頭の果て』でこそ輝く武の結晶。ワシはその逆を追求してきた男や」
そこで、トウシは、すぅと息を吸って、
「ワシの体は小さい。平均よりは背ぇ高いけど、『野球選手』としては小さすぎて話にならん。速い球は投げられん。ホームランも打てん。こんなワシを、甲子園とかプロとかメジャーの世界で通用させるにはどうしたらええか……ワシは、ずっと、そんなことを考えて生きてきた。別に、野球選手になりたかったとかそういうワケやないで? 高校に行っても、野球する気とかないし。ただ、『どうしたら不可能を可能にできるか』と考えるんが好きやったから――」
――お前の人生についてはどうでもいい。結論を言え――
「……あんたに『ワシ』を教えたる。あんたに足りんもん、その全部を持っとるワシを知ることで……あんたは、最強を超えた神になれる」
――そう簡単になれたら苦労はしない――
「簡単? ワシを知ることが?」
そこで、トウシは鼻で笑い、
「いくらなんでもワシをナメすぎやろ。あんたみたいな戦闘バカが、そう簡単にワシを理解できる訳がない」
――うむ……悪くない挑発だ。流石に、『ガキの戯言』でカチンとはこないが、興味深いとは思えた――
そこで、
トウシの肌に触れる空気が変化した。
ビリリと、全身の毛が逆立つ。
『大いなる何か』を、その肉体で感じとった瞬間。
目を開けて、周りを確認してみると、
多目的室にいたはずなのに、なぜか荒野に座っていた。
そして、目の前には、
「俺に『お前』を叩き込んでみせろ。『その果てに辿りつける特別な世界』が、もし本当にあったなら、お前に俺の『全て』を教えてやる」
「……エッグいオーラやな……」
言いながら、トウシは立ちあがって、
「クソバカでかい覇気……近くにおるだけで感じる、ケタ違いの強さ……」
「言っておくが、本物のソンキー・ウルギ・アースの覇気は、こんなものではない。俺は所詮、ソンキーを模して造られたソウルレリーフでしかない」
「……レプリカですら、この力……絶対に、ソンキーが最強やろ。コレが最強やなかったらおかしい……」
冷や汗を流し、ゴクリと唾をのみながら、
「な、なあ、ソンキー……本物のあんたは、ほんまにモンジンより下なん?」
「ソンキー・ウルギ・アースは、間違いなく、あのド変態に負けた。あのド変態は確実に本物の俺より強い。だが、資質で劣っているとは思わない」
「……」
「さあ、行くぞ、トウシ。俺を、さらなるステージへと連れていってみせろ」




