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シュウライ


 シロが倒れて数日が経った。ラニーや女将の助けもあり、本調子までとはいかないが動けるようになったシロは冒険者としての仕事に励んでいた。


「てやぁっ!」


 シロの振るった右手の剣がゴブリンの喉元を刈り裂き、次いで左手の剣が胸を貫く。シロが剣を引き抜くとゴブリンは力なく倒れ、その命を終えた。


「ふぅ……これで最後だね。魔石を獲って、と」


 血を振り払い鞘に収め、懐から短剣を取り出してゴブリンから魔石を取り出す。その大きさは2センチほどであった。


「よしっこれで今日のお仕事終わり! さあ、帰って報告しよっと」


 マジックポーチに魔石を納め、身体を解すために伸びをしながら街の方をチラリと見る。


「……えっ?」


 自分の目を通して入ってきた光景に理解が追いつかず、頭を振りもう一度街の方を見る。しかしその光景は何度見直しても変わらず、現実を受け入れるしかなかった。


「あれは……煙? 何で街から……とにかく行かないと!」


 急いで街に戻ると、そこは火の海であった。民家は壁が壊され、ゴブリンなどの魔物が入り込み何かを咀嚼している。シロが見える範囲で動いている生物は魔物しかいなかった。そして、地面に倒れ動かなくなっている中には魔物の他に人が混じっている。


「そんな……なんで、こんな……っ!」


 あまりの光景に言葉をなくしていると、後ろから殺気を感じ、咄嗟に腰の剣を掴み振り向きざまに振るった。


「っ……!」

「ほう……やるな小娘」


 感じた殺気は、背後から迫ってきていた巨大な剣であり、双剣で防ぐことは出来たが押し負けると悟ったシロは剣を受け流しバックステップで距離を取ることで事なきを得た。

 巨大な剣の持ち主は灰色の肌をした頭から角を生やした黒髪の男性だった。

 受け流した剣はそのまま地面を砕き、その破片が少し離れたシロの位置まで飛んでくる。


「……その灰色の肌。魔人ですね?」

「いかにも、オレは魔人だが。そういうお前も人間では無いな」

「何を言っているんですか、ボクは人間です。あなたと違い肌の色は灰色ではありませんし、ツノも持ち合わせていません」

「……まだ覚醒していないのか、なら好都合だ」

「何を言って……っ!」


 男はシロの瞬きの間に姿を消し、それを認識したシロは咄嗟に横に跳んだ。シロが横に跳んだその直ぐ後、剣が地面を砕く音が聞こえた。


「また避けた……ムカつくな小娘。未覚醒者のくせに。いや、覚醒しかけているのか……?」

「何をブツブツ言って……!」

「だが、避けてばかりではオレには勝てないぞ」

「そんなの……! わかって、います、よ!」

「ふむ。その双剣もまだ目覚めていないようだな」

「目覚め……?」


 男の振るう剣をシロは紙一重で避けるが、反撃の機会を見つけることが出来なかった。男の言っている事も理解できず、シロは次第に焦り始めた。


「冥土の土産だ、見せてやろう。『起きろ、グローリア』」

「え……」


 男が剣にそう語りかけると、剣が白く輝きその巨大な剣身を更に大きくさせた。その剣から発せられる威圧感はまるでその剣そのものが生きているかのようで、威圧感にシロは圧倒されてしまっていた。


「これがこの剣『グローリア』の本当の姿だ。しかと目に焼き付けるがいい」

「くっ……!」

「ほう……逃げるか小娘」


 勝てないと悟ったシロは身体強化魔法を使い、出し得る最大速でその場を離れ崩れた民家の影に隠れた。荒れる呼吸を何とか整えようと出来るだけ静かに深呼吸を行い状況を打破する方法を模索するべく考え始めた。


「(なんだあれなんだあれ……! あんなのボク知らない……それはそうだ、ボクには記憶がないんだ……でもこの街に来てからもあんな力……魔人特有の力……? でも魔人があんな力を持っているなんて……くそっどうすればいいんだ……そもそもボクは何をしようと来たんだ……! 助けるため……ラニーさん、女将さんは逃げれたのかな……とにかく今はあの魔人をなんとかしないと)」

「一人作戦会議は済んだか? 小娘」


 男の声が上から聞こえたのと同時に巨大な白剣が頭上から振り下ろされたのを最後に、シロの意識は途絶えた。

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