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ウラギリ


 シロがポルクトの街に来てから数週間が経った。ヒイロの案内や紹介等の助けを受け、シロ一人でもこの街で暮らしていけるようになった。


「ほんとにありがとうございました、ヒイロさん」

「気にするなって。俺もシロと一緒に魔石を獲ったり色々と依頼をこなせて楽しかったからな」


 今日ヒイロはポルクトの街を出て、サザンクの街にいるパーティメンバーと合流するとのことだ。そしてシロはその見送りに門の外にある森の入り口まで来たのだ。


「ヒイロさんと出逢わなかったらボクはあそこでのたれ死んでいたかもしれないんですよ! なので、お礼を受け取って欲しいんです」

「お礼なんて……俺こそシロには命を救われたんだ。俺がお礼を渡したい」


 二人はそう言いながらマジックポーチから手のひらサイズの木箱を取り出した。数秒お互いにお互いの手元を見て、その後笑い出した。


「ふっふふっあははっ。考えることが同じだったみたいですね」

「はははっそうだな。じゃあ、交換にしよう」


 そういいヒイロがシロに木箱を差し出す。シロはそれに応えてヒイロに木箱を差し出す。


「ええ、そうですね。あ、この場で開けないでくださいね。恥ずかしいですから」


 木箱を交換しながらそんな事をシロが話す。それを聞きヒイロがニヤリと笑った。


「そう言われると開けたくなるな……冗談だよ。そう睨むなって。俺のも開けるなよ、あとで一人でこっそり暗闇の中で開けてくれ」

「何ですかそれ……まあ、一人の時に開けさせてもらいますねっ」

「ああ。そうしてくれ」


 シロが木箱をマジックポーチに仕舞ったのを見てヒイロもポーチに木箱を仕舞った。そして一息つくと真面目な顔でシロには話しかける。


「……本当にありがとな、シロ」

「? こちらこそです。ほんとのほんとに、ありがとうございました、ヒイロさん」

「ああ。本当に……っ――お前が警戒心の欠片も無くてよかった」

「――え? うっ」


 シロは何が起きたのか、理解ができなかった。ただただわかるのは、脇腹が非常に熱い、ということだけだ。シロが目線を自分の脇腹まで落とすと、そこには翠色の太陽光を反射する短くも太い物体――短剣が見えた。


「な……んで……ひい、ろ……さん」

「さあ、なんでだろうな……ここは人が滅多に来ないんだ。それにその短剣には痺れトカゲの毒が塗ってある。しばらく身体が痺れ、痺れが取れる頃には出血死してるだろうな」

「っ……まっ……て、なんで……なん、で……ひいろ、さ……ん」

「じゃあなシロ。お前といた日々が楽しかったのは本当だ――元気でな」

「ひい、ろ……さん……」


 ヒイロが森の奥へ消えていく姿を見て、シロは思うように動かない身体に鞭を打ち手をヒイロへ伸ばした。当然その手は届くはずがなかったが、どうしてもヒイロを止めたかった。そして聞きたかったのだ。


 なんで、あなたがそんなに悲しく、苦しい表情で涙を流しているのか、と。


 森の前を吹き抜ける風にパサリと倒れる一つの音が混じった。

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