第8話 アオ
「バタン!」
突然の出来事に対し反射的にドアを閉めてしまった。
(誰…?今の女の子…。もしかして部屋間違えた?)
部屋を間違えていたならば、今すぐ謝らなければならないので、部屋番号を再確認する。
「あってる……。」
部屋のドアには、受付でもらった鍵と同じ番号がしっかりと書かれていた。まぁ〜当たり前ですよね、鍵開いたんですから…
(……うーん。どうするか…。--もしかして、見間違えだったかな?--けど、今の女の子、凄く可愛かったな……。--よし。もう一回開けてみよう!)
淡い期待を抱きながら、ゆっくりとドアノブに手を掛け一気にドアを開けた。
(あ、はい。普通にいました。可愛い女の子、普通にいました。)
部屋の中には、小さな体に、銀色のふわっとした短めの髪、垂れ目で、顔つきは弱々しいく、それでいて瞳は、大きく綺麗な青藍の女の子が、今度はしっかり服を着て、ベットに座っていた。
--まるで俺がもう一度ドアを開けるのを待っていたかのように…真っ直ぐ俺の顔を見つめながら……。
「……えーと……。どちら様ですか?」
俺は、女の子の目力に圧倒されながらも今思っている率直な疑問をぶつけた。
「アオ。」
(…………終わり?--終わりみたいですね。わかりました。質問を続けます。)
「この部屋、君が借りてる部屋じゃないよね?」
「君じゃない。アオ。」
アオと名乗った女の子は、俺の質問に覆いかぶせるようにそう言った。
「分かった。もう一度言い直そう。この部屋はアオが借りてる部屋じゃないよね?」
「うん。」
アオは、無表情で頷いた。
(うーーん。--マジで誰だよ…。)
聞きたいことが山ほどあったので今度は、気合を入れて質問した。
「今から言う質問に答えてください。
--第1問!出身地はどこですか?
--第2問!どうしてこの街に来た
のですか?
----以下続く。」
ちょっと張り切りすぎてしまったと思ったがアオは、俺の質問に対して容量が少ないながらも、淡々と答えていった。17問にわたる質問を終えるとアオは疲れ切った表情を見せベットに横たわった。
俺は、頭の中で17問の回答を繋ぎ合わせた。
----アオは1ヶ月前15歳になり、田舎の村から出稼ぎのため冒険者になろうとこの街にきた。
しかし、途中で財布を落としてしまい、食べる物も、泊まる場所もなく路頭に迷った挙句、辿り着いたのがこのギルドだった。
ギルドでは、他の冒険者達が、沢山食べ物をくれた。この場所に住めば飢え死ぬことはないと思い、冒険者認定試験に合格するまでこの部屋に住みつくことにした。
鍵は、固有スキル『解除』によって開けていた。
(……一応、アオがこの部屋にいる理由が分かったな…すげー疲れたけど…)
「「グーー」」
質問を終え二人ともぐったりしていると、二人のお腹が同時になった。もう外は暗くなり、時計の針は7時を指していた。
「腹減ったな……。--なぁー、アオ。下降りたら、本当に食べ物貰えんのか?」
「うん。多分…貰える…。」
「それじゃー、下行くか……。」
「うん……。」
気怠さ全開なトーンで会話をして、俺とアオは部屋を出た。
下に行くと、さっき見た時よりも賑わいを見せていて、沢山の冒険者達が酒を飲んだり食べ物を食べたりして盛り上がっていた。
するとアオは、手慣れた様子で酔っ払っているおじさん冒険者のところに行き、次々と食べ物を貰っていった。
(すげーー。めっちゃ歓迎されてるんですけど……)
俺もそれを見習い、同じく酔っ払い冒険者に、料理をせがんだ。しかし、
「誰が、男なんかに食いもんやるかよ。」
と跳ね除けられてしまった。
(まぁ〜、そうですよね。誰も可愛くない男なんかに、あげたくないですよね……。なんとなく分かってました。あなた達のアオを見る目、結構いやらしかったですから…。----今日の夕飯は、諦めるしかないか…。金ないし。あーーひもじいなぁ〜)
部屋に戻ろうと思ったが、まだアオが食べ物を貰っている最中だったので2階への階段に座って待つことにした。
(まぁ〜、本当は待つ必要ないんだけど……。あの子、自分で鍵開けれるし。)
階段に座りボーとしていると、沢山の食べ物を両手に抱えたアオが走ってきた。
「あげる。」
そう言ってアオは、俺に2つのパンを渡し、俺の隣に座った。
「あ、ありがと。」
(普通に優しい子なんだよな……。)
----
無事に夕食を食べることができた俺とアオは、2階に上がり部屋に入った。
するとアオは、よっぽど疲れていたのか、ベットに飛び込み、寝てしまった。
「もっと聞きたいことがあったが、まぁ〜今日はこれで許してあげるか。」
(少し甘いかな……?)
アオは、最愛の妹と似た雰囲気を持っていて不思議と優しく接してしまう。
(ん?--俺はどこで寝ればいいんだ?------床か……。)
この世界の1日目の夜は、硬い地面に新たな快感を覚えた夜だった……。