第7話 反転
Grand Fantasyでは、スキルの他に固有スキルを使うことができる。これは、ゲーム開始時に何千種類ものスキルからランダムに選ばれる。
固有スキルはEランク・Dランク・Cランク・Bランク・Aランク・Sランク・SSランクとランク付けされておりEランクが最弱でSSランクが最強となっている。
そのため高ランクのスキルを狙うため何度もキャラを作り直すリセマラも多数行われている。
しかし、SやSSランクは1万人に一人しかでないと言われほとんどの人がAランクで妥協しているのが現状だった。
実際、固有スキルのランクが低くても通常のスキルを多数習得すればトッププレイヤーになることもできる。現に、世界5位のプレイヤーの固有スキルはDランクだった。
以前の俺の固有スキルは、『竜殺し』でSランク相当のスキルだった。『竜殺し』は、竜属性を持つ敵への攻撃が、5倍になり、攻撃力のステータスが1.5倍になるというものであった。ドラゴン退治の際はお世話になりました。
しかし、今鏡に映し出されている固有スキルは、『反転』。
高ランクのスキルはもちろん、底ランクのスキルも大体覚えているつもりだが、こんなスキルは聞いたことがない。
スキルの詳細は、ゲームでは確認することができたが今は確認方法がわからないためスキル名で能力を判断する必要がある。
しかし、この名前では、何をどうすれば何がどのように反転するかさっぱりわからない。
『反転』だけではあまりにも抽象的すぎるのだ。
それに、なんだよこのステータス。最初に割り振られる初期ステータスの最低ステータスじゃねーかよ。
……だめだこれ、スライムにも苦戦する。
期待外れの結果に絶望してると個室の外から、この世界に来て一番聞き慣れた声が聞こえた。
「ツバサー!ツバサーどこにいるのー?」
「ああ、いま行きます!」
そう言って受付の左あった個室から外に出ると、少し焦った表情をしたエミルが、俺の方を向き安堵の表情を浮かべた。
「椅子に座っててって言ったのに!いないから少し心配したよ。--私はギルドへの報告が終わったし、予め用意されていた宿に泊まるけど、君はどうする?」
「すみません。少し気になったことがありまして……。--そうですね、俺もどっか泊まれる場所を探したいです。」
今日は色々ありすぎて身体的にも精神的にも疲れたため、今すぐどっか落ち着けるところでやすみたい気持ちだった。
エミルは、少し考えるような表情を見せてから、名案が浮かんだのか人差し指を立てた。
「このギルド、2階は宿舎になってるの。君がいいなら一部屋借りてくるけど…どうする?」
「頼みたい気持ちは山々なんですけど俺、金一銭も持ってないんですよ…。」
金…というか、そもそも今俺は、なんのアイテムも持っていない。つまり、手ぶらだ…。
俺の言葉にエミルは、すぐに曇りのない笑みを浮かべて立ててあった指を俺に向けた。
「今回は特別に払ってあげる!けど、明日からは、ちゃんとギルドで仕事もらって自分で払ってね!」
(何?この笑顔!?可愛すぎるんですけど…
可愛いくて優しいとか…天使だな。)
俺は、少し申し訳ない気持ちになったがエミルの提案に乗らしてもらうことにした。
--だってしょうがないじゃん。金ないんだから…。
手続きが終わると、エミルはギルドの入り口で立ち止まりクルッと振り返り、小さなメモを俺に渡した。
「それじゃー、またね!--私は当分この街にいるから何かあったらここに来て!」
そう言うと彼女はギルドを出ていった。本当にお世話になりました。また会えたら光栄です!
2階は少し薄暗く、独特の木の匂いがして漫画やアニメに出てきそうな部屋が沢山並んでいた。
「ここか…。」
受付でエミルからもらった鍵の番号と同じ番号の部屋の前に行き鍵を開けた。
「これでやっと、休めるぞぉぉぉぉ!
----------え?」
----そこには、背が小さい半裸の女の子が立っていた。