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Grand Fatasy  作者: しんしん
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第1話 暗転

「暑い……非常に暑い…死ぬ…。」

 ジリジリと照りつける8月の暑さと、コンクリートからの照り返しで生まれたサウナのような異常な熱が合わさりジワジワと肌を焼く。


 林道翼りんどうつばさは、8月下旬の残暑の中、壊れたPCを持ち今にも死にそうな顔で歩いている。


 こんな暑い日に、自分の家という天国から、外という地獄に行かなくてはならなくなったのか。

 それは2時間前に遡る。




「ピピピッピピピッピピッピピッ……」


 午前11時目覚まし時計の騒音が部屋に鳴り響く。

 長い間聞いていると、頭が痛くなりそうな音を止めてベットから這い出す。

 そしてすぐ、PCの電源を入れ日課であるメールの確認を行う。

 

 “新着メールなし”


 画面に大きく表示されている。


「また通知ゼロか。まぁ~メールなど来るはずがないのだが……」


 いつも同じようなことを言っている気がするが、これが日課だからしょうがない。

 カーテンが締まっており完全に太陽の光がシャットダウンされていてもうすぐ正午だというのに部屋は暗い。昨日の夜からつけっぱなしのエアコンの音が静けさを強調していて、孤独感に襲われる。

 


 今日は、8月26日__夏休み最終日である。

 つまり、明日は始業式であり、天国であった日々の最終日である。この夏休み、振り返ってみてもゲームしかしていなかったような気がする。


(あー俺はいったい何をしているのだろう)


 そう思いながらも早々にオンラインゲームを起動し、アップデートの最新情報を確認する。このオンラインゲームは、昨日からアップデートを行うためのメンテナンスが行われていた。


「は……?嘘だろ……」


 あまりの衝撃で一瞬思考が止まった。

 

“運営側の手違いによりメンテナンスが長引くことが決定致しました。今日の12時に予定していた新イベントは明日の12時からに変更いたします”


 ------なぜ今回に限ってそうなった……。

 

 普段なら、お詫びによりアイテムがもらえるから我慢できる。

 しかし、今回は話が別である。なぜなら明日は始業式があるのだ。

 しかも、始業式のその日から授業があり学校が終わるのは3時過ぎ、完全に出遅れてしまう。


(今回のアップデートは、今までのとは比較にならないほどとんでもないものだったのに…)


 学校を休むことも考えたが、それはできない。

 学校に休まず行くことを条件に親には、比較的放任的に接してもらい、おこずかいも月1万円と高校生にしては多いと思えるだけもらっている。

学校をゲームするために休んだと聞いたらどんな仕打ちが帰ってくるか……。






 (今考えても仕方ないか。明日のことは明日考えよう)


 30分ほど絶望に浸っていたが、考えても意味がないことに気づき、なるべく今日は考えないように心に決め今度は、スマートフォンのゲームのログインをしようとした。

 その時……


「バチッ」


  聞き覚えはないがいかにも不吉な音がPCから聞こえた。

 

そして、PCの画面が暗転した。


(嘘だろ……)


 コンセントが抜けたわけではない。電源ボタンも反応しない。

 

 「壊れた……。」


 絶望と同時に今日の予定が決まってしまった。PCを修理に出す、それが今日の予定となった。



 外に出かける準備を整え2週間ぶりに外に出る。

 ドアを開けた瞬間、目を潰すような明るい光と肌を焼くような熱気により、視界と感覚が一気に奪われる。


(太陽の光ってこんな眩しかったけ……)


 そんなことを思いながらも、一歩ずつ前に進んで行く。

 身体中の水分が全てなくなるのではないかと思うほど汗が流れ出る。もともと、汗は出づらい体質だったのだけど、この暑さは別格ならしい。

 

 そして、15分ほど歩き現在に至る。



 あと、5分ほど歩けば最寄駅のビックカメラにたどり着くが、その道が長い。今までエアコンの下で涼んで過ごした怠けがこんな形で帰って来るとは思ってもみなかった。

 

もう汗も出なくなっていて意識もはっきりとしない。


「ヤバイ、意識が朦朧として…」


 視界が周りから暗くなった…


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