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機人転生 ―機械の身体で魔法世界を生き……たくないよ!? 肉体返して!―  作者: 島米一尺
第二章 力を持つ者が惹かれ合うのは物理学的にも証明されている。
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no.039 シグナルロスト

よろしくお願いします。

 


 スレンヒルデから観測される魔力量は、依然として大きくなっていく。



「コナーさん……いえ、コータさん。貴方を信頼します。絶対にハーク先輩を守ってくださると。守れなければ……世界を滅ぼします」

「リスクリターンが釣り合ってなさすぎません!? くそ……! 隊長、アミスさん! そこにいてください! 出来れば瓦礫でバリケードを!」



 コウタはスレンヒルデに背を向け、ハーク達の元へ駆ける。



『想定火力、シンデレラちゃんの数十倍……!』

「それこの辺消し飛びませんか!?」

『はい、ですが跡形は残ります! コウタさん以外消し炭になりますけど!』



 スレンヒルデがシンデレラを従えていた理由は、単純にシンデレラより強いから。そして、超高品質なエサを与えられるからだ。

 ファイアドラゴンは炎を喰らう。シンデレラは灰を喰らうが、どちらもより高い火力ほど、良質のエサとされる。

 つまり、スレンヒルデは戦闘能力でシンデレラを圧倒するだけでなく、その火力でさえ、遥か上をいくのだ。



「――ハーク先輩、愛しています」



 まるで愛する人を身を挺して守る騎士かなにかの、最期のセリフのようなストレートな愛情表現だが、そもそも命の危機の原因はスレンヒルデだ。

 コウタには、誰が何を言うとんねんという感想しか浮かばなかった。



「愛を」

「アンチ・フォース・バリア!」



 視界を埋め尽くし焼き尽くす超高速の爆轟が、十数メートルしかないその距離を瞬きで焼き尽くし、容赦なくコウタ達を飲み込む。



『測定火力、摂氏五千度オーバー! ほぼ太陽の表面と同じって……!』

「何秒持ちますか! それとスレンヒルデの現在地!」

『ほぼ熱だけなので、分単位でいけます! 熱のせいか生体反応は感知できませんが、グングニルの反応は動いていません!』

「了解! 開け次第ブースターで突貫します! 隊長は戦えないなら待機!」



 コウタは再びBツールを装着し、即座に突貫すべくブースターへエネルギーを溜めていく。


 数秒後、爆炎が少しずつ晴れていく。コウタもそれに合わせてバリアを解除する。ブースターのエネルギーを推進力へ変換して、視認し次第強襲をかけようと構えた――が。



「いねえ!」



 そこにスレンヒルデは影も形もいなかった。ぽつんと、グングニルだけが地面に突き立てられていた。


 ――デコイ。



『デコイ……! サーチ――』



 アミスがサーチをかけるより早く、ハークが怒号を飛ばした。



「――後ろだ!」

「隊長避けて! バックブレイズ!」



 コウタは咄嗟に踏ん張り、後方へ向けてブースターの推進による爆炎を解き放つ。しかし、スレンヒルデにそれはほとんど効かない。迎え火で鎮火するように、炎の障壁を纏っているからだ。



「お久しぶりです」

「はぁっ!」



 ハークは炎の障壁をものともせず、全身が痛むのを無視して殴りつける。しかし、スレンヒルデはその渾身の不意打ちすらも容易く左腕一本で受け止めて、気味が悪くも艶かしい動きでその指を食むようにからめとる。



「流石ですハーク先輩! 間違いなく本日最高の一撃です! 素晴らしい威力……!」

「なら、死んでくれ……!」



 ハークは苛立ち交じりのその懇願をストレートにぶつける。ぎりぎりと、鋼鉄すらもねじ曲げる剛力を右手にこめているが、スレンヒルデはそれを涼しい顔で楽しげに受けている。



「ああ、先輩のナマ手を握るなんていつぶりでしょうか……!」

「ぐ……!」

「この手は一生離したくないです! このまま挙式、何なら初夜も迎えましょう! このスレンヒルデ、準備はとうに出来ています!」

「本当に、気色の悪い女だ……!」



 ハークは怒りと嫌悪の表情を浮かべて若干後ずさるが、スレンヒルデは当然であるかのように追従する。 



「隊長を離せ!」



 コウタはブースターでスレンヒルデに急接近すると、勢いそのままに容赦のない蹴りを見舞う。

 ひらりと容易く回避されるが、コウタは追撃をやめない。



「機式剛術――」

「邪魔です」



 スレンヒルデが空を薙ぐと、半径3メートルにも及ぶ火球がコウタを容易く飲み尽くした。



「ぐ……!」



 火球の勢いを殺せず、コウタは燃やされながら転がりゆく。



『消火しましたが、Bツール溶解! 機能は……自爆だけ生きてます!』

「なんでそこは無事なんだ!」

『誘爆防止です!』

「そもそもつけないで!?」

『ロマン!』

「ああもう……! 外せる分だけ外してください! すぐ隊長のとこ戻ります!」

『了解です!』



 コウタはクラウチングスタートの姿勢を取り、アミスに損傷したパーツを外させる。

 その間十数秒、ハークは攻撃の手を緩めない。



「この……!」

「あら?」



 ハークは軋む身体を無視し、痛みを押し潰してスレンヒルデに潰されそうな右腕を更に強く握り返した。無論彼女の愛を返すためではなく、己が怒りと筋肉による暴虐のためだ。

 スレンヒルデは地面から足が離れ、ハークに吊り下げられる形で宙に浮いた。



「くたばれ!!」

「うふ、うふふ、うふふふ……!」



 タオルか何かのように、スレンヒルデは力任せに地面に叩きつけられていく。決して人から出ては行けないような鈍い音がごしゃごしゃと鳴り響く。



「おおおっ!!」



 ハークの咆哮と共に、スレンヒルデは最後に思い切り叩きつけられ、ボロ雑巾のように投げ捨てられる。

 瓦礫と血飛沫が舞い、地面にはいくつもの小さなクレーターが出来上がっていた。

 しかし、スレンヒルデはなぜかずっと笑ったままだ。



「これがハーク先輩の愛……! このスレンヒルデ、嬉しさで色々と決壊しそうです!」



 スレンヒルデは仰向けに寝転がったまま、なぜか股のあたりに手を当て、身をよじって悶えだす。隙だらけの様子だが、その恍惚とした表情がコウタに二の足を踏ませる。



「隊長の言うとおりほんとに気色悪いな……!」

「ぐ……!」



 ハークは肩で息をして、ついには膝さえついてしまう。



「隊長……!」



 コウタは慌てて駆け寄ろうとするが、それを遮るように再びアラートが鳴り響く。



『再び強力な魔力反応!これは、さっきのさらに数倍……!』

「隊長! アミスさんと逃げてください!」



 コウタはそう叫ぶが、ハークはもう動けそうにない。担いで逃げるにしてもあまりに時間がない。

 バリアを使うには、まだ時間が足りない。



「ふふ……素晴らしい愛です。これは私も、気合を入れた愛で応えなくては」



 スレンヒルデはグングニルを手元に呼び戻すと、今度は沈み込むような、アンダースローのフォームで構えた。

 先程の数倍の魔力はすべて、グングニルの中へと吸収されていく。



「サブマリン……!?」



 先ほどとは様子の全く違う投擲フォームに、コウタは底知れぬ恐ろしさを感じた。

 しかし、痛みや衝撃を感じることは、ついぞなかった。

 記憶に残っていたのは、次のスレンヒルデのセリフだけだ。



「グングニル・メスト・フルガ」



 ――、。


 ハークらがそれを攻撃だと認識した頃には、爆炎が、スレンヒルデから既に放たれ終えていた。

 地面をえぐり溶かすようにして空中、天井まで伸びる、奔る炎の道筋の残滓だけがそれを示している。

 数秒遅れて、轟風と爆音が地下に吹きすさぶ。

 ハークがその事態を認識したのは、アミスの報告を受けてからだった。



『シグナルロスト……!』



 その単語を、ハークははじめ意味のある言葉として認識できなかった。

 しかし次にアミスが放った言葉が、ハークを容赦のない現実に引き戻す。



『た、隊長さん! コウタさんが……!』

「……!!」



 つい先ほどまで傍らにいたはずの部下はどこにも見当たらず、仇敵だけが気色の悪い視線をこちらに向けていた。



「ハーク先輩、ふたりっきりですね」



 轟音と炎のわだちを残して、コウタは欠片すら残さず消え去っていた。




ありがとうございました。

面白かったら作品のブックマーク、感想、評価、Twitterのフォロー等してくれると嬉しすぎて執筆速度が上がります。

TwitterではAI生成ですがキャラのイラストも公開してますので、よろしくお願いします。

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