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機人転生 魔法とSF科学の世界に来たはいいけど、身体が機械になった上にバトルの八割肉弾戦なのなんで?  作者: 島米拾尺
第二章 力を持つ者が惹かれ合うのは物理学的にも証明されている。
37/69

no.036 この女、予測不可能につき。

よろしくお願いします。

 





『むむむ……隊長さんとコウタさんが捕らえられてて、コウタさんは絶賛爆熱中。もしかしなくても私がお助けするパターンですね!』

「へるぷ」

『まーっかせてください!』



 アミスはボディを少し後方に傾けて、胸を張るような仕草をする。腕があればどんと叩いてそうなほどだ。



「たかがオートロイドの一体が何になると?」



 スレンヒルデの両腕は塞がっている。だが、その程度で誰かに遅れを取るはずもない。ましてや相手はどう見ても戦闘用ではないオートロイドが一機だけだ。油断はないが、明らかに見下していた。

 しかし、コウタはそれをやれやれと首を振って否定する。



「アミスさんを侮らない方がいい。なにをしでかすかわかったもんじゃない」



 八割がた悪い意味だが、コウタはその予測不可能性においてはアミスを信頼していた。そして、今はそのふわふわしたなにかに縋るしかない。



『よーし、整いました!』



 少しの間うむむと考えていたアミスは、頭に電球を浮かべて、救出のための作戦を導き出した。



『隊長さん、そこからパンチ当てられますか?』

「あいにくと左を極められていてな。届かん」

『うーん……じゃあそれ外すので、さんにいちでお願いします。コウタさんは地面になんとしてでもしがみついててください』

「了解した」

「了解!」



 作戦がスレンヒルデに丸聞こえだが、アミスはそんなことを全く気にしない。能天気なのもあるが、絶対に成功すると信じているからだ。



『それじゃあ、3、2、1……パージ!』



 アミスの合図があった、次の瞬間。ハークの左肩の付け根から、義手が外れた。

 無理やり折れるように外れたのではなく、あくまで構造とシステムに沿って、仕様上正しく外れた。

 隻腕となってしまったが、まずはひとり。ハークが拘束から逃れた。



「あら……?」



 急激に軽くなった右側の重さに、スレンヒルデは首を傾げる。極められていたのは左腕だけ。拘束を逃れ、あっという間にハークはフリーになった。

 そしてその好機を、ハークは逃さない。



「――フンッ!!」



 有無を言わさぬ剛力と遠慮のない暴力で、ハークはスレンヒルデをぶん殴る。

 その威力はスレンヒルデが止められぬほどで、現に彼女は宙に浮き、そして弾き飛ばされるように宙を舞った。

 スレンヒルデは数十メートル弾き飛ばされる勢いで飛んでいたが、数メートル飛んだところで地面に槍を突き立ててぴたりと止まった。



「コナーさんも離してしまいましたが。すん……これはグリス? なるほど。ついオートロイドであることを忘れていました」



 グリスにより摩擦が低下し、ぬるりとした手触りはコウタをもスレンヒルデから離れさせた。

 アミスの作戦が珍しく成功した。



「あー熱かった……。アミスさん、助かりました」

『いえいえ。アシスタントの仕事ですから!』



 未だ熱の残る患部をさすりながら、コウタはアミスに礼を言って、隻腕となったハークにもひと言。



「隊長……腕が!」

「安いものだ。腕の一本くらい……。お互い無事だ。そもそも義手だ」

「いや、またメニカに怒られますよ」

「……それは困るな」



 ハークは少し困った顔をして、コウタに同意した。



「なんと素晴らしい一撃……。やはり貴方は生身である方が強い。それがたとえ片腕であろうと」



 スレンヒルデは両の手にじんじん響く衝撃に、恍惚とした表情を浮かべる。



「やはり防がれたか」

『触れてなかったのに動いてましたよ。やっぱりあれ本当に神器なんですね』

「厄介なことにな。グングニルの銘を付けられている。だからどうだということでもないがな」



 神器の名称はかなり大雑把に決められている。名付けの際は神話や物語にあるモノを参考にするが、別段その神話にある能力と同じ能力を持つ必要はない。

 アーサーという名の青年が持つ剣だからエクスカリバーと名付けられるように、それっぽければなんでもいいのだ。



「グングニルだかグングニールだかガングニールだか知りませんが、あんなのそう何発も喰らってられませんよ?」

『コウタさん、すっかりその身体が板についてきましたね! あんな槍や炎なんて、いくら喰らっても平気、へっちゃらです!』

「僕は痛みの話をしてるんです」

「普通は一撃で死ぬがな」



 ハークはそう、半ば呆れるように言った。



『改めまして、堕者さん。私はアミスです。コウタさんの専属アシスタントをしています。GIIIでは電子工作員をば。以後お見知り置きを』

「ハーク様の部下ということは私の部下。申し遅れました。魔王国超人部隊【堕者】所属、【愛】のスレンヒルデ・ボルグです。やがてスレンヒルデ・ベンジャーとなります……キャッ」

『うわキツ』

「あ?」



 その瞬間、爆炎がコウタを呑み込んだ。



「暑っつい!!」



 爆炎の中から、コウタは情けなく地面を転がって出てくる。しかしその怒りの矛先は攻撃してきたスレンヒルデではなく、余計なことを口走ったアホの相方へと向けられていた。



「なんで煽るんですか!? 馬鹿なんですか、馬鹿なんですね!?」



 とても大事なことなので二回言ったコウタだが、あと四回は言い足りない。そして、アミスはそんなこと知らんとばかりに己が主張を突き通す。



『いや、キツかったので……』

「そういうのは思っても黙っとくもんでしょ! 明らかに、見るからにヤバそうな人でしょどう考えても! 仰々しい槍持って、愛がどうだの運命がどうだの! 隊長が脂汗かいて若干後ずさるくらいのヤバ女なんですよあのお姉さんは!」

『じゃあ危険な相手には余計なことを言わずに黙ってろって、そう言うんですかコウタさんは! この私に!』

「その通りですけど!?」



 何故か逆ギレしてきたアミスに本気で困惑するコウタだが、スレンヒルデはもっと困惑することをハークに伝えていた。



「ハーク様、私と結婚してください!」



 一世一代のプロポーズ、しかし伸ばしたその手が取られることは待てど暮らせどない。

 ハークはその手を心底うんざり、というよりは嫌悪感マシマシで睨みつけ、心底鬱陶しそうな声音で返事をする。



「俺は既婚者だ。そして、独身であろうと貴様の気持ちには応えない」

「構いませんよ。最近読んだ書物によれば、恋愛には()()()()なる概念があるそうです。貴方を縛りあげて連れ帰り、なにをしてでもわからせます。恋する、愛する乙女は何をしても許されるので!」

「乙女は想い人の腕を斬り落とさないだろうがな」

「ふふふ、振られたので泣いてきますね」



 そう言って、スレンヒルデは少しハークたちから離れた。



「……ハーク隊長既婚者って、今日最大の驚きなんですが」

「さっき言ったがな」

『7つになる娘さんもいるそうですよ』

「7つ……。そういや先輩って言ってたな。じゃあスレンヒルデとそんなに年は離れてないはず。隊長幾つですか?」

「27だ」

「27!? 驚きが早くも更新された!」



 ハークはコウタのその反応に首を傾げながら、アミスに一つ尋ねる。



「……アミス、俺はそんなに老け顔か?」

『いえ。お顔の半分くらいマシンなのでわかりづらいですが、全然そんな事ないですよ。コウタさんのデリカシーが欠片もないだけです』

「顔というか貫禄というか……あと十年で隊長みたいなどっしりしたゴリラになれる気がしません」

『――ぴこーん! 閃きましたよ! ゴリッゴリの重装備フルアーマー武装作りましょう! 名付けてハークバスター!』

「その名前だと隊長を倒すことになっちゃいますけど……」



 コウタは若干困惑しながら、そう返した。









ありがとうございます。ゴールデンウィーク9連投稿チャレンジ3投目です。

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