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機人転生 魔法とSF科学の世界に来たはいいけど、身体が機械になった上にバトルの八割肉弾戦なのなんで?  作者: 島米拾尺
第二章 力を持つ者が惹かれ合うのは物理学的にも証明されている。
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no.028 全任務完遂可能換装式ツール

 


 ――メニカからの通信は、ブルースワローから送られてきている。どうやら無事に避難を終えたようだ。



「メニカ! 無事で良かった……!」

『メニカちゃん!』

『ふたりとも元気そうでなにより。ついさっきスワローに戻ってきてね。大急ぎで通信と支援の準備してたとこなんだ。早速だけど、いまからコータくん用の試作兵装を送るね』

『試作兵装……もしかしてあれですか!』

『そう、あれだね』

「それの存在を僕が知らないのはおかしいと思わないか?」



 あれとかそれとかこれとか、コウタには皆目見当もつかない。アミスが全てのデータをメニカに横流ししているので、直接データを取らなくてもなんだってできるのだ。



『サプライズってやつだね。誕生日おめでとう』

「微塵もかすりすらしてないけど」

『まぁまぁ、おふたりさん、イチャつくのは後にしてください!』

『もう、コータくんのえっち』

「……うん。もうそれでいいよ」



 コウタは色々と諦めた。どっちに転んでも不利になるならば、潔く無抵抗のガンジースタイルだ。



『ま、イチャイチャは後でね』

『メニカ、セット終えたよ。あ、二人とも。ボクだよ』

「ケイトおね……さんも無事で何より。……どうかメニカが無茶しないように頼みます」

『うん! お姉ちゃんに任せなさい!』



 ――どん、と胸を叩く音が聞こえる。

 どうもお姉ちゃんではなくゴリラだったようだが、姉としての期待はケイトには微塵もないのでゴリラで構わない。

 ゴリラ助かる。



『さて、コータくんの位置情報あたりに落とすよ。別に落としても壊れない強度にはしてるけど、私的にはカッコよく決めて欲しいね。各種調整、フォーマットはそっちで。アミスちゃんに一任するよ。それじゃケイト、お願い』

『了解。射出まで3、2――射出!』



 ケイトのカウントする声と、ごうという射出音が奥から聞こえた。直ぐにコウタの視界に兵装の距離と到達予測時刻が表示され、アミスもなにやら調整を始める。



『残念ながら、私達にはその戦いの場に立てる力はないんだ。いくら知恵をつけようと、どれだけ高性能な武器を造ろうと、その場に立って隊長の助けになることはきっと叶わない。今までも、これからも。けど、コータくんなら。いつか、きっと。出来るって言ってくれる』



 ――メニカのその言葉には、どこか悔しさのようなものが含まれている気がした。

 傍らにいるケイトがなにも言わないのも、沈黙による肯定だろうか。



『だから、任せたよ。コータくん』



 ――そこで、ぷつんと通信は途切れた。


 突然その言葉をぶつけられ、コウタは黙ってしまった。



『ですって、コウタさん』

「……皆、僕のこと買い被りすぎだと思うんですよ」



 コウタは声が震えないように気を付けながらそう言う。いくら無敵の身体を持つとはいえ、中身はクソ雑魚一般人なのだ。

 そのコウタの当然とも言えるネガティブを、アミスは笑って否定する。



『ふふふ。コウタさんが思ってるより、出来ると思っていても、それを行動に移すのは難しいんですよ。力があろうとなかろうと、そこは変わりません。コウタさんはなにかと言い訳しがちですがすぐ行動に移します。それはとても素晴らしいことなんですよ』



 存外、人間は出来るのに出来ないということが多い。勉強しかり、運動しかり、人間関係しかり。やろうと思えばなんだって出来るはずなのに、なにかと理由をつけて行動に移さない。

 だから、せめて出来ることだけでも、と何がなんでも一歩進もうとするコウタは買われて当然だと、アミスは主張する。


 ――機械になってみて良かった。そうでなければ、人から頼られるなんて有り得なかっただろうから。



「アミスさん」

『はい』



 アミスはその呼び掛けに優しい声音で応える。しかし、それ以上なにも言わない。コウタが口を開くのをただ待っていた。



「……とても、嬉しい、です」

『ふふ。それはよかったです。期待に応えられるよう頑張りましょう!』

「はい!」

『さぁコータくんがデレたところで、可愛いこちゃんの紹介だ!』

「メニカ!?」



 割って入ったのはコウタに任せたはずのメニカ張本人だ。通信を切ったふりをしていたのだ。

 コウタの感傷はどこかに消え去ってしまった。



『コータくんの性能をどう活かすか、私は優れた頭脳をいっぱい使って考えました。あとで褒めてね。ソードコータくんにビームコータくん、ジェットコータくんにタンクコータくん。どれも甲乙付け難いよね』

『たしかに。なまじ全部できるとなると何から手をつけたらいいか分かりませんもんね』

『そこで私は思ったんだ。どれも捨てられないなら、じゃあ全部出来るようにすればいいじゃん、って』

『はいそれ天才!』

「なんでかはわからないし僕アレとかそれとか知らないけど、それが正解な気がする」



 コウタは洗脳されていた!



『そうこうしてるうちにもう着くんじゃないかな。コータくん、カッコよく決めてくれ!』

『――飛翔物接近! コウタさん、マーカーのとこで待機!』

「了解!」



 マーカーに向けて、コウタは駆けてゆく。同時に接近のアラートの音量も増してゆき、青い飛翔物が見え、それは段々と大きく近づいてくる。



『レーザー誘導! 速度、角度良好! そこで月面宙返り!』

「ムーンサルト!」



 コウタは指示に従ってムーンサルトを繰り出し、その背に飛翔物を待つ。

 その青い物体はレーザー誘導で宙に舞うコウタの背を認識すると、角度を合わせながら加速してゆき、やがてバックパックのように背中に取り付いた。



『そしてスーパヒーロー着地!』



 ガン! と右の拳を地面に突き立て、コウタはスタイリッシュに着地を決めた。



『ひゅー! 決まりましたね! コウタさんに二億点!』

『やだ、私のコータくんイケメンすぎ……?』

「空中で展開まで出来てればもっとカッコよかった気がしますね。高さが足りなかったか」



 砕けた地面の粉を払いながら、コウタは装備でなく着地ポーズについての所感を述べる。装備については何も言わなくとも開発者様直々のコメントがあるからだ。



『それじゃあメニカちゃん、解説をどうぞ!』

『ありがとうアミスちゃん。忙しそうだから手短にするね。それはコータくんがどこでも行けるよう、なんでも出来るように作った兵装だよ。全任務(All Biz)完遂可能(can cpl.d)換装式(Convert)ツール。またの名を!』



 コウタの背に装着されバックパックと化していたそのツールは、折り畳んでいた部分を広げてその様相を表してゆく。

 これはコウタがアークを持っているから実現した兵装だ。身体のどこからでもエネルギーを供給出来るため、バッテリーや供給接続部分のエネルギーに関連する機構を一切合切カットすることで、体積あたりの性能を爆発的に向上させる。



『ABCツール!』



 背中のコンテナから、四本のアームがX字に展開してゆく。それぞれが独立した砲塔になっており、その口が正面へと向けられる。



『まだBのツールしか作れてないけど!』

『乞うご期待! です!』



 メニカとアミスの妄言と妄想と性癖が悪魔合体した結果、コウタはブラスターコウタとなった。










ありがとうございます。


エクストリームガンダムのザナドゥをイメージしてもらえれば。

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