no.026 Ash like snow,she likes a doll
よろしくお願いします!
「熱っついし痛い……いやこれはもう痛いすら通り越して逆に痒いな」
コウタはそんなことをボヤきながら、シンデレラの頭部が再生し終えるのと、アミスからの通信を待っていた。
追撃しないのは、先ほどのブレスがカウンター技の可能性が拭いきれないからだ。
――受けたダメージを爆炎にして返す、なんて魔法があるかもしれない。自分がエネルギーを奪ってそれを転用出来る以上、シンデレラにそれが出来ないと断ずるのは愚かだ。
「あっちも追撃してないことを考えると、カウンター、あるいは連発は出来ない……のか? そういえば下から出てきた時も炎出てたけど、それからブレスまでインターバルがあったな」
シンデレラもシンデレラで、ブレスに耐えて平然としている目の前のオートロイドに、警戒を緩めるどころか強めていた。
両者睨み合いながら、態勢を整えるまで待つしかない膠着状態だ。
そんなとき、それを割るようにアミスからの通信が入る。
『コウタさん、生きてますか!』
「お陰様で。そっちは大丈夫ですか?」
『客席まで飛ばされちゃいましたが、なんとか無事です! すぐそっちにいった方がいいですか?』
アミスはコウタらから200メートルほど離れた客席の一角にいた。目立った外傷はなく、すぐにでも援護に動ける。
しかし、コウタはそれを拒否する。
「いや、次は庇えるかわかりませんし、遠くから観察と解析お願いします。もし周りに逃げ遅れた人が居るならそっちの支援優先で」
『わかりました!』
アミスの戦闘能力は低い。専ら知識や分析の後方支援に重きを置いており、現場では先ほどの煙幕程度の支援しか出来ない。装備の変更によって戦闘能力の向上を図ることもできるが、それならコウタにその装備を付けさせた方が話は早い。
「お姫様、どこまで通じてるかわかんないけど、一応言っとくね。投降する気ない?」
「グルルルアッ!!」
「あっはい」
肯定とも否定ともとれず、殺気だけは多く含まれている咆哮に、コウタは早くもシンデレラとの意思の疎通をあきらめて駆け出した。
「機式剛術」
地面を蹴って、蹴って、蹴って。コウタは一足ごとにより速く加速してゆく。
真っ直ぐ、最高速度でシンデレラの逆鱗めがけて。
「コータストライク!!」
速度と脚力を充分に乗せた、逆鱗への飛び蹴り。それは容易く灰の鱗を突き破り、胸元へ深々と突き刺さる。
しかし、赤い液体が少し出るだけで、シンデレラは苦しむ素振りを全く見せない。
「血みたいなのは出るけど、やっぱり反応も手応えもない。柔らかい砂でも蹴ってるみたいだ。それと――」
「ゴガアァ!」
「ふんむっ!」
シンデレラの尾による一撃が直撃して少し後ろに退ってしまったが、コウタは吹き飛びはしなかった。むしろ、踏ん張ったせいで尻尾の方が砕けてしまっていた。
「見かけよりはるかに軽い」
仮にこれが先のミスゴンの尻尾による一撃ならば、コウタはほぼ確実に十数メートルははじき飛ばされていただろう。体重差とはそういうものだ。
つまり、シンデレラは全長十数メートルもある見かけより、遥かに軽いとコウタは推察した。
「グルルル……」
己の一撃に動じない相手と、砕けてしまった尻尾を睨めつけ、シンデレラはふわりと飛んでコウタから露骨に距離を取った。
先程自分を蹂躙してきた大男に似通うところがあり、加えて自慢のブレスが直撃しても平然としているタフネス。シンデレラは既に敵と認識していたコウタに対して、より警戒を強めた。
『やはり当然のように尻尾も再生していきます……。しかし、砕けるなんて随分と脆いような』
「表面が厚めの灰で覆われてるだろうことを加味しても、ですね。体重も恐らく見た目よりかなり軽いはずです」
エネルギーの流動はシンデレラの全身にある。つまりそれは生きているということだ。
しかし、その灰の身体は殴れども殴れども、砕けども砕けども、それらは決定打にならず、すぐ元通りに形成されてしまう。
「どれも効いてないし直ぐに再生する。本当に不死身なのかも……?」
『けっこういいセンいってましたけどねー、コータストライク。仮に相手かミスゴンだったとしても多分ダメージありますよ』
「それは良いんですが、この技名めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど」
ハークの【ハークスマッシュ】のように、自身の名を冠する蹴り技だが、コウタは当然、この誰が名付けたか一発でわかってしまう名に不満があった。
『メニカちゃんにしてはマシな方なので……。名前もじりでメタルストライクに申請し直しますか?』
お互いに、技名を叫ばないという選択肢はない。気合いを入れることで心做しか威力が上がる気がし、何よりもロマンがあるからだ。ハークですら、自身の名を冠したもの以外は基本的に言う。
「僕の漢字『晃太』なんですよね。意味的には光とかそっちの方が近いかと……」
『ならシャイン、ライト……フラッシュ? どれもぽくないですね。ストライク・Kは?』
「うーん……。また今度考えましょう。メニカ抜きで」
『それがいいと思います』
なお、メニカが駄々を捏ねまくるので結局コータストライクが改名されることはなかった。
『それで、しばらく戦ってみた感想はどうです?』
「ブレスがなければどうとでもなってます。今のところ。なにより厄介なのはやっぱりあの再生ですね。再生阻害装置みたいなのないですか?」
『そもそも再構築の原理がわからないので、装置を用意しようがないんですよね』
アミスはうむむと唸りながらそう言う。
「なんかそういう魔法じゃないんですか? 再生もそうですけど、隊長に叩き落とされても普通に動いてるってのも気になります。あんなの喰らったら普通死ぬのに」
『コウタさんも普段あれ喰らってますけどね。たぶん前も言いましたが、魔法ってそんなに万能じゃないんですよ。魔法は医療分野にも適応されてますし、欠損部位を再生させる技術もあります。が、あそこまで早い再生は物理的に不可能です』
あらゆる現象には、理屈と理由がある。それは魔法と呼ばれる物理現象も例外ではない。シンデレラのこの一件科学的に不可能にも思える超速再生も、実際の現象として起きている以上、必ず理がある。
「相手の魔法の謎を解きながら戦う……なんかファンタジーっぽくなってきましたね」
『ええ、魔法を科学してやりましょう!』
魔法は未だ未解明な部分が多い。魔素が脳波と反応することで魔力と呼ばれるエネルギーになることはわかっているし、その魔力の変質も脳波の状態に影響するとわかっている。
だが、言ってしまえばその程度だ。なぜ脳波と反応するのかも、なぜ思うままに変質するのかもわかっていない。
「物理攻撃が効かないし再生する相手……かなり不利だけど、絶対に負けてやらない」
『おや、いつになく強気ですね』
「最近気付いたんですけど、僕って案外負けず嫌いなんですよね」
『ふふ、いいことですね』
「こんなとこで足止め食らう訳にはいきません」
コウタの任務はシンデレラの無力化ではない。厳密には。シンデレラを無力化した上、かつ推定勇者クラスのアンノウンと戦うハークの加勢にいかなくてはならない。
「ユーリは一撃でミスゴンを倒してた。仮にユーリが僕の100倍強いとして……」
『私換算で90倍くらいですよ』
「じゃあ九十撃……キリが悪いんでやっぱり百撃にします。百撃であいつを倒す」
倒すと豪語する割に、なんとも低い目標設定だ。らしいと言えばらしいが、並び立つと誓ってみせたのだから、一撃で倒すと言ってもおかしくないというのに、コウタはおかしなところで謙虚だった。
アミスはそのおかしさを内心でふふふと笑いながら、諭すように堅実な意見を返す。
『コウタさんに百回も攻撃されたらどんな生物も死ぬと思いますけど……』
「そうですか? じゃあ半分……いや、そもそもあの時のユーリは全力じゃなかったことを加味すると、せいぜい十倍? やっぱり十撃で倒す」
『その気になれば一撃でやれますよ? 代わりにコウタさんの命削りますが』
「当然却下しますけど?」
『ちっ』
「舌打ち!?」
コウタがアミスの舌打ちに驚いたのも束の間、アラートが鳴り響く。
『周辺大気、減少していきます! 逆にシンデレラ周囲の温度は上がっていきます! おそらく地下から地上をぶち抜いたやつが来るかと!』
「あれか……! とりあえず待機、離れててください!」
『りょーかいです!』
今度は全身に爆炎を纏わせて、シンデレラは周辺の大気を吸い込んでゆく。
灰の体に赤いラインが迸ってゆき、更にその赤は深まってゆく。
「グルルォォオオ!!!」
咆哮と同時に、凄まじい爆炎がシンデレラから放たれる。
爆音と超音波はスタジアムのガラスを全て粉砕し、爆炎は地を焦がし溶かし、天にまで登っている。
しかしそれを見ても、コウタは最早驚きはしない。
「火山の噴火ってこんなんなのかな……」
『温度だけは噴火の比じゃありませんけどね』
「こんなの僕に当たらないってわかってるはずなのに……なんでだ?」
『考えられるのは、再構築の時に必要なことなのか、それとも単に火力上げの準備か。どちらにせよ魔力と熱を全身に巡らせる必要があるのかもです』
その推察を、待ってましたと言わんばかりに警告音が鳴る。先程と同じ、魔力反応のアラートだ。
『シンデレラから高魔力反応及び高熱源反応! ブレスかと! けど、この方向は……』
「地下を焼く気か……!? させるか!」
シンデレラは口の端に青い炎をチラつかせたまま、コウタには向けず、自身が空けた大穴を狙っている。
――仮にこれが誘い出すためのブラフだとしても、防ぎに動かざるを得ない。地下にはハークとハスキィ以下、幾人かがいる。
「ゴアァァ!!」
コウタが穴の側へと辿り着くとほぼ同時に、シンデレラの口腔から青い炎が激流のように放たれる。
「アンチ・フォース・バリア!」
間一髪、シンデレラの炎をバリアで遮る。
『なんて火力……! こんなのが下に放たれたら大惨事ですよ!』
「とっといてよかったです。さっきのから結構な間隔がありますし、連発は出来ないと見ておきましょう。撃ち方も同じです。ミスゴンのように使い分けはなさそうかな」
『バリアが溜まるまであと一回だけ防げますが……ギリギリですね』
「それ僕が身を呈すこと加味してますよね? あれめちゃくちゃ熱かったんですけど」
『遮断は出来なくとも逸らすことは出来ますからね!』
「否定して!?」
時間にしてほんの5秒の獄炎だったが、その最大火力はミスゴンのそれを遥かに上回る。瞬間最大出力を重視したのか、大口を開けたぶんシンデレラの口は大きく裂けてしまっていた。
しかし、当然その傷も再構築して元に戻ってゆく。
『また再生してます……。これじゃサラマンダーじゃなくてサラサラマンダーですね』
「くだらないこと言ってないでさっさとアミペディア発動してください」
『あんな信憑性に欠けるものと一緒にしないでください! 私はちゃんと論文とか読み漁ってますから!』
「はいはい」
アミスの憤慨を軽くあしらい、コウタは続ける。
「そもそもサラマンダーってのは身体が砂っぽかったり無限に再生したりするんですか?」
『そんなまさか。龍ほど大きい生物がそうそう再生なんて出来ませんよ。それを抜きにしても、頭部なんて全生物の弱点です。それを破壊、切断されて無事なんて有り得ません。全能性幹細胞でも持ってるならあるいは、って感じですけど、それでもあの速度は有り得ません』
龍は恐竜の仲間ゆえ爬虫類だが、トカゲのように尻尾が生えたりはしない。充分な休息と栄養さえあれば生えないこともないが、シンデレラのような超速再生はありえない。
「けど、現に有り得ている」
『あの再生が本当なら、世紀の大発見なんですけどね』
「そりゃあ不老不死なんて全人類、全生物の――」
望み、と言いかけてコウタは止まる。
「……いや、これは見方を変えるべきなのか? シンデレラはそもそも生物じゃない、とか」
『非生物……?』
コウタが思い起こしたのはゴーレムやマギカロイドだ。核さえあれば、周囲の自然物でボディを構成する。先の試合でゴンザレスが見せたそれだ。それも、手練ともなるとかなりの速度で構築される。
コウタはメニカから聞いたその話を、思い出した。
そして、アミスがなにかに気付いた。
『――あっ!』
「なにかわかりましたか」
『火龍は獲物の灰で卵を温めて、幼体はその灰を喰らって大きく育ち、やがて親と同じように炎を喰らうようになります。その幼体をシンデレラと同じく、やはりグレイスケールと呼ぶんです。そのまま食性が変わらずに大きくなったのも、グレイスケールと呼びます』
「さっきそう言ってましたね」
『てっきり大きさと火力から成体と勘違いしてましたが、シンデレラはまだ幼体なんですよ! それも魔力量が桁外れの!』
「幼体……? ミスリルドラゴンほど大きくはないですけど、立派に成体ですよこの大きさ」
シンデレラは二階建て家屋ほどの大きさだ。子どもと呼ぶにはドラゴンにしろ明らかに小さく、成龍と比べても引けを取らない。
コウタの意見は折り込み済みなのか、アミスは特に否定すらせず話を続ける。
『恐らくシンデレラは、魔力を通した灰を全身に纏って身を守ってるんです。マギカロイドに自然物の鎧を纏わせるかのように。莫大な魔力と式さえ揃えれば、巨大な龍に見えるようにも出来るでしょうね。あの血に見えるのはおそらく、液体魔素でしょうか』
再生が早いのは、肉体ではなく灰の構成物だから。どれだけ致命傷を与えようと、そこに生命はなくダメージもない。分厚い灰がクッションになりほとんどの攻撃を寄せ付けない。
「……つまり、シンデレラはほぼ灰の非生物、言うなれば灰のドラゴンゴーレムってことですか?」
『推論ではそうなります。あの再構築速度だと、中身を引っ張り出すのに苦労しそうですが……』
世の中に山ほど理論だけの概念があるように、謎を解き明かすのと、それを実証するのは別物だ。
しかし、コウタにはある策が思いついていた。
「なら、僕らの勝ちです」
『へ?』
「まぁ見ててください」
コウタはそう言って、ふたたび駆けてゆく。そして、シンデレラの逆鱗あたりに正拳突きを見舞った。
ぽすんと気の抜ける音を立てて、拳がめり込む。当然、シンデレラにはなんのダメージもない。
しかし、コウタの狙いはそれではない。
「ほとんど灰なら、これの適用範囲内だろ!」
コウタは自身のエネルギーをシンデレラへと流し込み、その全身へと巡らせた。
そして。
「フォース・エクスプロード!」
流し込まれたエネルギーたちは主たるコウタの命令により、各々の方向へ拡散しようと動き出す。それらは内部のエネルギーさえも巻き込み、抗えぬ絶対の命令へと昇華する。
「ガ……!?」
破裂などの許容限界を迎えて起きるそれではない。物質がエネルギーベクトルに従って動こうとするだけの、ある意味基本的な物理現象だ。
一部だけならまだしも、全身を抑えることは不可能だ。抗えぬ絶対の命令にやがて、シンデレラの体は全方位に爆散した。
『そうか! 大半が無生物ならアークのエネルギーの支配下における! それなら全身を灰で固めようと関係ない!』
「ケイトさんの戦いでゴーレムを見たおかげです。ありがとうケイトお姉ちゃん!」
巨龍はその姿を丸ごと消し飛ばされ、灰と赤い液体の混合物となって辺り一面に撒き散らされる。
その地獄絵図の雨の中を、コウタは探る。
「アミスさん!」
『見つけました!』
降り注ぐ灰の雪。その片隅に蠢くそれを、アミスは見逃さなかった。指示を受けた瞬間に即応し、コンマ数秒で目標を捕捉し、最短ルートを導き出す。
コウタはそのルートを微塵も疑わず、全力で踏み込み、駆け出した。
「――フッ!!」
――その目で捉え、捕らえようとしたのは、確実に犬ほどの大きさの龍だった。
しかし、舞い上がった灰がカーテンのようにその小さな冷血動物を覆い隠したかと思うと、そこには何故か、人間のような影が写し出された。
「人!?」
予想外の事態に、コウタは慌てて地面を削りながらなんとか止まる。龍の正体を看破して引きずり出したと思えば、何故だか人影が現れた。
『んん……? コウタさんカメラでは確かにドラゴンっぽいシルエットでしたが』
「なんにせよ、まだ終わってくれなさそうな予感がします」
降ってくるでもなく、横入りするでもなく、シンデレラの居た場所に急にそのシルエットは現れた。そして、コウタには大まかな予想がついていた。
「……人の姿も模せるのか」
『えっ、あれシンデレラなんですか!?』
「多分。地下から誰かが上がってきたって可能性もなくはないですが、それだとシンデレラの影がない理由が説明出来ません。本物と見まごうほどの精巧なドラゴンを形作ってたんです。人型を模すくらいやってのけるでしょうね」
『確かに……。最終形態が小さいってのもロマンですよね』
「それはちょっとわかりますが……」
やがて、シンデレラが灰の煙から姿を表す。
シンデレラはやはり、灰で人間の身体を形作っていた。灰が積み重なった二対の胸元、なだらかな流線型の全身。彩色前のフィギュアのような、きっちりと人間の少女の姿だ。
しかし、次にシンデレラがする行動に、コウタは更に驚くことになる。
「貴様。無礼」
「は……!?」
「名乗る。名」
コウタには言葉が出せなかった。いくら人の言葉を理解するほど賢く、いくら内部までその姿を模せたとしても。言語とは社会生活と鍛錬で得るものだ。
「さっきまでゴアガアガルルとか言ってたのに」
「シンデレラは。シンデレラ。貴様。?」
「……コウタ」
「名。コータ。覚える」
「それはどうも……?」
声帯を模しているのだろう、片言ながらも人語をしっかりと操り、意思の疎通さえしてみせている。前例がないわけではないが、史上数例目であり、凄まじく珍しいことに変わりはない。
コウタの困惑を他所に、シンデレラは続ける。
「シンデレラ。コータ。た。。たたたう。?」
「……戦う?」
「うん。そう。たたかう。最後。死ぬ」
「つまり、どっちか死ぬまで戦う?」
「うん。うん。シンデレラ。お願い。オジャマムシ? 食べる」
シンデレラは首を傾げながらそう言う。その仕草は、まるで本当に人間のそれに見えるほどだ。きちんと着色していて、余程近くで見なければ人間と判断されてしまうほどの。
「邪魔者を排除してこいって指示されたわけか」
「うん。シンデレラ。コータ。食べる」
「美味しくないよ?」
「食べる。ない。食べる」
「食べないけど、食べる。……食事と殺傷を同じ行為として認識してるのか?」
コウタはシンデレラの片言ながらもしっかり意味の通った言葉を反芻し、自分なりに理解しようとしていた。
日頃から訳の分からぬことを言う輩二名に絡まれまくっているせいか、コウタは少ないワードで相手の意図を察することに長けはじめていた。
「シンデレラ。コータ。食べる。いい?」
「丁重にお断りするよ」
「やだ。食べる」
シンデレラはその灰の顔面に、にたりと無邪気な笑みを浮かべていた。右手をコウタにかざしながら。
そしてその笑みを崩さぬまま、言う。
「コータ。バリア。ない。シンデレラ。炎。出せる」
シンデレラの手のひらが真っ赤に染まり――!
ありがとうございます!
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次回更新は2月半ば予定です




