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機人転生 魔法とSF科学の世界に来たはいいけど、身体が機械になった上にバトルの八割肉弾戦なのなんで?  作者: 島米拾尺
第二章 力を持つ者が惹かれ合うのは物理学的にも証明されている。
18/69

no.017 ハゥトゥドラゴンスレイ

よろしくお願いします

 




『――コメゴン接近!』

「機銃で牽制しろ!」

『ファイアー! 今度は散弾です!』



 アミスは機銃の弾薬を特殊散弾に変え、面での機銃掃射を試みた。範囲は通常の数十倍。それでもコメットドラゴンにはかすりすらしない。

 だが、これはあくまで牽制と割り切っている。時間稼ぎで充分だ。



『目標、一時的に撤退! 再帰までおよそ二十秒! コウタさんはその間に操縦をマスターしてください!』

「無茶言いますね!?」



 コウタは操縦はおろか、飛行機に乗るの自体はじめてであり、もっと言えば自転車に乗ったこともない。むろん、アミスもそれはわかっている。



『普通に操縦する必要は無いです! コウタさんのボディはあらゆる機械の操縦系統へ神経接続できるので、ほかの人よりずっと簡単に習得できるはずです! ただジェットに身をゆだねてください! セキュリティは開けてますので一秒で神経接続出来ます! 合図はナーヴリンクです!』



 コウタのボディにはあらゆる電子機器をその神経系に接続し、体の一部のように認識させる機能が備わっている。エイプとの一件で使った【どこでもブラスター】をなんの訓練もなしに難なく使えたのも、この機能のおかげだ。



「そういえばありましたねそんな機能! ナーヴリンク!」



 瞬間、操縦桿から、つま先からてっぺんまで全身にかけて電流が走る。その電流は絶え間なく流れ続け、ジェットの先から後ろまで、コウタの全身(・・)を駆け巡った。



「うおお……!?」

『コウタさん、リンクは終わりましたね! ちょうどコメットドラゴンが来ました! 回避お願いします!』

「えーと、こうか! バレルロール!」



 神経接続のおかげで、理論ではなく感覚で操縦出来ている。どの方向にどのくらい操縦桿を捻るか、計器はどうか、などといった複雑な操作は必要ない。ブルースワローは現在、コウタの手足だ。コウタからすれば、ただ地面を歩くようにするだけで空を飛んでいる。


 

「アミスさん、迎撃お願いします! バレルロール!」

『ファイア――速っ! 当たりません!』



 名前の響きはかわいらしいコメットドラゴンだが、その速さは生物界随一だ。産まれた瞬間から音速を超え続けている。彼らが止まるのは、その生命が止まるときだ。加えて龍種にしては小さいので敏捷性も高く、回避性能が尋常でなく高い。アミスのように認識してから撃っていてはかすりもしない。

 ただ逃げていては、コウタたちが撃墜されるのは時間の問題だ。



『……あ、メニカちゃんのバイタルがやばいです!』

「忘れてた! ごめんメニカ……メニカ?」



 返事どころか気配がないので何事かと目をやると、座席でぐったりとして動かないメニカがいた。度重なる不安定な機動と不必要なバレルロールでキャパを超えたのだ。



『いつのまにか気絶してたみたいですね』

「調子乗って回りすぎたか……。あとで謝ろう」



 コウタは軽くメニカの口を拭うと、小さくごめんと謝って操縦に戻った。



『――目標ロスト! 索敵範囲から消え失せました!』

「諦めて逃げたか……?」

『いや、ドラゴンメテオシャワーの可能性が高いです! スペースデブリと共に獲物を抉り殺す技です!』

「なんて技だ……」



 コウタが自然の厳しさにドン引きしていると、ついにハークが動いた。



「アミス、ハッチを開け」

『まさか外に出るつもりですか!? いくら隊長さんでも自殺行為ですよ!』

「出るつもりはない。流石に機体の内壁ごとぶち抜くわけにはいかないだろう」

『了解、ハッチ開きます!』



 ハッチを開くと凄まじい風の音とともに、コメットドラゴンの咆哮が轟いた。

 小さな竜巻が、スペースデブリの隕石とともに降ってきた。



『――反応確認! ドラゴンメテオシャワーです! コウタさん、回避お願いします! 隊長さんは何かにつかまってください!』

「了解した」



 ハークは座席の背もたれに背中を預けているだけだ。



『それつかまってませんよね!?』

「問題ない」



 そう言ってハークは取り出したライフルのスコープを義眼と同期させると、残る片目を閉じた。



「さてコータよ。ひとつ授業だ。ドラゴンスレイをする為のな」

「……え! はい! 聞いてます! 元気です!」

「ならいい。続ける」



 次いで義手と接続させると、エネルギー供給を始めた。このライフル【フェイク】は電磁加速により弾丸を放つレールガンの一種だ。反動が凄まじく、ハークのようなゴリラにしか使えない。



「なんにしてもそうだが、まずは特性を理解することが肝要だ。何に強く何に弱い。どう動きどう止まる。癖はあるのかないのか。それを積み重ね、糸口を掴む」



 ツマミをきりきり回し、ハークはフェイクの出力を調整する。フェイクは出力可変式のレールガンだ。スタンガンレベルから、ちょっとしたカミナリ、なんなら火薬式の実弾も撃てる。



「ドラゴンは単純に個体が強い上に、その種族ごとの特性も多岐にわたる。例えばお前が戦ったミスリルドラゴンに通じた策が、コメットドラゴンには通じない、などな。まぁそれを無視して力技でぶち抜く奴らもいるが」



 ハークが装填した弾倉はホローポイント弾のような炸裂する銃弾で、貫通力と広範囲の殺傷力を兼ね備えている。



「空龍はその巨体で飛び続けるために軽く柔軟性、流動性のある鱗と骨格を持っている。体重もかなり軽い。そのため打撃や銃撃では効果が薄い。受け流されるからな」

『チャージ50』



 スコープのツマミを回し、ハークは視界を調整する。機体の外部カメラと義眼をリンクさせ、リアルタイムでコメットドラゴンの動きを追う。



「コメットドラゴンは獲物の運動エネルギーを喰らう。仮に鱗のない口腔を狙ったとしても生半可な攻撃は全て餌になる」

『チャージ70』



 突風が吹き荒んでいるが、全身の筋肉をガチガチに固めたハークはピクリともしない。



「ゴガァアァ!」

「やかましい」



 死の竜巻が機体の後部に迫る。今にも尾翼に触れようとしている。しかし、ハークは淡々と指示を出す。



「――今だ。落ちろ」

「り、了解!」

『えぇっ!? 振り落とされますよ!?』



 ぐんと機首を下げ、ブルースワローは高度を下げながら加速していく。やはり、それでもハークは動じない。



 コウタはハークに言われるがままジェットを急降下させる。速度がぐんと跳ね上がり、風の音がよりいっそう強くなる。



『追ってきてます! 今までの最高速度です! 隊長さん、落ちたら食べられちゃいますよ!』



 アミスの慌てる様子もハークはどこ吹く風、淡々とライフルを構え続けている。



「落ちねば問題ない。さて、話の続きだ」

「この状況で!?」

『コメゴンもさらに加速してます! 数秒で追い付かれます!』



 アミスの現況報告も気にせず、ハークは話を続ける。



「外部には物理攻撃が効かず、生半可なエネルギーなら喰らわれる。ならばどうするか」

『チャージ90』



「こうする」



 ハークは引き鉄に指をかけ、その時を待った。

 急降下の最中だというのに、ドラゴンが大口を開けて咆哮しながら追いかけて来ているのに、文字通りの意味でも全く動じていない。バイタルも安定しているし、ただ単純に平常心を保っている。そして、ぽつりと。



『チャージ100 コール “スナイプ”』

狙撃(スナイプ)



 瞬間、閃光が竜巻を貫いた。



「よし、仕留めた。コータ。機体を水平にしろ。今度はゆっくりでいい。アミス、ハッチを閉じろ」

「あ、はい」

『え、え……? はい……。コメットドラゴン、反応ありません……。ハッチ閉じます』



 アミスですら驚いているが、コウタの内心も似たようなものだった。


 ――後ろの方が少し光ったかと思うと、コメットドラゴンの反応が掻き消えていた。断末魔すら聞こえなかった。



「勝利は必ずしも劇的ではない。苦闘の末倒すなど珍しい。だいたいはあっけなく幕切れる」

「えぇ……」



 自身が苦戦した挙句倒せなかったドラゴンの一種をこうもあっさり倒され、コウタは落ち込むことも出来ず、ただ驚くことしか出来なかった。

 アストまで、あと少し。









ありがとうございます。めざせ一週間投稿

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