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アルカのひみつ



家を改築……否、新築したフィンに案内され、子どもたちは新たな屋敷を見て回る。



「簡単な作りだけど一応こうゆう部屋がいっぱいあって、みんな一部屋づつ使えるようになってるからね〜」



手近な部屋のひとつを見せられた子どもたちはわいわいとはしゃぎ、皆嬉しそうな顔つきになる。


あまり長ったらしく説明するのもつまらないだろうと思い、

子どもたちに自分の部屋を決めるように、と伝えると、彼らはすっかりテンションが上がりきってしまったのか、我先にと走り出していった。


その場に残った子供はアルカとギゼル、それにフェイシア。



「すごい……ぼ、僕たち全員に個室が、あるんですね……!」



フィンの洗浄魔法でボサボサだった髪がすっかり綺麗になったフェイシアが呟く。



「そうだよ〜!一応ベッドとテーブルに椅子、あとクローゼットも置いたんだけど……他に何かいるかな?」



「じゅ、じゅうぶんです…………あ、でも、これから……ちゃんと見た目を気にしないと、グリムさんたちに迷惑がかかってしまうので…………出来ればなにか、体を清めるものがあれば……」



「それなら各部屋に身体を拭く桶と布も支給しようか〜」



「こ、こんなにいっぱい、よくしてもらったのに……これ以上もらってしまうのは…………!」



「大丈夫ッスよフェイシアさん、『必要な物は妥協しない』ってヴェルミーリョさんとも話し合ってるので、遠慮しないでくださいッス!」



「そうそう!僕たちもずっとじゃないけど、住むことにはなるしね〜!

庭に井戸があったから、そこをベースに皆が入れる大きいお風呂も作る予定さ〜」



「え!皆が入る大きい風呂!?

そ、そんな物まで作るのか?!」



フィンの銭湯増築計画に、何故かアルカが狼狽えはじめる。



「流石に個室ごとに風呂を作るのは水回りの事情的に難しいからね〜。……っていうかアルカ、もしかして混浴だと思ってるの〜?w

悪いけど流石に男と女では分けるよ?」



「そ、そんなえっちなこと考えてねーよ!!そうじゃなくてだな……オレはその…………あーもう!ねーちゃんのばか!!」



「なぁアルカ……そろそろもう言ったほうが、いや。もう『元に』戻ってもいいんじゃあねーか?」



「そ、そうだよリーダー……もう、ボクたちのために……虚勢を張らなくて、良いと、思う…………!」



アルカがやたらと顔を赤くして空回りしている所に、ギゼルとフェイシアが意味深な言葉を言う。



「う、うるせーぞギゼル!それにフェイシアまで!!

オレはみんなのリーダーなんだぞ!口だしすんなよ!!」



「えっ、アルカさんって……もしかしておん――」



「うるせぇうるせぇ!オレは風呂なんてはいんねー!!!」



必死に喚くアルカにグリム、ギゼル、フェイシアはしまった、いう気持ちになる。



「……アルカ」



――ただひとり、フィンを残して。



「な、なんだよ」



「風呂に入らないのは、人としてちょっと……流石に汚いと思う」



「うっ!」 



「だから今日風呂作ったら僕と一緒に入ろうか〜」



「なっ!!ねーちゃんもオレを……オレを女扱いするのかよ!!」



「そんなことはしないよ。ん〜と、そうだなぁ……お風呂みたいな開放的な場所だと、結構本音で話し合えるって聞いたことがあって。せっかくの機会だしアルカとちゃんと話してみたい思っただけだよ。

……一人で悩んでる事も、人と話して整理してみると意外と簡単に解決する方法が見つかったりするんだよ?」



「かいけつする方法…………」



「まぁ深く考えずいろいろ話してみよ〜って感じに構えていればいいと思うよ。それじゃあ今日の夜、待ってるよ。んじゃ、お風呂作ってくる〜♪」



それだけ言うと、フィンはにこやかな表情で歩いていってしまう。


自分ではどうにもできないざわめきを抱えていたアルカは、そんなフィンを見て……期待と不安と、ほんの少しのを希望が芽生えるのだった――。



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