赤い屋根のおおきなお家
「そいじゃ頼んだで〜ワイは不動産屋行って正式に契約してくるわ」
そう言いながらヴェルミーリョが去っていく。
残されたグリムと孤児たちは、フィンへと期待の眼差しを向けた。
「ねーちゃん!このボロい家、また魔法でどうにかしちゃうんだろ?すげーよ!!」
「これからいったいどんな匠の技が……いやぁー楽しみッス!」
「んむむ、緊張するなぁ…………よし、いくぞ〜!!フレイムサークル・つよ火!!」
「「「つよびー!!!」」」
屋敷の下に魔力の光が輝き、神々しい炎の柱が立ち昇る。
そして、屋敷をすべて跡形もなく燃やし尽くした。
「…………」
「………………。」
「お〜上手に焼けたな〜!」
「じょ……」
「じょ?」
「上手に焼けたじゃあないッスよーー!!!どうするんッスかーー?!?!?!!!」
「オレたちの家……燃えちゃった…………」
グリムが絶望の声を上げ、アルカと子供たちは涙目になる。
「こらこら子供たち……それにグリムっち、そんな気にすんなよ〜。これから新しい家を建てるんだからさ〜、っと。」
彼らに対して、のん気な調子で返したフィンはアイテムボックスから凹凸のある小さな塊を大量に取り出しはじめる。
「フィンさん、それってあの……ブロックっすか?男の子とかが遊ぶやつ……ッスよね?」
「そうだよ〜、僕REG○ブロックとか超好きでね。好きすぎて里にあった石や頑丈な木を削り出して再現したのさ〜!今日はこれで……超大作の屋敷を作るぞ〜!」
そう言いフィンは、ブロックと格闘を始めた。
「そんなミニチュア作ってどうするんスか……ヴェルミーリョさんももう本契約しにいっちゃったし…………。」
「まぁ見てなって〜!これから建国される僕たちの王国をさ〜!
ふーむぅ……家のパーツは里で作ったものから流用するとしよう。」
アイテムボックスから、凝った作りのミニチュアブロックハウスを取り出したフィンは、スキルでそれを増やしてからおもむろに分解し始める。
その中なら使えるパーツを選別し、流用していく事で最速で屋敷の形へと落とし込んでゆく。
…………そうして、嘆くグリムと子どもたちに適当に相槌を打つこと30分。
ついにフィンの超大作が完成した。
「いや〜我ながら素晴らしい出来だよ〜!部屋数に余裕を持たせつつ、広い空間に出来るように作ったんだ〜!……って、リアクション薄いねキミたち。」
「だって……オレたちの家が…………」
「そうッスよ…………」
「「「おうちー……」」」
「そんなに前のボロ屋のほうが良かったの〜?ほら、これが新居になるんだよ?『REG○!赤い屋根のおおきなお家』って感じで素敵じゃ〜ない?」
「だからフィンさん……そんなミニチュアでどうするって言うんスか…………ヴェルミーリョさんってツッコミ要因が居ないせいで全然話が見えてこないッスよ……!それに、赤い屋根の大きなお家はシルバ○アファミリーッス!」
「あれ?グリムっちは分かってると思ってた……んむむ、説明不足だったね、ごめんよ〜。
……こほん、それじゃあちゃんと説明するね!」
ようやくフィンがやろうとしている事の説明をし始め、グリムと子どもたちが彼女に意識を集中した。
「グリムっち、串焼き屋やってた時の屋台ってどんなのだったか覚えてるかい?」
「そういや、なんだか変に板材をツギハギしたような変な作りだったッスね」
「アレって何かに似てな〜い?」
「あ……あれってもしかして……その『ブロック』っすか?」
「その通りだね〜。そして少し前にも言ったけど、始祖エルフになってから僕のスキルは進化してる。
パワーアップした『触れたものを増やす』スキルは……触れた何を増やすのか?その答えのひとつが……これさ」
そう言いフィンは家のあった更地へと歩いていき、作ったミニチュアを置いて手を触れる。
「……『手で触れたものを増やすスキル、モード・アスペクト』!!」
淡い光とともに発動したフィンのスキルはミニチュア屋敷を包み、そして――――
「こんなとんでもない魔法って……あるのかよ…………」
「「「わぁ〜〜……!」」」
「…………フィンさん、すごいッス。」
フィンが作ったミニチュアだった屋敷は、進化した彼女のスキルによって…………人が住めるほどの立派な大きさへと変貌していた。
「ほ〜ら、いい家だろ?
これがキミたちがこれから住む家さ。んん、ようこそ我が家へ!おかえりなさい。」
フィンの優しく、そして得意げな笑顔に、
グリムも子供たちもしてやられたと思いつつ……それでもつい、口がほころんでしまうのだった――。
もう年末……忙しい時期なのにいつも読んでくださっている方々には感謝してもしきれません……!




