とっても大好き!ドラ……フィンえもん
「これから家を買いに行くってのに……い、いいのか?服まで買ってもらっちゃって……しかもこんなに…………!」
「言うて仕事用の服にもなるやろうし、あって困らんしなー。それに、なぁ?フィンくん?」
「全くもう!いつのまにか服屋とまで勝手に話付けてるとは思わなかったよ」
「いい案だったやろー?wいやーホンマに助かるわ、期待してるでフィンえもん」
「も~!僕は便利な猫型ロボットじゃないんだぞ〜!?」
家を探しに不動産屋へ行く途中、ヴェルミーリョはふいに服屋に入っていき大量の服を持って出てきた。
どうやら元々、服屋の店主とある契約を結んでいたらしいのだがその内容というのが、
『店の服を見繕うのを格安で手伝う代わりに、服を何着か融通して欲しい』というものだったらしい。
そういうわけで再びフィンの『手に触れたものを増やす』スキルの出番だったのだが……
最初、フィンは「職人の作る物を増やすのはズルしてるみたいであんまり気が進まない」と嫌がったのだ。
対してヴェルミーリョは「格安で服が増えれば服屋もハッピー、余剰に増やした服も孤児たちが着れてハッピー、ちょっとばかし金ももうけれてワイらもハッピー!誰も損しないやん?」と諭して……やっと今に至る。
「ありがとう……にーちゃんたち」
今までの生活ではありえない高待遇に、思わずアルカが感極まる。
「……ふふ、みんなまとめて、面倒見るって決めたもんね~」
「やなー」
「それにこれから家も買うッスもんね」
「勉強もせなあかんしな。お、そろそろ見えてくるで――」
3人の言葉に孤児たちが期待を寄せて前を見る…………がしかし、
見えてきたのはなんとも言えない空気を放つ、老朽化したお屋敷だった。
「うわ、やらかした…………聞いてたより状態クッソ悪いわ。ワイの見誤りやわ……ごめん。」
「確かにボロいッスね……」
屋敷のボロさに思わずヴェルミーリョとグリムが閉口する。
「他の物件、あったりしないんスかね?」
「正直ここの立地と敷地の広さに、金も申し分なくてなぁ……ちょっとぐらいのボロさなら妥協しようって思ってたんやけど……他だとちょっとなぁ……」
「に、にーちゃんたち!お、俺たち家に住めるってだけでもう十分幸せだぜ!?そんなに気を遣わないでくれよ!!」
思わず盛り下がっていたヴェルミーリョとグリムに、アルカが子供ながらにフォローを入れる。
「ああ……もうちょっと綺麗で増築しやすかったらな……家がこんなじゃなあ…………こんな時、ホンマもんのドラ○もんがおったらなぁ」
「そうッスねぇー……あんなことやこんなこと、不思議なポッケで叶えてくれるんスけどね……」
そう言いながら、2人はチラチラとフィンを見る。
「ちょ、ちょっとふたりとも……?」
「フィンくんってさ……空を自由にぶっ飛ぶことが出来て――」
「スキルで物が増やせるッスよね……ひみつ道具のバイバ○ンみたいに」
「え……いや、あのね?」
「それにアイテムボックスも魔力量めっちゃあって四次元ポケ○トみたいやし――」
「……もしかして実質ドラ○もんだったりしないスかね?」
「違うんだけど????」
「この際ジェネリックドラ○もんでもええよ!なんとかならへんかフィンえもん!!いや、ドラ○もん!!」
「言い直すなよな!!?!」
「お願いします!フィ……ドラ○もんさん!!」
「グリムっちまで?!?!」
「…………やっぱ流石に、無理な感じなん?ドラ○もんじゃなくて、やっぱり君はフィンえもんなんか……?」
「勝手に僕をドラ○もんの劣化版に据えるのやめてくれない????それ僕にもドラ○もんにも失礼だからね?」
「フィンのねーちゃん……やっぱり、無理なのか……?」
アルカのうるうるとした瞳に思わずフィンが「うっ!」と唸る。
「いや…………多分なんとか出来るけどさ。」
「なんとか出来るんか!!ドラ○もん!!」
「流石ドラ○もんさんッス!!!」
「よくわかんないけど……ありがとう!ドラ○もんのねーちゃん!!!」
「おいこら!!おまえら!!僕ドラ○もんじゃないよ!!!!違うでしょ!!!子供たちが勘違いするじゃん!!!!」
「「「ドラ○もんのおねーちゃん!!ありがとー!!」」」
「ほらもおおおお〜〜〜!!!」
ダムダム!と、フィンがものすごい地団駄を踏む。
それはさながら……キレたドラ○もんのようだったと、2人は思った。




