なんでもするって言ったよね?
「いや……いやさ、なんでもするって言ったよ?言ったけどさぁ……」
ほんの少しの月明かり差し込む地下牢のような場所で、フィンはため息をついていた。
というかここ、地下牢のような場所じゃなくて、マジの地下牢。
でぃすいず・とぅるー・ちかろー。
……いやもうね?アホかと、バカかと。
「いやほんとまじヴェルさん!!あいつ!!あのやろう!!!お金足りないからってまた僕のコト売るこたぁないだろ〜〜?!」
アルカたち孤児との話が纏まった後、帰路につくまでの間に……ヴェルミーリョから言われたのだ。
…………金が、足りないと。
あんな人数養うためにはデカい家が必要だと。
人数分の宿なんて取ってたら一瞬で破産すると。
……だから、フィンの変身魔法を解き、再びエルフとして売っちゃおうと。
いや、金が足りないとか……そりゃそうだよとは思ったけどさ、だからってこんな乱暴な金の稼ぎ方ある????
ラ○ボー・怒りの即日出金じゃん!!
なんなの?!はじめてのア○ムなの?!
こちとら売られるのはもう2回目だよ!!!ばかやろ〜!!
まったくもう!本当に意味がわからないよ!!
プリプリとフィンが怒っていると、ふいに頭に小石がぶつかる。
ぶつけて来た方向を見上げると、例によって牢の空気を通す、外へと繋がる小さい格子穴からヴェルミーリョの顔がこちらを覗いていた。
「遅いじゃん」
「すまんすまん、ちょっと色々あってな。今回はグリムくんとついでにアルカも連れてきたから安心やで」
「うっす!」
「え……フィンのねーちゃん、売られたのか……っていうかエルフだったのか!?」
「な?安心やろ??」
恨みたっぷりのフィンのジト目にヴェルミーリョが悪びれもせず笑いかける。
……このやろ〜。
「まぁ前回はアレやったけど、今回は大丈夫やって。すぐ出したるからな。」
そう言いヴェルミーリョはアイテムボックスの中から何かを取り出した。
「なにそれ」
「剣士泣かせっていう、どっかのゴーレムの口から出るらしい金属だけを溶かす液体や。薬の調合に使うもんやな」
「それでこの格子溶かすの?辞めたほうがいいよ。」
「なんでや」
「ここ、前に売られたとこと違って牢屋全部に結界術式が組まれてる。人の出入りはともかく、建物を壊そうとしたりすると警報がなるように出来てるよ。魔力視でそう見えたから間違いない」
「はぁ?!全然安心ちゃうやん!!」
「も〜〜!!考えが安直なんだよキミは〜〜!!!というか、なんでまた人の事売ってんだよ〜!傷ついたぞ僕は〜!!」
「ええやんけ別にー、めんどくせぇ女みたいな事言うなやー」
「言っとくけどね!15年もこの世界で生きてりゃ、前世を含めて3分の1強はもう女として生きてることになるんだからね!!」
「四捨五入すりゃまだおっさんやろ!」
「おいふざけんな!!ぼくの3分の1の純粋な心を尊重しろよ!!」
「残りの3分の2が汚いなら、見た目美少女でももう手遅れやん?」
「もういいよ!!はやく助けてよ!!!!」
「そこに居るのは誰だ!!!」
「やべっ!!!見つかっちゃった!!!!」
「他の奴らを起こせ!!侵入者だ
ー!!!」
「こうなりゃ出たとこ勝負や!2人ともいくで!!うおーー!!」
「う、うっす!!うおーーッス!!」
「よくわかんねーけど、頑張ってフィンのねーちゃんを助けるぜ!!うおーー!!」
フィンは思った……。
ここを出たらまた、思いっきりヴェルミーリョをぶん殴ってやろうと。




