誰か彼らを救うのかⅣ
アルカ達が帰ってから2日後。
「だめだーっ!いい考えが思いつかねー!!」
そうアルカが唸る。
この2日間、孤児たち全員で知恵を絞っていたのだがヴェルミーリョの言う「自分たちを雇うデメリットを帳消しに出来るなにか」が未だ見つからない。
彼が言っていたデメリットというのはまず第一に、学が無いこと。
自分たちは文字の読み書きや算術ができない。要はそんなやつ雇ったところで食い扶持が増えるだけだ、ということだろう。
これに関しては皆で勉強するしかないという結論に至ったのだが、そこで壁にぶちあたる。
そんなの一体誰に教われば良いのか。仮に教えてもらえるとして、勉強し終わるまでどうやって生きていけば良いのか?
……また、盗むのか?
そんなことをしてはヴェルミーリョに言われた2つ目の問題を……
『盗みなどの軽犯罪を犯してきた自分たちを雇うリスク』を重くしてしまう。
ヴェルミーリョの商会の評判を更に落とす事になるのだ。絶対やってはならない事だ。
……それにもう、何かを盗んだり奪ったりする人生なんて……嫌だ。
嫌だからこうして頑張ろうとしているのに、自分たちの境遇と過去の行いがそれを許さない。
アルカたちは、行き詰まりを感じていた。
「…………やっぱりぼくたちみたいな孤児が普通の生活しようだなんて……できるわけなかったんだ」
ひとりの孤児の声がぽつりと響く。
「おい!」
「あ……ご、ごめんなさい!」
ギゼルに睨まれ叱咤された孤児は自分の失言に気付きすぐに謝る。
しかし、その孤児の発言のせいで周りの子供たちも少しづつ、暗い感情に染まっていってしまう。
そんな孤児たちを見たアルカもその雰囲気に押されて、思わず目に涙を浮かべてしまう。
……本当に、俺たちは駄目なのか?
あの3人は……本気で俺たちを救う気なんて無かったのか?
面白がって、からかってただけなのか?
違う!
あいつらは汚ぇ身なりのおれの目を見て、ちゃんと言ったんだ!!なんとかしてやろうって!!!
初めてだったんだよ!
同じ立場のヤツ以外で、俺たちをそんなふうに見てくれたヤツは!!
胸にそんな感情が溢れてきて、いっぱいになる。
その時、ふと思い出した。
貧民街に帰る時フィンに言われた言葉を。
『未来をより良くするためには、今自分ができる何かを差し出さなくちゃならないよ。』
そう言いながら何かを憂うような……気にかけるようにしていた彼女の顔を、アルカは覚えている。
きっとあれは、ヒントだ。
あんな顔をしていたのは多分、差し出さなければならない物がきっと、自分たちにとって大きな物だから。
……俺たちにとって、できること……
普通に雇われる人が差し出せなくて、俺たちが差し出せるもの…………!
「もしかしたら………なるとかなるかもしれない……………!」
そう言いアルカは、グリムにあることを調べてもらうために、彼の元へと走った――。




