誰か彼らを救うのかⅢ
「……と、言う訳なんだ。」
貧民街に帰ってきたアルカとフェイシアは、自分と同じ境遇の孤児たちが集まるグループへとグリムを招き、リーダーとして皆を集めてヴェルミーリョ達のことを話していた。
「それでアルカ、お前はどうしたいんだよ」
アルカがことの顛末を説明し終えるまで、壁際で静かに話を聞いていた細見の少年がぶっきらぼうに話しかける。
「ギゼル、副リーダーとして……いや、オマエとしては……嫌か?」
「別に嫌じゃねぇよ。ただ、本当にそんなうまい話があるってんならな……。」
「……少なくとも俺は、信じてみようと思ってるよ。だって俺達みたいな孤児にこんなに美味いものいっぱいくれたんだぜ?」
アルカの言葉に他の孤児たちも「そうだよ」、「きっといい人だよ!」などの声が上がる。
グリムを皆に紹介する際分け与えていた串焼きなどの肉料理が、ヴェルミーリョ達の信用を底上げしているのだ。
ギゼルと呼ばれた少年も確かに思った。
もしかしたら本当にいい奴かもしれないと。
でも、だからこそ怖いのだ。
何か裏がないか、裏切られたりしないか。
「どうだかな。西の魔法の国では子供を生贄にして悪魔を召喚する儀式をやってるって聞いたこともあるけどな」
「ギゼル!」
「へいへい、どうせ屋台で話される与太話だろうよ」
「オマエにとっては俺の話もそう聞こえるんだろうけどさ……」
……違う。
俺は……アルカに、お前に傷ついてほしくないんだ。
裏切られた時に悲しむお前の顔を見たくないんだ。
なまじ使えるスキルをその身に持っちまったからって、ガキ共のリーダーを自分から背負ってよ……。舐められないように見た目も言葉遣いも粗暴に振る舞って。みんな自分の事で精一杯だってのに。
なのにお前は、みんなの為にそれが出来ないでいるんだ。
「でも、それでも俺は信じたいんだ。このチャンスを逃したら、俺はきっと後悔する。
このままみんな大人になって物乞いや野盗になるなんて、ぜったい嫌だから……」
分かってるさ。
分かってるけど、ここで裏切られたらお前は本当に立ち上がれなくなっちまうから……。
俺が、なんとしてでも相手を見極めねーと。
「分かったよ、お前がそうするなら俺は付いていく。お前一人だけじゃ、いざって時に心配だからな」
「けっ!絶対上手く行くから見てろよな!」
そう言いながらアルカは照れくさそうに笑う。
そうだアルカ。お前はそうやって心から笑っている方がいい。
「それじゃあ話し合おうじゃねーか。そのヴェルなんとかって奴が言ってた『俺達を雇うデメリットを帳消しできるなにか』ってやつをよ。」
「だな!」
ギゼルの言葉にアルカが元気よく返事をする。
そんなアルカを見て、ギゼルはより一層気を引き締めるのであった。
年末のせいか最近色々忙しいですね〜(ヽ´ω`)
いつかグリム、フィン、ヴェルミーリョの絵でも描けたらと思っているのですがいつになることやら……




