これより毒ガス尋問を開始する!!
人見知りなのか、あまに喋らないボサボサ髪のフェイシアと、キャスケット帽を被った口の悪い少年アルカ。
2人の子供を捕まえたヴェルミーリョ達は、ひとまず事情を聞くべくフィンの張ったシールドの外から話しかける事にしたのだが……。
「こいつぅ〜!なに聞いても「出せよ!!」だとか「この卑怯者!クソったれ!!」とかしか言わないじゃん〜!」
「まぁまぁ……」
「まぁまぁ、じゃないよグリムっち!僕たち舐められてるんだぞ〜!?」
「フィ、フィンさん落ちついて下さいッス……俺が話してみますから…………ねぇ、そこの君。アルカくん……スよね?」
「…………話しかけてくんな筋肉ダルマデクの坊」
「ヒドイっス!!悪口に悪口を重ねてきたッス!!」
「キミたち話し方が下手くそなんちゃうか?
ひとりが反抗的ならもう一人の方に聞いたらええやん。なぁ……君らはどこから来たん?」
「っ………………」
「んー?」
「…………」
「って無視かーい!傷付くわー!!」
「いや、ヴェルさん目付き悪すぎるから怖がってんだよ、子供に話しかけるの向いてないよ」
「おま、ホンマに傷つくやつやめぇやー!!」
子供の対応に追われる3人が感情的になっていく。
その時――、
ぐぅ〜〜〜。
アルカ少年から、ものすごく大きな腹の虫が鳴り響いた。
「ほう……悪態以外うんともすんとも言わない悪ガキから、ぐうの音が上がったみたいだね〜?」
一番悪態をつかれていたフィンがニヤリと笑う。
フィンの妖しい笑顔にアルカが顔を赤くしながら叫ぶ。
「な、なんだよ!!何笑ってんだクソが!誰だって腹くらい鳴るだろ!!」
「うんうん♪お腹空いたもんね、仕方ないよね〜」
「……フィンさん、何するつもりなんスか?」
「食ってやるのさ……」
「まさかフィンくん……」
フィンはアイテムボックスを開き、グリムの引いてきた屋台の上に食材や仕込んでいた料理を取り出し始めた。
そして言い放つ。
「こいつの目の前で、豪勢な夕飯にするのさ〜〜!!!」
「おま、そんな残酷なことしていいんか……」
「だってちゃんと会話のキャッチボールしてくれないんだもん。衛兵にも突き出してないんだし、これぐらいされても仕方ないじゃん?」
「まぁそらそうやけど……ちな今日の献立はなんなん?」
法的手段に出ないだけマシと言うフィンに納得しつつ、ヴェルミーリョが屋台のカウンターに立ち夕飯の献立を聞く。
土魔法で自分にあった足場を作り調理場に立ったフィンは、ラーメン屋のように腕を組み自信たっぷりにヴェルミーリョを見据える。
「最近醤油作った話したじゃん?今日仕込んでた東坡肉が上手くいってね……他にも肉じゃがっぽいのとか、生姜焼きみたいのとか、こっちの世界の素材で再現して作ったやつを今日は出すよ。」
「え、めっちゃおいしそうッス……」
「あと、ほしけりゃピザとかラザニアとかも作るよ。できる物なんでも出すよ」
「アカンフィンくん本気やん!そんなんワイやったら耐えられへんわ。マジで残酷すぎる…………!」
「お、おまえなにする気なんだよ!!?」
思わず絶句するヴェルミーリョの姿にアルカはフィンを恐ろしげに見上げる。
「さぁ矮小なる人間よ、この美味そうな匂いに恐れ慄き、跪くがいい。!!くらえ!!」
調理を始めたフィンは、人が通れないほどの空気穴をシールドに出現させ、料理の匂いをシールド内へと送り込んだ。
――そして数分後。
そこには涙を流し「お願いだからなにか食べさせて……」と懇願するアルカ少年の姿があったという。




