休日のすごし方Ⅱ
始祖エルフとなり少女の身体のまま不老になってしまい、超絶美人になる夢を叶えられなくなったフィン。
そんな彼女でも、始祖エルフになって良かったと思うことがある。
普通の人には見えない、魔力の流れを目で見れるようになったことだ。
「こっちよ!デカブツ!」
クリスティーナがヘイトを引きながらカリスタのもとへとリーバーエルク達を誘導していく。
その間にカリスタが素早く呪文を唱え、魔法を展開してゆく。
そんな彼女をフィンは注意深く観察する。
「〜集まれ炎の権化よ!かの者を閉じ込め給え!……いくよー!フレイムサークル!!」
カリスタの発動させたフレイムサークルはしっかりとリーバーエルク4匹を炎の円に閉じこめる。
目の前に広る炎にびっくりした4匹は突進を止めざる負えなくなり、その場でたたらを踏まされる。
……なるほど、そうゆうことだったのか〜
カリスタのフレイムサークルを『見た』フィンはうん、と頷く。
生前では機械をいじる仕事に就き、趣味で絵を描いたりもしていたフィンは人一倍『見る』という行動の重要性を理解しており、『見る』力をしっかり身につけていた。
機械に異常があればひとつひとつ丹念に『見る』ことで異常の原因を調べ、
絵のより良さを追求する時は素晴らしい絵を『見る』ことで自分のステップアップを図ってきた。
物事をうまく学ぶにはよく『見る』事が大事なのだ。
まさに百聞は一見にしかず、とはよく言ったものだ。
そしてフィンは今、カリスタの魔法を『見た』事で自分の問題点を瞬時に理解した。
「……フレイムサークル!」
カリスタとクリスティーナを邪魔しないよう、何もない場所に向かって呪文を唱え魔法を使う。
すると先ほどカリスタが発動させたのとほぼ同じ、完璧なフレイムサークルの魔法が発動した。
「よしよし!できた〜!!」
「まぁ……♪」
フィンの肩に手をおいていたアマンダがもう片方の手で口を覆い、少し驚いたように呟く。
「ふーん。カリスタと同程度のフレイムサークルが使えるなんてやるじゃない!
まぁ、風魔法の方はこの私ほどじゃないだろうけどね!」
フィンの魔法を横から見ていたクリスティーナがそう言いつつ、リーバーエルクへ風の魔法を詠唱し始める。
彼女からも学ぶため、フィンは再び意識を集中。
「〜風よ、吹き荒れろ!その刃でかの者たちを切り刻め!トルネードダンス!!」
お、あれは中級範囲魔法のトルネードダンス!
これも里では見慣れない呪文で覚えようと思ってたんだ〜!
クリスティーナの放ったトルネードダンスは丁度フレイムサークルの円の中を覆うように発動し、無数のかまいたちがリーバーエルク4匹を攻撃する。
20秒もの間続いた魔法が終わる頃にはリーバーエルクは満身創痍となり、その場に倒れた。
なるほど、ああゆう感じでかまいたちが発生するのか〜!
わかっちゃったぞ〜!!
「フフ、新人のヒヨッコにはまだまだ難しい魔法かもね」
フィンの熱い視線に気づいたクリスティーナがドヤ顔になる。
「はい!でもお陰で感覚はなんとなく分かった気がします!よ〜し、やってみます〜!!」
同じく覚えようとしていた魔法なので、呪文は頭に入っている。
「……トルネードダンス!」
フィンの使ったトルネードダンスはきっちりとクリスティーナを模倣し、完璧な魔法として発動した。
「やったー!出来ました〜!」
そう言ったフィンは「この感覚を忘れないうちに……もっと練習しないと!」と、フレイムサークルとトルネードダンスを使いまくり始める。
「…………、」
「………………。」
「あらあら……」
「あわわわ…………」
苦労して覚えた魔法をさらっと習得された上、無尽蔵に撃ちまくっているフィンに、
クリスティーナとカリスタは無言で立ち尽くし、アマンダとシャーロットもびっくりしすぎて空いた口が塞がらなかった。
……しばらくして、一番最初に正気に戻ったシャーロットが他の3人の放心状態に面食らい、状態異常治癒魔法と中級回復魔法をかけ始める。
そしてフィンは……それすらも『見て』ラーニングしてしまうのだった……。




