日進月歩
――あれから1ヶ月が経過した。
ヴェルミーリョはホーキンス、パブロ達と正式な契約書を交わし、忙しく働いていた。
薬草集めのクエストはフィンのスキルで納品物を増やせるため、クエスト受注後ヴェルミーリョだけ別行動を取ることが増えた。
何をしているか気になったフィンが、時間が合うたびヴェルミーリョへと尋ねたものだが、その度に
「んー結果が出たらなー」とか
「ぼちぼちやなー」などとはぐらかしていた。
「も〜!そろそろ教えてくれてもいーじゃん!!けち!
ふ、ふん!いいもんね〜!僕だって新しいこと始めちゃってるらね!!お金だってめっちゃ儲けちゃってるしね〜!!」
「ほーんええやんけ〜。ワイが出来る事なら協力したるからなー頑張りやー」
「むむむむ〜!いくぞグリムっち」
「う、うっす」
今日もまた同じようにフィンをはぐらかした後、経過を見るためにホーキンスの家へと歩き出す。
ま、教えてやらんこともないんやけどなぁ。
かっこつけた割に色々やってたいした成果も出せませんでした、なんてカッコワル過ぎるしなー
などと思いながら、この一ヶ月でやってきた色々な事を振り返る。
まず1つ目は客の信用、人気を得る事。
ホーキンス達を抱き込んだ事でこの地区で殺し屋を雇われたりすることはなくなった。
今まで以上に自分のポーションを売り込みまくり、ヴェルミーリョが作成した物は信頼できるいい物だという付加価値をつけた。
そうして自分の商品に対して圧倒的な人気、ブランド力を手に入れたところでホーキンス達の店へ販売を委託させる。
値段は一律5銀貨。
ホーキンス達へは3銀貨で納品し、売れた分だけあとで支払いをするように言った。
もちろんポーション以外にも商材を持つようにも指導するのは忘れない。
そして2つ目は、回る資金を増やす事。
パブロ達が言っていたように経済、回る金の総量が一定のままでは誰かが得をすると取り分が減る、と言うのは正しい。
ならばどうするか?
増やす努力をするしかない。
方向性としては国の発注する薬草集めクエスト以外で薬草を安く買い叩く、という方法を取ることにした。
ギルドで受ける薬草集めクエストは半分が国営事業だ。
Fランク冒険者でも安心して採取できる土地を国が管理し提供する事で、
冒険者ギルドはは新人育成の安全性を、国はクエスト報酬の何割かをマージンとして受け取る関係にある。
つまりポーション職人達は国から割かれたマージンの分だけ薬草を高く買う羽目になる。
例えて言うなら、
冒険者がみかんを一つ、木から取ってきました。
冒険者の報酬は30円、
クエストを仲介したギルドに入るお金は20円、
そしてみかんの木が生える山を管理していた国に入るお金は50円でした。
そうしてそれを売る商人は、彼らが手に入れた金の合計、100円でみかんを買わされ、
高い高いと言われながらみかんジュースを120円で売りましたとさ、という流れになっている。
じゃあ別のところからみかんを40円で仕入れてしまえばよくない?
外の資源を国内に入る際、税関で10円取られたとしても、50円得するじゃん!
こうすれば仕入先でありジュース、加工品の買い手でもある顧客は普段よりも懐に兼ねが入り、自分たちの懐にも金が入る。
他から資源を持ってくる時に国も関税を掛け、なんだかんだ儲かる。
そして資源が増えれば他の国に売れる。
そうして金が入ればさらに経済が回る。
簡単に言えばそうゆう話である。
ヴェルミーリョは今のポーション市場が停滞していると見立てていた。
だからまず、国という仲介屋を出来るだけ通さない方法を模索し、実施した。
クエストによる国の出入りに関税がかからない冒険者の利点を利用し、
国営地以外の薬草を相場より高値で買うと直接勧誘してみたり、
行商ルートの中に故郷を持つ冒険者くずれに、故郷での薬草集めや他の商材に関わる仕事の斡旋をしてみたり、
別の村々でも薬草の買い取りをすると触れ回ったり。
とにかく色々やった。
そして今日はホーキンスの家にて売上とそれらの効果の最終確認だ。
緊張と、ワクワクが止まらない。
はやる気持ちを抑え、ヴェルミーリョはホーキンスの家のドアに手をかけた――。




